たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年1月8日執筆  2004年1月13掲載

迷彩色の意味

昨年末、イラクへ派遣する自衛隊が使う輸送機の色を、迷彩色から空色に塗り替えたというニュースが流れた。
「敵」は上空にはいない。攻撃されるとしたら地上から対空ミサイルによるものしか考えられないので、見上げたときカムフラージュとなる空色にした、ということらしい。他にも、「軍用機だというイメージを少しでも薄めるためだろう」など、いろいろな解説が出現した。

僕は軍事オタクではないので詳しくはないのだが、子供の頃は「丸」なんていう雑誌も見ていた。その頃の記憶では、第二次大戦中の戦闘機は、上半分が濃い緑色(迷彩色)、下半分が空色という塗り分けも多かったように思う。上から見下ろされたときは地上(山岳地帯や草原を想定)に溶け込む色、下から見上げたときには空に溶け込む色ということだ。

飛行機の色は空色に塗られることになったが、派遣する陸上自衛隊員の服装は迷彩色(迷彩服)になるらしい。迷彩服の他、緑色だけの作業着もあるのだが、これはイラク軍の戦闘服に似ていて、米軍から誤射される恐れがあるという判断が働いたようだ。
しかし、米軍は迷彩服を着ており、イラクのゲリラからはむしろ狙われやすいのではないかという見方もある。(むしろそっちのほうが頷けると思うが)

そもそも、自衛隊において「迷彩色」というのはどういう意味を持つのだろうか。以前からずっと気になっていた。
言うまでもなく自衛隊は日本を守るための組織であるはずで、活動の場は日本国内が基本だろう。そこで迷彩服を着て活動する意味はなんなのか?
迷彩服というのは、「敵」に発見されにくいよう、地面や茂みに溶け込みやすい服のことである。だから、バードウォッチャーが着るのは理にかなっている。

自衛隊の活動が救助活動や救援活動中心であるなら、迷彩服を着て「発見されにくく」することはデメリットでしかない。赤とかオレンジ色とか黄色とか、派手で、すぐに見分けがつく服装こそ理にかなっている。実際、救助隊などはそういう服装をしている。

自衛隊の車両も同じことだ。戦車(そもそもこんなものが日本国内に必要なのかという話は次回以降に譲るとして)をはじめ、自衛隊の車両の多くは迷彩色に塗装されている。救助活動の場合、目立ったほうがいいのだから、これもオレンジ色とか黄色とか、青と白の縞々とか、目立つ色にしたほうがいいに決まっている。

もっとも、迷彩色は都会の中では逆に目立つ。
高速道路を走っている自衛隊車両はパトカーより目立つし、街の中を迷彩服の人間が歩いていたら、周囲の人はみなぎょっとする。
自衛隊の迷彩色は、周囲を威圧するという意味を持っている。
あるいは、「我々はあくまでも軍隊であり、救助隊ではない。本業は戦闘行為である」という主張が込められているという見方もできる。

日本の国内で野戦が行われるという可能性は限りなく低い。
仮に日本を本気で攻撃しようとする国や組織があったとして、わざわざ狭い日本に兵隊や物資を投下、あるいは海から侵入させ、都会は避けて山間部を戦場として選び、さあ、ここで戦いましょう、というような戦争をするだろうか。ありえない。
原子力施設にミサイルを撃ち込むとか、人混みに紛れたテロ活動という方法を取ったほうがはるかに現実的だ。
そうした攻撃に対しては、迷彩色に塗られた軍事車両や迷彩服を着た兵隊は無力である。
防衛が目的であるなら、情報戦関連の強化や、生物化学兵器、爆弾処理に強い特殊部隊の養成というほうがずっと納得できる。

自衛隊が迷彩色グッズ、迷彩色ファッションにこだわっている意味はどこにあるのか?
どう考えても、日本国内での活動のための迷彩色ではない。
日本の外で戦闘行為をする場面を想定し、初めて、迷彩色も戦車も意味を持つ。
そのことを、国民はもっと考えなければいけないのではないか。
なにしろ、膨大な税金が投入されている「迷彩色グッズ」なのだから。

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