たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年1月23日執筆  2004年1月27掲載

陸上競技とスポンサー

去年からずっと、大阪国際女子マラソンが待ち遠しかった。
AICの原稿は土曜日が締切なので、これを書いている時点ではまだ大阪国際女子マラソンの結果は知らないが、その時間は電話も留守電にしてテレビに見入るつもり。いずれにせよ五輪代表選考はまたまた大もめになるだろう。

ところで、世界一を競うスポーツ選手が完全にアマチュアであることは非常に難しい。オリンピックも「アマチュアスポーツの祭典」とは言わなくなった。
陸上ももちろん例外ではない
マラソンで言えば、男子の記録が2時間15分くらいまでの時代だったら、企業の陸上部にも所属しない完全なアマチュアランナーが第一線で活躍することも可能だっただろうが、2時間5分台、6分台を競う現在では、スポンサーなしで一線級ランナーとしての練習を持続できるとは思えない。競技と無関係の仕事で収入を得て、空いた時間でトレーニングを積むという生活では、おのずと限界がある。

一方、不況で陸上部を閉鎖する企業が増えている。
今年ニューイヤー駅伝に出場したNTT西日本広島などは、かつては「電電中国」の名で、旭化成など強豪チームと互角に戦ってきた名門チーム(連続41回出場!)だが、今は会社からの支援が打ち切られ、完全な同好会扱いになってしまった。
練習はフルタイム勤務が終わった後。合宿費用も全額選手の自己負担。こうなると、個々の選手を知らなくても応援したくなるのは人情だろう。

選手の練習だけでなく、陸上競技会もスポンサーなしでは運営できなくなっている。
最近は、ちょっとした大会なら必ずゼッケンには大きくスポンサー企業の名前が入っているから、選手はライバル会社の名前をつけたナンバーカード(ゼッケンとは言わなくなったらしい)をつけて走らなければならないことも多々ある。
全国都道府県駅伝では、中学生区間、高校生区間というのがあるが、そこでは中学生や高校生が企業名の入ったナンバーカードをつけて走る。意地悪な言い方をすれば、義務教育課程にある子供が企業の広告塔として走っている図だ。
「教育上好ましくない」とクレームをつける人がいそうなものだが、あまりそういう話は聞かない。
スポンサーなしでは走れないという現実を、子供のうちから知っておくよいチャンス、とでも考えればよいのかもしれないが、大人でも、場合によってはかなり抵抗があるのではなかろうか。自分を捨てた企業の名前を胸につけて走る、なんていう選手もいるかもしれない。
僕が選手だったら(ありえないが)、世界一の某ソフトウェア企業とか、「GIF問題」のあの企業とかの名前をつけて、自己の精神力・体力の限界に挑むなんて、とーーっても嫌だなあ。

ともかく、陸上ファンとしては、有能な選手たちが少しでもよい環境で自己の限界に挑戦できるよう、様々なプロ化のシステムを探ってほしいと思う。
高橋尚子のような世界の頂点を極めた選手だけが、ようやくプロとして認められるのではなく、まだ無名の選手も育てていけるようなスポンサーシステムだ。
複数の企業が出資して陸上選手養成クラブを作ることなどは可能だろう。そのクラブに一般の陸上ファンがささやかながらカンパするとか、サポーターになってくれた陸上ファンには、日本選手権の特等席チケットを配るとか。
室伏印のサポーターとか、公式末續ネックレスなんてのが普通に売られていたらすばらしい。
できれば、現陸連主導ではない、もっと自由で柔軟なプロ化の道が開けていけばいいのだが……。
butterfly effect
■butterfly effect (c)tanuki(http://tanuki.tanu.net)

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