たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年5月7日執筆  2004年5月11日掲載

ヨーロッパに学ぶ

このところあまりにもひどいニュースばかりで、物事について深く考えるのが嫌になっている。できることなら、毎日お笑い番組と松井のホームランだけ見ていたいという気分の日本人は多いのではないだろうか。

楽しいことはないものか。……いや、そもそも何を楽しいと感じればいいのか。
嫌なことの多くは、「アメリカの嫌な部分」に関係している。拝金主義一辺倒のビジネス社会、金儲けのための権威強化、権威強化のための情報コントロール技術、直截的手法に頼りすぎるエンターテインメント業界……。
逆に、楽しいことを探し出そうとすると、江戸文化やヨーロッパ文化に通じるものが多い。
江戸文化の話は別のときに改めてするとして、ヨーロッパのことに絞ってみよう。

別に決めているわけではないのに、気がつくと、愛用しているものの多くがヨーロッパの製品だ。スペイン製のギター、イギリス製のアンプとスピーカー、フランス製の車……。
それぞれ欠点はあるが、それを補ってあまりある魅力を持っている。

クロサワ楽器のギター売り場主任は、「30万円の国産ギターは10万円のスペイン製のギターに勝てない」という持論のようで、初心者にも、予算が5万円以上あるなら必ずスペイン製ギターを勧める。最初は懐疑的に聞いていたが、実際に自分で10万円のスペイン製ギターを買ってみて、なるほどそうだな、と確信できた。
自動車評論家の徳大寺有恒氏は、昔から外国車ファンで、外国車、特に欧州車の魅力を熱く語り続けている。
あなたはお金持ちだからそんなことを言っていられるんでしょ、と思っていたが、外国車の値段が下がって国産車と同じ価格帯で比較できるようになった今は、自分でも、欲しい車を訊かれたら、アルファロメオとかプジョーとかミニ(今はBMW社が製造)とか、欧州車ばかり口をついて出る。日本でも、もっと外国車(特に欧州車)が売れてもいい。

テレビドラマも、だいぶ前から日本とアメリカのドラマは見る気がしなくて、CSでイギリスの刑事ドラマなどを見ている(『フロスト警部』『ウィクリフ警視』『マクベス巡査』……)。
イタリアの能天気お色気番組『コルポグロッソ』とか、ドイツの文芸的エロス作品『象は見ていた』とか、フランスの女性刑事ドラマなどもCSでたまに見ることができるが、日本やアメリカのテレビ番組とはまったく違うテイストがあり、なんだかほっとする。日本でも、その気になればいくらでも魂のこもった番組制作はできると思うのだが……。

日本の文化は、アメリカの真似をしすぎた。よい部分も吸収したけれど、それ以上に悪い部分を再生産しすぎて、今はもうどん詰まりに来ている。
最近、韓国のテレビドラマや音楽が日本でも人気が出てきているが、韓国はアメリカ文化の真似を始めたばかりで、作るものに、日本が失った新鮮さがあるからだろう。
ポップ音楽では、分かりやすいメロディーラインと明解な8ビートのリズム。テレビドラマでは、ストレートな恋愛物語。今の日本では制作者がてれてしまい、作れなくなったものを、韓国では今、本気で惚れ込み、魂を込めて作り出し、消費している。
出来が素直すぎて、僕のようなひねた人間はのめり込めないが、その素直さに郷愁や安堵に近いものを感じ、熱中する日本人が多いのだと思う。

それもそれでいいのだが、アメリカ文化をもう一度最初から真似をしても進歩はない。同じ真似をするなら、今度はヨーロッパに目を向けてみたらどうか。
物語性や人間描写を重視したイギリスの刑事ドラマは、テンポの速い、映像刺激重視で作られたアメリカ的ドラマを見慣れてしまった今の日本人には、最初、退屈に感じるかもしれない。でも、気持ちを切り替えてつきあってみれば、細かな部分まで計算して書かれたシナリオの奥の深さや、俳優たちのリアリティに満ちた演技など、今の日本のテレビでは見られなくなった魅力が満載されていることに気づく。
ヨーロッパのオーディオ製品は、国産製品と比較すると、最初はメリハリや迫力が足りないと感じるかもしれない。でも、長時間つきあってみれば、今まで「いい音」だと感じていた音は、実は刺激を意図的に演出し、作りだしていた不自然な音であり、ヨーロッパのオーディオ製品のほうが音楽的にノーマルな音であることに気づく。
イタリアやフランス製品のデザインの妙、お洒落な色遣いも、どんどん真似してみればいい。デジタルな時代だからこそ、人間の感性が築き上げてきた文化を重視したくなる。メカニズムとして完璧ではなくても、デザインや色で楽しめることのほうを優先したくなる気持ちが出てくれば、日本の社会も、もう少し住みやすくなるかもしれない。
「美しいのだから、壊れても腹を立てない」というような余裕が、今の日本にはなくなった気がする。サーバーが1時間落ちて通信不能になっただけでパニックになる。そんな毎日を続けているだけでは、命がすり減ってしまう。

ヨーロッパといってもたくさん国があり、それぞれ文化もまったく違う。でも、その多様性が素敵だ。互いに国民性をジョークで馬鹿にしあいながらも、どこかでは認め合っているようなところがある。
メディアにコントロールされて、ひとつの意見がヒステリックに暴走する社会は怖い。
国際政治の面でも、日本政府はアメリカ一辺倒ではなく、ヨーロッパ諸国の動向にもっと敏感になるべきだろう。
おごれるものは久しからず。絶対的に信頼、崇拝していたものが崩れ去ったとき、「いや、別の価値がある」と、視点を変え、踏みとどまれるだけの幅を、今から持っておきたい。そのためのキーワードの1つが「ヨーロッパ」ではないか、という気がする。

波乗り兎 小松利平の作か?
●日本最古?の石造り波乗り兎
八幡神社(福島県石川郡石川町)天保14年建立
幻の高遠石工・小松利平布弘の作か?
(c)狛犬ネット

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