たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年5月29日執筆  2004年6月1日掲載

真のDTP革命はこれから

本にまつわる話は、暗いものが多い。
「本が売れない」から始まって、「中身に関係なく、ときどき馬鹿みたいなヒットが出るため、出版社が射幸心に引っ張られ、出版文化全体がどんどん不健全になる」とか、「新古書店や図書館のおかげで著作権者の印税収入が脅かされている」……などなど。
でも、少し視点を変えれば、明るくとらえられる話もある。

今、7月に出る拙著『デジカメ写真は撮ったまま使うな ガバッと撮ってサクッと直す』(岩波アクティブ新書)の校正作業をしているところだが、この本、200ページ弱のフルカラーで、1000円を切った価格で出る。
新書判とはいえ、フルカラーの本が1000円以下で出るというのは、かつてはほとんど考えられなかった。同新書シリーズは、カラーページなしの場合でも税込800円前後の価格だから、全ページカラー印刷したときの価格差は2割程度ということになる。購入者にとって、800円の本と1000円の本(200円の差)の価格差はあまり気にならないだろう。しかし、墨一色の本と全ページがカラーの本では、印象が大きく違う。

これはもちろん、DTP時代だからこそ可能なことだ。昔のように写植で文字を打ち、写真画像は1枚1枚別個に版下を作って貼り込んでいたら、とても「200円アップ」程度で全ページをカラー化できない。
DTPなら、写真画像は最初からデジタル版下に組み込まれているから、大幅にコストダウンできる。もちろん、写真画像の入稿は最初からデジタルである。フィルムやプリントから画像ファイルを作っていたら手間が大変だが、提供する段階ですでにデジタルファイルになっていれば、あとは解像度や多少の色調補整などをソフトの上で処理するだけでいい。

今回、僕は原稿(テキストファイル)と写真画像(BMPやPhotoshop形式のデジタルファイル)を入稿しただけで、そこから先の作業は編集部と印刷所でしているわけだが、場合によっては原稿作成者がレイアウト済みのDTPファイル(PDFファイルでもいい)まで全部作成し、印刷所はそのデータを確認して印刷・製本するだけ、という作業工程にもできる。この場合、印刷所としては、渡されたデータにカラー画像が何点含まれていようが関係ない。純粋にページ数だけでコスト計算ができる。

そこでふと考えた。
今までは、個人が自分の写真集やカラー画像を満載したフルカラー出版物を自費制作するなどということは考えられなかった。しかし、DTP時代の今なら可能なのではないか。
文字だけの本、例えば小説や論文、エッセイ集、自分史などは、書き上げる能力もさることながら、それをどれだけの人たちが読んでくれるかという問題がある。しかし、写真集や画像中心の本であれば、見る側も取っつきやすいし、ジャンルや用途も広がる。

例えば、来る6月22日(火)の狛研(日本参道狛犬研究会)例会で、「名工・小林和平を語る」という題で話をするのだが(於・豊島区立勤労福祉会館。池袋駅歩5分。19.00~21.00。会費1500円。どなたでも入場可)、これに合わせて、今までこのデジスト王でも何回か書いてきた小林和平とその師匠・小松寅吉の作品を網羅した小冊子を作ってみようかと思っている。
普通は、ワードや一太郎などで写真画像入りの文書をレイアウトし、それを家庭用プリンタで出力するところだが、ちょっと体裁のよいものにするなら、オンデマンド印刷をしてくれる印刷所にファイルを入稿して、印刷・製本してもらうこともできる。どれだけ時間とエネルギーをかけられるかによるが、可能なら、50部くらい作ってみようかと思っているところだ。

そのために、前から気になっていた「パーソナル編集長」なるDTPソフト(実売価格1万円台半ば)も購入した。このDTPソフトのファイルをそのまま受け付けてくれる印刷所は滅多にないが、AcrobatでPDFに出力したものを入稿すればまず問題ないはず。

DTPは今やあたりまえになったが、まだ、写植がDTPになったという印刷所サイドでの変化でしかなく、出版物の内容や出版・流通形態の大革命が起きるというところまではいっていない。
しかし、今後、カラー画像をふんだんに使った印刷物が低コストで作れるという認識が一般レベルで浸透していけば、面白いものがいろいろ出てくるだろう。
本として残しておきたいテーマがあり、カラー写真も手元にふんだんにある。しかし、マニアックすぎて商業出版物にはできない、と諦めていたものも、考え方や方法次第で、意外に簡単に実現するかもしれない。
個人のWEBサイト(ホームページ)を立ち上げる感覚で、オンデマンドのカラー出版物があちこちで大量に作られ、それがネット上で通販されるようになったときこそ、真のDTP時代到来と言えるだろう。

煙草神社の馬
●煙草神社の馬(福島県石川郡石川町)
石工・小松寅吉布孝
(c)狛犬ネット

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