たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年8月20日執筆  2004年8月24日掲載

観光施設のあり方

今年の夏は来客もなく、連日のんびりと過ごしている。
オリンピックが始まる前に外出しておこうと、ずいぶん周辺の地に遊びにも出かけた。
北側では、トルコ文化村(柏崎)、国営越後丘陵公園(長岡)。東側は目黒邸(守門村)や入広瀬村。南側では松之山や津南方面。

トルコ文化村は、一度経営破綻した後、再開したと聞いている。訪れるのは3度目だが、過去2回は経営破綻する前のこと。いちばん記憶に残っているのは、レストランで食べたトルコ料理のバイキングで、その味をもう一度、ということで再々訪した。
再開後は入場無料にする代わりにアトラクションごとにお金を取る方式だということだったが、訪れたのはお盆シーズンで、この期間だけは限定有料だった。
敷地は以前の倍くらいに広がっていて、新しく付け足したエリアには子供向けの娯楽施設(お化け屋敷や迷路など)がいくつか設置されていた。
お目当てのバイキングには時間ギリギリで間に合ったのだが、内容は以前とは大違いで、トルコ料理でもなんでもなく、よくある立食パーティでのメニュー(あるいはカラオケ店のメニュー)のようなものが数点並んでいただけ。カレーだの鶏の唐揚げだの……。味も推して知るべし。
ああ、経費節減に苦労しているのだなあという印象だけが残ってしまった。

トルコらしいアトラクションとしてはベリーダンス(腰や腹部を強調して振るエロチックなダンス)があり、これも前回見たときはなかなかのものだった。
しかし、今回はまず、ダンサーがどうもトルコ人には見えない(前回のダンサーよりずっと美人ではあったけれど)。踊りも、前に見たときのような激しさはなくて、ごくごく普通。
どうも、経営再建策によって経費を切りつめ、より子供受けを狙った結果、「トルコらしさ」がすっかり消えてしまい、地方にありがちな寂れた遊園地のようになってしまった感がある。
親子づれの客をターゲットにした場合、トルコの文化に触れたような気にさせる、という本来のコンセプトはどんどん薄まっていくのだろうか。
大人が楽しむためには、何か1点でもいいから(例えば本場トルコ料理が味わえるといった)気合いの入ったものを残してほしいのだが、それでは客の数が稼げないのかもしれない。
観光施設の経営は難しいな、と改めて思わされる。

長岡市郊外にある国営越後丘陵公園は、広大な敷地を大規模に造成した施設で、感じとしては横浜市にある「こどもの国」に似ている。
現在は「健康ゾーン」という120haのエリアが開園していて、将来はこれに「野生ゾーン」(180ha)、文化ゾーン(100ha)が加わるという。
現在の120ha部分だけでも、全部歩いて回るのは相当な体力を要する。
丘陵の上には展望台があり、そこまでは無料シャトルバスが往復している。全長3kmの自然探勝路を歩いてのぼることも可能だが、自家用車で直接展望台まで行くことはできない。
中央部には「緑の千畳敷」と呼ばれる平坦なエリアがあり、その周囲にあるジョギングコースは1周1km。
水遊び広場や木製のフィールドアスレチック遊具広場などがあり、親子連れで来れば、たっぷり1日遊べるだろう。
お盆の前後は、「サマーナイト・プレゼンツ」と称して、夜9時まで開園している。(普段は午後5時まで。11月、1~3月は午後4時半まで。12月は完全休園。3月は中旬の一時期だけ開園=平成16年度の場合)
イルミネーションを凝らした庭園やライトアップした噴水などがきれいで、真夏の夜のデートスポットには最適だろう。

訪れたのはこの「サマーナイト・プレゼンツ」期間の夕方から(5時以降に入園すると入園料が280円)だったが、入場者より従業員のほうが多いのではないかと思うくらい閑散としていた。
アルバイトの学生たちがみなよく教育されていて、誰も来ない縁日コーナー(射的など)の担当女性などは、椅子にも座らずずっと立ち続けていた。
国営ならではの余裕というか、儲けてやるという根性がまったくないので、のんびり過ごせる。でも、この広大な森林を大規模開発しちゃったんだなあ、一体いくら税金が注ぎ込まれたのかなあ、毎日どれだけ赤字を出しているのかなあ……という思いも抱かざるをえない。280円の入場料(他に駐車料金が310円)で遊んでいる自分がなんだか申し訳なくなってくる。
WEBサイトには運営実体が公開されている。
ちなみに、平成14年の利用者総数は27万4732人。これに対して同年度の事業費は整備費が27億9100万円、維持費が4億3400万円(合計32億2500万円)だそうだ。
平成元年に事業がスタートして平成15年までの累積事業費は、403億3300万円。
平成10年に開園してから平成14年までの入場者総数は116万3867人。平成15年に約30万人が利用したとして約146万人。403億を146万で割ると2万7602だから、今のところ、利用者ひとり(利用1回)あたり3万円弱のコストがかかっていることになる。
なんだか申し訳なくなってくるという思いは、やはり正しかったわけだ。

毎夏回っている妻有地方の「大地の芸術祭参加作品」めぐり。
十日町、川西、松代方面はほぼ踏破したので、今年は松之山、津南まで足(タイヤ?)を伸ばしてみた。
越後松之山「森の学校」キョロロは、2回連続で訪れた。1回目は食堂(「食文化体験工房」という)が閉まった後だったので、2回目には食事が目当てで立ち寄ったのだが、メニューがカレーと蕎麦しかない。松代の農耕文化センターで出しているお袋の味メニュー(見た目よりずっとおいしい)に比べると拍子抜けしてしまうのが残念。「田舎料理」を看板にするのなら、もう少し頑張ってもらいたいもの。大変なのは分かるけれど、こういうのは「この程度でかんべんしてもらおう」という気持ちが出たら最後、客に見放され、じり貧になって消えていくだけだろう。
すぐそばの「美人林」入り口にある無人売店(野菜などがほとんど100円)のような無理のない試みのほうが、長続きするし、訪れた人たちの記憶にもいい想い出として残る。
キョロロそのものは面白い施設だと思うので、なんとかもう一工夫、一頑張りを期待したいところ。

松之山町の外れ(上湯地区)にある「夢の家」はなかなか面白かった。
これは2000年の大地の芸術祭(第1回)のとき、作者のマリーナ・アブラモヴィッチさん(旧ユーゴスラビア出身)が出展した作品。100年前に建てられた農家を改装したもので、緑、青、紫、赤の4つの色をテーマにした「夢を見るための部屋」がある。
見学だけでなく、事前に予約すれば実際に宿泊できる。
「赤の部屋」は窓ガラスが赤く、赤い光が差し込む。部屋の中央に赤い棺桶のようなベッドがあり、宿泊者は赤い越冬スーツのような寝袋風パジャマを着てこの棺桶風ベッドで眠る。
ベッドには聖書くらいの厚さの日記帳が差し込まれていて、宿泊者は朝起きたらすぐ、この日記帳に、今見ていた夢の内容を記さなければならない。
寝袋風パジャマには巨大なピップエレキバンみたいな強力磁石がいくつも埋め込まれていて、枕は石でできている。
風呂は銅製で、ここにも水晶の枕がしつらえてある。
何から何まで、強制的に?夢を見るための仕掛け。結構しんどい体験になりそうだが、今でも宿泊希望者は少なくないらしい。

「夢の家」は2000年の大地の芸術祭終了後も、村の人たちの手で運営されている。今では、別の女性作家たちによる「収穫の家」「エリクシール/不老不死の薬」「米との対話」などの作品も併設されていて、これら全部を見る見学料がひとり400円。
訪れたときは平日だったので、他にはまったく見学者はいなくて、管理人のおばさんと一時間ほどのんびり話し込んでしまった。
宿泊は大人ひとり6000円、小学生3000円で、別に夕食代が2000円、朝食が500円。
親子連れで宿泊する客も多いらしい。
子供は棺桶風ベッドでひとりで寝るストレスで、結構トラウマになるかもしれないが、一生忘れない想い出になることも確かだろう。

巨額の税金を注ぎ込んで開発・運営する国営越後丘陵公園のような巨大施設より、きっかけを与えてもらった後は、試行錯誤しながらも地元の人たちが頑張って、その土地に根づかせていく、こうしたユニークな小規模施設のほうが、ずっと正しいあり方なのではないかと思える。
大地の芸術祭で作られた「作品」がその後宿泊施設として利用されている例としては、他にも川西町の「光の館」「コテージA、B、C」などがある。
「光の館」は大きな施設(宿泊定員12名)なので、1家族で利用するのは贅沢だが、コテージのほうはどれもお洒落で個性的な建物で、周囲の環境も魅力的。いつか泊まってみたいと思っている。
いずれにせよ、電気仕掛けの人形を見るため、絶叫マシンに乗るために3時間待ちの行列に並ぶような有名娯楽施設に出かけるより、こうした面白いスポットを探し出して訪ねたほうが、ずっと面白い体験になるだろう。
毎年、夏休みの「家族サービス」が辛いとお嘆きのお父さんたちに、お勧めしたい。
夢の家の赤い部屋
●「夢を見るための赤の部屋」
この「ベッド」で見る夢は……うなされそう……

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