たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年9月17日執筆  2004年9月21日掲載

核の綱渡り

今朝(2004年9月17日)、玄関から一歩外に出たら、車の屋根やボンネットが真っ白になっていた。よく見ると細かな灰のようなものが積もっている。
最初は、近所で誰かがゴミでも燃やしたのかと思ったが、ニュースを見てびっくり。浅間山噴火に伴う火山灰らしい
群馬県・長野県県境にある浅間山の噴火が、我が家(川崎市北部)にまで灰を降らせるとは。
思わず、これがただの火山灰ではなく「死の灰」だったら……と想像してしまった。

先日の北朝鮮で起きた謎の大爆発騒ぎは、結局真相がよく分からないままうやむやになりそうな気配だが、驚くべきなのは爆発(あったのかなかったのか……)そのものではなく、「真相がよく分からない」ということのほうではないだろうか。
当初、メディアでは「北朝鮮の軍事施設では、技術者が腹ぺこでまともに仕事ができない」「みんなやる気をなくしているから、事故はいつ起きてもおかしくない」などという「関係者」の証言がまことしやかに流れた。聞かされる我々も「まあ、そういうことは大いにありえるだろうな」と、別段驚かずに聞いていた。
そのうち、北朝鮮は、ダム建設のための単なる発破作業だと説明したが、その説明もすぐに出てきたわけではない。
ついには、情報元の韓国が「そもそも爆発はなかった」と訂正するなど、どんどん尻すぼみになっていく。一体何が本当なのか?
「北朝鮮が言うことだから、信用はできないよね」
「でも、アメリカも追認したよ」
「それもなんだかなあ。本当は違うって分かっているのに、何か計算があってとぼけているだけなんじゃないの?」
……そんな会話が日本のあちこちで交わされていたはずだ。
何があったか分からないということが「普通の状態」で、それに対して他国の政府がわざと偽情報を出しているかもしれないというのも「大いにありえる」こと。こんな状況が日常化していることが、なによりも恐ろしい。

さらに思い出すのは先日の美浜原発の事故。
28年前の運転開始時には10ミリあった配管の肉厚が、現在は最も薄いところで0.4ミリになっていたとか、場所によっては一度も検査したことがなかったとか、勝手に検査基準を甘く解釈していたとか、とんでもない事実が次々に明らかになっている。二次系の配管はただのお湯が流れているだけだから破裂してもべつにどうってことないや、くらいに思っているのだろうか。
技術者が腹ぺこでやる気が出ないわけではない日本でさえこうなのだ。かの国では一体どういうことになるのか。

「何が起きたのか分からない」のが普通になっているかの国に対して、日米韓および欧州連合は、大型軽水炉2基を建設してあげましょうと約束している。1994年に、当時北朝鮮が進めていたとされる黒鉛炉建設をやめさせるため、代わりに軽水炉建設を認めて援助すると約束したわけだが、その後、この約束はなかったことにしましょうね、とはなっていないらしい。ごたごたが続いて、建設が遅れているだけ。
こんな恐ろしいことがあっていいのだろうか。爆発があっても、それが何の爆発なのかもよく分からないという国で原子力発電所が稼働するとしたら……。正気の沙汰とは思えない。

核施設で重大事故が起きて放射能漏れがあれば、風下地域は被害を避けようがない。朝鮮半島の風下はどこ? 颱風の経路を見ていれば、大体見当はつくもんね。
いろんなことにいちいち驚かなくなっている我々が慌てふためくとき。そのときはもう、取り返しがつかない事態なのだろう。
……覚悟、決めておきますか?
梅沢父子の狛犬
●日本一デコラティブな狛犬
国津神社(福島県西白河郡東村)
昭和25(1950)年2月建立。石工:梅沢敬明・智明
(c)狛犬ネット http://komainu.net/

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