たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年10月15日執筆  2004年10月19日掲載

お席を用意いたします

最近、自分の中でほとんど消化されている情報を、もう一度最初から疑ってみるということが増えてきた。
例えば、「ダイオキシンの発生を抑えるためには高性能な焼却炉の導入を進めることが不可欠」とされ、実際にその成果は劇的に上がったと報道されたが、一方では、意図的に呑み込んだりしない限り、環境中に存在するダイオキシンで健康に問題が生じることなどない、という主張が出てきたりする。
合成洗剤より石鹸のほうが毒性が高いという論は以前からあり、僕も、それに関する話やデータがあれば注意して読むようにしている。(今のところ、石鹸派である)
地球温暖化に関しても、本当に二酸化炭素の増加が温暖化の原因なのかという疑問が提出されているので、この問題に関してもまだまだ頭を固くせず、なるべく多方面から情報が入ってこないかと気をつけてはいる。(温暖化したから二酸化炭素が増えたのだという説も捨てがたいと感じる)

情報を扱うのは本当に疲れる。慎重に接しているつもりでも、どこかで先入観や固まってしまった常識が邪魔をしていることがある。
しかも、情報はいくらでも操作できる。また、情報を色づけしたり大量に露出させたりするにはお金が必要なので、大企業、大資本、権力に有利な情報ほど定着しやすい。

もう、20年以上前のことになると思うが、雑誌の小さなコラム(本当に小さな囲みの、千数百字程度のもの)で、紙おむつと布おむつはどちらが「環境に優しいか」という話を書いた。
当時、紙おむつは森林資源を浪費しているという「環境派」もたくさんいた。しかし、紙おむつは石油製品であって、パルプとは何の関係もない。そのへんからして間違っているのでは議論にもならない。
石油製品と理解した上で、では、紙おむつを使い捨てることによる環境負荷と、糞尿まみれの布おむつを洗濯することによって生じる環境負荷とどちらが大きいのか? 使うエネルギーや排水の汚染を正確に計算し、比較するのは簡単なことではない……というような内容のことを書いたところ、すぐに大手のケミカルメーカーから電話がかかってきた。
相手は女性で、声の感じからするとおそらく40代以上だろうか。
「私どもは先生のような慧眼をお持ちのかたをずっと探していました。一度ぜひお会いして、私たちの考えを知っていただきたいと存じます。そのようなお席を用意いたしますので、ぜひご都合のいい日時をお知らせください」

驚いた。
僕のようなまったく無名のライターに、「お席を用意」してまで、何を刷り込むのだろうか。
大学教授や、すでに名の売れた評論家、文化人タレントなどには、もっと大変なお席を用意するのだろうなあ……などと思いながら、その「お席」の件は丁重にお断りした。
今思えば、後学のためにどんな勉強をさせられるのか体験しておくべきだったかもしれない。しかし、本能的に、これはまずいなあと感じたのだ。
熱心な石鹸布教者が、ある日を境に突然、石鹸有害論を熱弁するようなことがある。あまりにも鮮やかな変身ぶりなので、周囲も呆然とさせられるのだが、もしかしたらそれも「お席を用意された」のかもしれない。コンサルタント料とか、なんとかアドバイザー契約なんてのもあったりして……?

何か事件や事故が起きて(例えば颱風や地震の被害状況)、それが伝えられていくという情報伝達とは別に、最初に伝えたいメッセージがあって、それが「情報」という形で流布されるケースがある。
その場合、
1)ある方向付けをもってメッセージを伝えたい陰の発信者がまずいて、
2)その情報に権威付けしたり見えない色づけをする少数のプロの伝達者がいて、
3)それが報道関係者に渡る。
……という構図になるだろう。
これが広告であれば、1)はメーカーなどのクライアント、2)は広告産業、3)は広告の掲載メディアということになる。
現代では、こうした「広告方式の情報」が、ニュースの姿をまとうことが実に多い。

広告であれば、金は1)から2)に支払われる。もちろん3)にも渡るが、それは2)の必要経費のようなものだ。
情報戦の場合はどうか? やり方によっては、広告よりずっと安上がりで、しかも大きな効果を得られる。
「お席を用意」されるのはもちろん、2)の人たち。

お席を用意されることに慣れてしまった人たちの言うことは、あまり信用したくない。
でも、世の中には、お席を用意してもらいたい人たちがいっぱいいるのだろう。そんなにおいしいものが食べられるのかしら?

銭湯の裏側
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