たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2004年10月22日執筆  2004年10月26日掲載

ものの値段

パソコンにつなぐ携帯電話型キーボードというものが発売されている。普通のキーボードより携帯電話の小さなボタンから親指だけで入力するほうが速いという人のための商品?
いやぁ、びっくりした。ジョーク商品かなと思ったら、発売元は売る気満々らしくて、特許出願中なのだとか。
昔、「親指入力」といえば富士通の親指シフトキーボードのことだったけれど、今では携帯端末からの入力のことをイメージする人のほうが多いだろう。
3990円。売れるのか?

……というのは、一応マクラで、本日のお題は「ものの値段」である。
最近、かみさんが動かなくなっている腕時計をまとめて修理に出した。いちばん古いものは、中学生時代(ということは35年以上前)に買ってもらった男性用の手巻き腕時計。自動巻ではなく、完全な手巻きゼンマイ式。1日以上放っておくと止まってしまうという懐かしいアナログ時計。
その他、いくつか直したようだが、ほとんどのものは買ったときの値段より高くついた。

WEBで「時計修理」を検索すると、時計屋さんのサイトがたくさんヒットする。どのお店も、修理は高級腕時計が対象で、ロンジンだのロレックスだのオメガだのの代表的モデルの修理が大体いくらくらいか表示している。1万円以下の腕時計では、結局新しいものを買ったほうが安いということなのだろう。父親から買ってもらった17石(懐かしいね、この表示)の腕時計を修理するというの相当珍しいケースだろう。よほど想い出がある品とかでないと、高い修理代を出してまで直そうとは思わないに違いない。

最近では、駅の構内やコンビニなどでよく1000円前後の腕時計が売られている。腕時計の電池交換が大体1000円だから、電池が切れたら新しい1000円腕時計を買えばいいや、という考え方もある。
そもそも、携帯電話を持つようになってからは、腕時計をしなくなった。外出するときでも腕時計はしない。するのは一年に数回だろうか。大学で授業をするときなどは、あと何分あるのかをちらちら見るために腕時計をしていくが、それ以外ではまったくしなくなった。
それでも、引き出しの中に入っている数個の腕時計が止まってしまうと、電池交換してしまう。
僕は1万円以上の腕時計は買わないので、どれも数千円のものだ。使わないのに電池だけ交換するというのももったいない話だが、止まっているとなんとなく気持ちが悪いのだ。
僕のような人間には、昔の手巻き式腕時計が合っているかもしれない。

「時計修理」で検索した時計店のWEBサイトでは、「クロック修理は扱いません」と断っているところも結構あった。
おそらく、これも同じ理由だろう。クロックの場合、動かなくなったらムーブメント(機械部分)をそっくり取り替えることになる。腕も何も関係なくて、修理のやりがいがない。しかも、ムーブメントだけを取り寄せて取り替えるより、新しく買い直したほうが安くつくことが多そうだ。

我が家の居間には掛け時計が3つかかっている。台所の流しがある側には時計をかけられるような壁はないから、3方の壁全部に時計がかかっているわけだ。
いちばん高いのはアンティークな振り子時計(のレプリカ)で、バブルの頃、3万円で購入した。クオーツ時計だが、見かけは昔の振り子時計で、ダミーのゼンマイ穴まである。
毎正時にゴーンゴーンと鐘を叩く機能もある。この部分はちゃんと機械式で、本当にチャイム棒?をハンマーで叩いている。うるさくて、止めてあるのだけれど……。
後にも先にも、こんなに高い時計を買ったことはない。これは今なお壊れず、きちんと動いている。

次に高いのは、直径が47cmほどある大きな丸い木枠の時計。でかくてシンプルなのが気に入って、振り子時計購入の数年後に1万8000円で買ったが、これは過去2回壊れた。
大きいので時計屋に持ち込むのも面倒だし、修理を依頼すると高そうだ。
で、どうしたかというと、最初のときは、結婚式の引き出物でもらった(見るからにパーティの景品用という感じの)安い掛け時計があったので、そのムーブメントを外して交換した。
掛け時計のムーブメント交換で問題となるのは、針の付け根部分。長針、短針、秒針の3本が同心円の軸にはまっているわけだが、その取り付け部分の径が時計によって微妙に違うのだ。
そのときはうまい具合に、長針と短針はなんとかついたが、秒針の径だけはどうしても合わなかった。
そこで、秒針だけは交換用に使った時計のものを取り付けたので、妙に短くなった。時針、分針よりはるかに短い秒針がちょこまかと回る。
ま、いっか。

しかし、このムーブメント、いかにも安物の時計から取り外したために、狂いが激しく、ついには1日で1時間進むようになった。これでは使い物にならんので、先日、再度ムーブメント交換に挑戦。
近所のDIY店に行き、980円で売っている掛け時計の中で、いちばん大きなもの(つまり針が長いもの)を買ってきた。合わなかったときは針ごと交換しなければならないので、なるべく元の針の長さに近いものにするためだ。
残念ながら、今度は時針・分針・秒針すべて径が合わず、針は全部新しいものに交換した。
買ってきた時計は直径30cmほどのものだったので、針はどれも短くなった。しかしまあ、それほど変でもない。
交換後1週間以上経ったが、極めて正確に動き続けている。
「部品」として購入された980円の時計は、一度も生まれたままの姿で時計としての機能を果たすことなく、ボディはそっくり捨てられてしまった。
哀れ。

似たようなことは、眼鏡でもある。
僕は多分今まで20個以上の眼鏡を買って、今なお使える状態にあるものが10個近くあると思うのだが(正確には把握していない)、1本(フレームが馬革張りという変な眼鏡)を除き、すべてメタルフレーム。鼻パッドや弦の付け根のビスがよくなくなる。
こんなとき、眼鏡屋に持ち込めば数百円で直してくれるが、なんだか気が引ける。眼鏡屋さんとしては、ビスや鼻パッドの交換・補充の客なんて、面倒なだけ。親切にして好印象を残し、次に買い換えるときにまた来てもらいたいということで、場合によっては「この程度のことならお代はいいですよ」なんてことになるかもしれない。それを思うと、店に行くのが気が重くなってしまうのだ。

で、最近ではこういうとき、100円ショップを活用する。
100円ショップで売っている老眼鏡(もちろん100円)を買ってきて、鼻パッドやビスなどの部品取りに使うのだ。
精密ドライバーがなければ、それも100円で売っている。
当初は「100円ショップで眼鏡用の小さなビスを売っていないかなあ」と思ったのだが、考えてみれば眼鏡そのものが100円で売られているのだから、それを買ってきてビスだけ使えばいいわけである。
これも、「あ、そうか!」と気づいたときは、小さなショックを覚えた。ビス1本をつけてもらうより、製品を丸ごとを買ってきたほうが安いし簡単というのは、どこか間違っているよなあ。

ものの値段ということでもうひとつ。
本日、重い腰を上げてETCを申し込んだ。
えとせとらではなく、Electronic Toll Collection Systemというやつ。
今までは5万円(利用額5万8000円分)のハイウェイカードをもっぱら使っていたのだが、5万円ハイカは廃止されてしまった。腹立たしくて、誰がETCなんか付けるもんかと意地を張っていたのだが、やはり根負け。
我が愛車は電波を通さないフロントガラスなので、ルームミラー裏側のほんの数センチだけ電波を通す部分には、カーナビ用のGPSアンテナ、ETC用アンテナ、レーダー探知機(これがいちばんの必需品だったりして……)がごちゃごちゃとひしめき合うことになる。スマートじゃない。

ところで、ハイカ偽造券の被害額が250億円に達する見込みだと、日本道路公団が発表したそうだ。1999年ごろから出回り始めて、去年、3万円、5万円のハイカを販売停止。今年3月からは使用もできなくしたのだが、その数年間で250億円ということは、それだけ偽造が簡単だったということである。いったい何枚の偽造券が使われたのか。単純に5万で割っても、50万枚!
そんなに使われるまで、放っておいたわけ? なにそれ?
これだけでも、道路公団のトップと責任者は総辞職でしょ。
僕が今回購入を申し込んだETC車載器は約1万円。分離型でなければ数千円で売られている。250億円ということは、1万円×250万。5000円の車載器なら500万台分の金額である。この偽造被害額で、500万台のETC車載器をただで配れた計算になる。
考えれば考えるほど、ETCを取り付けるのが腹立たしくなってくる。
数年後、「偽造ETCカード&車載器の被害額○○億円」なんていうニュースが流れないようにしてほしいもんだ。

時計
●針を総取り替えした掛け時計
(左が修理前、右が修理後。針が短くなったけど、まあ見られるでしょ)
(c)takuki.com http://takuki.com/

『eメールストレス処方箋』(SCC) 『eメールストレス処方箋』(SCC 1470円税込)
 メールによる人間関係トラブル、外部からのウイルスやspam(迷惑メール)攻撃によって、現代人はストレス漬けになっている。かといってメールを使わないわけにはいかない……。
せめてこの本を読んで、メールストレスを軽減しよう。お、こんな方法があったのか、と思わせる意外な情報やメールの世界の裏話がいっぱい。
  Amazonで購入はこちら
  目次へデジタルストレス王・目次へ     次のコラムへ次のコラムへ

★タヌパック音楽館は、こちら
タヌパックブックス
★狛犬ネットは、こちら
★本の紹介は、こちら
     目次へ戻る(takuki.com のHOMEへ)


これを読まずに死ねるか? 小説、電脳、その他もろもろ。鐸木能光の本の紹介・ご購入はこちら    タヌパックのCD購入はこちら