たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2005年11月4日執筆  2005年11月8日掲載

有料道路料金改定は「後出しジャンケン」だ


高速道路のETC利用率が50%を超えたそうだ。当初の目論見より半年遅かったという。
ETC装着を推進するため、旧日本道路公団(現・○○高速道路株式会社)は、なりふり構わぬ追い込み作戦を進めてきた。
ハイウェイカードの全面廃止。各種回数券の廃止。ETC利用者向け各種割引サービスの開始。
僕は、今まではもっぱら5万円のハイウェイカードを使っていたが(これで実質8000円割引)、使えなくなってからは仕方なくETCをつけて前払割引を利用していた(5万円前払でハイウェイカードと同じ8000円割引)。
しかし、今年の年末でこの前払割引も廃止される。代わるのはETCマイレージサービスという割引制度で、東/中/西日本高速道路株式会社の高速国道の利用50円につき1ポイント(50円未満は切り捨てられてポイントはつかない)、一般有料道路の利用100円につき1ポイント(100円未満は切り捨てられポイントはつかない)。1000ポイントで8000円分の還元があるので、一見、前払割引(5万円で5万8000円分通行可能)と同じようだが、実は以下のような巧妙な罠?があり、前払割引に比べるとかなり損なのである

1)ポイントは2年間しか有効でないため、2年で5万円を使わない人は効率よくポイント還元できない。
2)東/中/西日本高速道路株式会社の高速国道の利用は50円につき1ポイントだが、一般有料国道の料金は100円につき1ポイントなので、割引率は半減する。
3)高速道路50円未満、一般有料国道100円未満は切り捨てられるので、前払割引のようにむらなく割引になるわけではない。
4)東/中/西日本高速道路株式会社・阪神高速道路株式会社・本州四国連絡高速道路株式会社以外の他会社・公社の道路では、ETCを使ったとしても、現在はマイレージポイントがつかない。
5)東/中/西日本高速道路株式会社間のポイント以外、異なる会社間でのポイント合算はできない。つまり、各会社のポイントは別々に計算され、別々に貯まっていく。そのため、たまに走った別会社の料金についたポイントはずっと放置され、結局は使えないまま無駄になる。
6)貯まったポイントを自動で還元するサービスは、東/中/西日本高速道路株式会社の場合、1000ポイント→8000円しかなく、他の場合はいちいち自分で利用状況をチェックして還元申請する必要がある。そのため、還元しないまま有効期限の2年を超えてしまい、無効になるポイントがかなり出ると思われる。
7)しかも、自動還元サービスは会社ごとに選択することはできず、1種類のみしか設定できない。
8)深夜割引などの割引が適用された場合、ポイントは割引後の金額に対してつくので、前払割引より損になる。

要するに、前払割引とマイレージポイント割引は、一見同じ割引率に見えるが、どう考えてもマイレージのほうが損な制度なのである。

来年3月まではポイントが2倍つきますよ、というキャンペーンをやっているが、これも巧妙な仕掛けである。このポイント2倍を理由に、「阪神高速道路株式会社・本州四国連絡高速道路株式会社以外の他会社・公社の道路でポイントが付かなくても、東/中/西日本高速道路株式会社の高速国道での割引額分だけで前払割引の割引額を上回る場合があります」などとPRできる。しかし、前払金が残っている場合は、マイレージを選択できない(自動的に前払い金から引き落とされる)から、前払割引の積み増し期限とされた今年12月20日までに前払いをしておこうと思えば、必然的にマイレージの2倍特典は受けられない。
つまり、「マイレージ2倍特典を来年3月まで延長しました」というのは、早めに前払積み増しを諦めさせるための巧妙な戦略と見ることができる。
(ちなみに僕の場合、先日前払い残額がゼロになった。12月20まではマイレージポイント2倍を使うために積み増しはせず、12月20日ぎりぎりに限度額いっぱいまで積み増しするつもりである。12月20日~来年3月末までに高速道路を使う回数はそれほどないだろうから、マイレージのポイント2倍特典より、確実に5万円で8000円値引きになる前払割引のほうが得だろうからだ。)

まったく、やり方が汚いよなあと思っていたところに、さらに怒りを覚えるニュースが飛び込んできた。
首都高と阪神高速が、2008年度をめどに、距離制料金体系を導入するというのだ。
首都高は現行では全線700円の均一料金。上限が700円のまま、短い距離が安くなるのなら分かる。ところが、目下の案では、タクシーと同じで、「初乗り」料金(首都高は210円、阪神高速は290円)プラス1kmあたり31円の距離料金を上乗せするのだとか。

首都高の場合、50km走行すれば、210円+31円×50で1760円となり、現行700円で走行できたものが1000円以上の値上がりになる。往復すれば2000円以上。
僕が利用するときは、東名出入口~三郷まで、端から端までだから、もろにこれ以上の負担増となる。
「新宿-中央道・高井戸間(8km)なら、210円+8×31円=450円で、現行の700円よりずっと安くなる」などとアピールしているが、そもそも首都高を短い距離でちょこちょこ利用する人は少ないはずだ。
首都高は、東名から東北道、常磐道、東関道など、東京を超えて東北や千葉、常磐方面に抜ける車が「通りたくないが、仕方ないから通る道路」という位置づけになっている。
外環道が完成していれば、わざわざ都内に排気ガスをまき散らすためだけに侵入する必要はないのである。しかも、しょっちゅうとんでもない渋滞を起こし、渋滞に巻き込まれたら最後、下りようにも簡単には下りられない悪魔のような道路だ。一般高速道路のように、走ることのありがたみが感じられない道路といえる。過去の値上げの際には、怒ったドライバーが「不法値上げ反対」と、無賃通行突破を強行する騒ぎもあった。
東名や中央道から東北道や常磐道に連続走行する車は、極端な値上げに見舞われる。
この値上げに悲鳴を上げた職業ドライバーたちがみんな一般道に下りてしまったら、都内の一般道の渋滞は悪化する恐れがある。

それにしてもこの価格設定を考案する神経が分からない。50kmで1760円というのは、一般の高速道路(50kmで約1500円)より高い。よくそんな図々しい価格設定を考えつくものだ。
また、距離制というが、いくつも疑問がある。
1)事故や渋滞で迂回したときの距離はどうする気なのか。入口と出口だけをチェックして最短距離で計算するのだろうが、それでも、場合によっては渋滞を避けるために、本来より遠い距離の出口で下りることもある。さんざんな目に合わされた挙げ句に、迂回した分の料金も余計に請求されたのではたまったものではない。
2)高速道路にはある距離に応じた割引もなく、タクシーと同じ、純粋距離割増というのもおかしい。
3)ETCを搭載していない車は入り口で最高料金を支払い、出口で精算するシステムを考えているそうだが、そんなことをしたら、入口だけでなく出口にも有人チェックレーンを作らなければならず、かえって設備費、人件費増の無駄になる。

新料金制度が、ETC導入による合理化が目的のひとつだとすれば、むしろ首都高は上限700円で、短い距離は距離に応じて細かく課金、とか、一定基準以上の渋滞が出て走行時間が長くかかった場合は自動的に割引、東名→首都高→東北道、のように、首都高を挟んで2つの高速道路を連続して走行した場合、高速道路料金は合算した距離に応じて割引、などの細かい「割引制度」がコンピュータ上で自動的にできるわけで、そっちの方向に工夫していくべきである。

まったくもう……。
民営化すれば無駄がなくなると言ったのは誰だっけ?
民営化しても競争のない分野であれば、利益追求という企業論理の悪い面だけが出るのは当然なのだ。有料道路の運営というのは、郵便事業と宅配便業者、旧国鉄と私鉄のような官と民のライバル関係は存在しない。民営化したら、ますますやりたい放題ではないか。

ちなみに首都高のサイトは、民営化に伴い、http://www.mex.go.jp/ から http://www.shutoko.jp/ に変更になったが、トップページこそ「移転しました」表示が出るものの、旧ドメインのhttp://www.mex.go.jp/ から始まる各ページ(渋滞情報やマップなど)は突然アクセス不能になった。旧URLも当面は残しておき、ブックマークの書き換えをお願いするくらいのことはしてもいいだろうに、ある日突然バッサリURLが消えてしまうのだ。本当に競争に揉まれている民間企業なら、こんな横暴なことはやらない。
「民営化したらサービスが向上する」という話も、まったく期待できないことがすでに露呈し始めている。

自動車を利用するというのは、大変な環境負荷をかける行為だから、高い税金を払うのは仕方がないと思っている。しかし、道路公団民営化後の無神経な動きを見ている限り、民営化で、役所の悪い面がさらに悪くなったのではないかと疑う。払った金が効率的に使われているとは到底思えない。その結果、ますます環境負荷が増えるのであれば、やりきれない。
「独占民営化」というのは、環境負荷よりビジネスとして成立するかどうか、儲かるかどうかという方向に動きやすくなるということを意味している。経営陣や働いている人間の体質が変わらないなら、民営化なんかしないほうがまだマシではないか。

要するに、やっていることが後出しジャンケンと同じで、ずるいのだ。後から自分の都合のいいようにどんどんルールを変更できる。「最初はグー!」とかけ声をかけておいて、自分はいきなりパーを出すようなことを、平気でやっている。それが「独占民営化」の行き着く果てだ。
とりあえず、このふざけた新料金制度が本決まりになる前に、もっと怒りの声をあげよう。




●ムササビが来ないかなあ……と巣箱を設置

(c) Takuki Y. http://takuki.com

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