たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2006年8月4日執筆  2006年8月8日掲載

修理する日々

前回の「バックミラーがポロリ」には、何人かの読者のかたからお便りをいただいた。ご心配いただき、ありがとうございます。
内容はほぼ同じで、「最近のクルマのバックミラーはフロントガラスに直接接着してあるものが多いので特別なことではない。あまり強固にくっついていると衝突時に顔や頭がぶつかったとき凶器となってかえって危ない」というようなご指摘だった。
だいじょーぶですよ。構造上、そんなにガッチガチに取り付けられるはずもないし、触ってもいないのに運転中にポロリとミラーが取れるほうがはるかに危険なのでして……。

複数お寄せいただいた情報によれば、プジョー307は左ハンドル車でもバックミラーはガラスに直接ペタっと接着方式とのこと。また、国産車でも両面テープでとめてあるクルマが少なくないらしい。
いくら進化しているといって、どうも接着剤を過信しているような気もするのだが……。歴史の新しい新種の接着剤なら、10年単位での経年劣化試験もちゃんとできないのではなかろうか。

阿武隈に置いて足代わりにしているスズキのX90という10年以上前の小型四駆は、ちゃんとアームが屋根の裏側に固定されている。穴吹さんがVWビートルに乗っているのはコラムで何度か読んで知っていたので訊いてみたら、やはりちゃんと天井側についているとのことだった。
今度からクルマを見たらミラーがどのようにくっついているのか確かめてみる癖がつきそうだ。駐車場で人の車を覗いている怪しい人物がいると通報されたりして……。

とにかく、何もしないのにポロリと落ちてしまうのは困る。
で、その後、何種類もの接着剤、超強力とうたっている両面テープなど、いろいろな方法で元どおりにくっつけようと試みたがダメだった。
瞬間接着剤以外の接着剤は、乾くまでミラーを固定できないので無理。両面テープも、くっつける先からポロリ。そうこうしているうちに、どんどんガラスの接着面が接着剤で汚れてきて、その度に大変な苦労をして剥離液やスクレーパーで剥がしたりして……もういやっ!

最終的には接着面を大きくして両面テープでとりつけた。今のところ落ちてこない。しかし、これで確実に下取り価格は下がっただろうなあ。

思えば、人生のかなりの時間を、ものの修理とメンテナンスに費やしているような気がする。
基本的には貧乏くさい性分だからである。丸ごと買い換えるということがなかなかできない。

最初に買ったクルマは三菱のギャランAIIという1300ccのセダンだった。1971年製造で、購入時にはすでに8年落ちくらいだった。13万円で購入したのだが、修理ばかりしていた気がする。
ラジエーターに小さな穴が空いていて水が漏れてしまう故障のときは、なんとかならないかと、硬質系接着剤を使って穴を埋めたりした。結構、それでなんとかなってしまった。
冷却水に入れて水漏れしている穴を埋めるという薬剤が売られているが、あれはダメだった。かえっって余計なところに目詰まりを起こしてオーバーヒートの原因になった。
このクルマ、クーラーはついていなかったが、ただでさえ真夏はオーバーヒート気味で、最後は修理屋さんのアドバイスにより、サーモスタットを外して水を直で循環させたところ、見事に調子がよくなった。
昔のクルマは、そんな風に、手を焼きながらもアナログ的なやりとりができたのよね。今のクルマは電子制御部分が多くて、下手にいじれない。

ぶつけて凹んだフェンダーは、自分でパテ埋めして塗装した。
穴の空いたマフラーも、熱で硬化するテープをぐるぐるに巻いてなんとかしのいでいた。
そんな経験から、「穴が空く」という現象は、そこに何かを詰めれば直るじゃないの、と思ってしまう。

オペルティグラのエアコンガス漏れは、修理屋さんで見てもらったところ、漏れている場所が二か所見つかった。ひとつは調整バルブの「虫」が馬鹿になっていて、そこから微量な漏れが出ていた。もう一か所は、コンプレッサー本体とのつなぎ目あたりから少しずつ漏れているという。
「じゃあ、そのつなぎ目を埋めればいいんですね?」
と訊いたら、
「いいえ、それはできません。コンプレッサー本体ごと交換しないと」
との返事。それだけで十数万円は確実にかかる。29万円で買ったクルマにそこまでかける気がしないので、とりあえずガスを足してもらっておしまいにした。

WEBで検索すると、欧州車のエアコンガス漏れは、いやと言うほどいっぱい報告がある。中にこんなのがあった。
「ディーラーでは修理は部品丸ごと交換なので25万円かかると言われました。どうしても納得できなかったので、近所の電装屋に持ち込んだところ、『そうなんだよね〜。外車はすぐここがダメになるんだよね〜』と言いながら、1万5000円で直してくれました。ガス漏れで困っている人は、ディーラーでも修理工場でもなく、町の電装専門修理工場に行って相談してみることをお勧めします」

ほおお。それはいいことを聞いた。
要するに、ディーラーや一般修理工場では、メーカーの修理マニュアルにない修理はしたくないのだろう。でも、毎日エアコンの故障ばかり見ている専門の技術者にしてみれば、ここをこれで埋めちゃえば直るのよね、とか、この部品はちょっと工夫すれば作れるのよね、といったノウハウをいっぱい蓄積しているに違いない。

僕も、今まで掟破り?の修理をいっぱいやってきた。
越後の家では、つけたばかりの水洗トイレの便器が、最初の冬で割れてしまった。サイホン型の洋式便器は、裏側に細く水が回り込んでいる溝があり、凍ると内側からの圧力で便器の外側が割れてしまうのだった。
このときは悩んだ末、ホーロー接着剤というやつで修理した。見事にくっついて、その後10年以上、地震で家がつぶれるまで水漏れしなかった。
サイホン式便器は、冬季不在のときは灯油用ポンプで中に溜まった水をすっかり吸い出しておかないといけないということも学んだ。

屋外によくある鉄の階段やフェンスは錆でボロボロになる。これの修復にはデボマリンという塗料がいい。塗料というよりは一種の強力接着剤で、穴が空いたところに盛り上げるようにして塗り込めば、乾いた後は鉄と同じような強度になる。
デボマリンは鉄橋の修理などに使われているそうだ。普通のDIY店などでは売っていないが、塗料専門店に行くとある。

錆びたトタン屋根の再塗装にはビルドという塗料がいい。水色のとんでもない色の塗料だが、塗料そのものがやわらかくて保湿性があり、空気との接触を遮断して錆が進まない。一般に「防錆効果抜群」といわれているエポキシ系の塗料などよりはるかに使いやすく、効果も長持ちする。しかし、この塗料も普通には売っていない。

塗装屋さんに頼んでも、こうした塗料は絶対に使わない。コストがかかりすぎて儲からないからだ。
塗料専門店の店員に訊くと「塗装屋さんはそもそもこういう塗料があることすら知らないよ」とのこと。高い塗料であるというだけで、目もくれないのだろう。
結局、そういうものは自分で調べて自分で使うしかない。

最近修理したもので、結構大変だったのはギター。
ブーンという低周波のノイズが出て、ライブでは仕方なくこっそりアース線を付けてパンツの中に入れて人間アースしてしのいだ話はすでに書いたが、まさか毎回そんなみっともないことをするわけにはいかない。
先日、端子の接点などを総点検した。その結果、シールド線の中側が少しずつ劣化してシールドがきかなくなっていることが判明。ハンダがついている部分を根こそぎ切り取ってつけ直したところ見事に直った。芯線が髪の毛くらい細いので、半田づけは大変だった。老眼&近眼が進み、こういう作業はどんどん辛くなる。

ギターといえば、持っている唯一のエレキギター(Parker)のフレットが一か所浮いてまともに音が出なくなってしまった。これはちょっと自信がないので、修理してくれる工房を探そうと思う。

しかし、「修理」と「メンテナンス」でいちばん大変なのは、うちのウサギである。
奥歯が斜めに生えていて、半年で頬に突き刺さる。そのたびに麻酔をかけて奥歯を削るのだが、半年に一度では車検どころではない。
偏食で、胃腸も悪いので、5歳くらいからは毎日整腸剤やら毛玉防止のパパイヤ酵素やらを混ぜた特製の薬を1日2回飲ませないといけない。飲ませないとたちまち下痢をしたり胃に毛玉が詰まってものを食べなくなったりする。
健康に問題がありすぎるくせに、生命力だけは強くて、1歳半のとき、胃にものが詰まって食べられなくなったときは、なんと3週間以上餌を食べず、水だけで生きていた。その後、開腹手術で胃から強制的に異物を取りだしたのだが、そのまま死んでしまうと覚悟していたのに、その後、ちゃんと回復した。高性能だがすぐに壊れて修理ばかりしているクルマに似ている。

彼は今8年目の夏を過ごしている。ウサギとしてはかなりのご長寿さんだ。
家の外で次々に死んでいく野良猫に比べて、なんとまあ幸せなことか。将軍様のような一生である。
この将軍様のメンテナンスの大変さに比べたら、クルマや便器やギターの修理なんて、どうということはない。



ボロボロのネコ
●神社の売店でひなたぼっこしていたボロボロの野良猫
(福島県浪江町にて)



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