たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2006年9月8日執筆  2006年9月12日掲載

Komainic September


久々、阿武隈(福島県)から百合丘(川崎市)に戻ってきた。
戻ってきた日の夜中に、スカパー!のMONDO21で『山田五郎アワー 新マニア解体新書』#22の放送をリアルタイムで見た。

30分の番組でスタジオ収録が1時間ちょっと、他に赤坂氷川神社のロケもやったので、半分以上がカットになる計算。どんな編集をしているんだろうと思っていたが、予想よりはるかに真面目な作り方をしていたのでびっくり。
山田氏の理解力や教養のすばらしさのせいもあるが、若いディレクター氏の資質によるところも大きい。

ディレクターのS氏は、当初、日本参道研究会(狛研)の事務局に「誰か狛犬マニアを紹介してください」と頼んだそうだ。ところが、事務局長のMさんから「バラエティ番組はお断りしています」とあっさり拒否されたらしい。
それでも食い下がったところ、「まあ……たくきさんなら受けるかも」と言われ、僕に話が回ってきたという次第。

狛研は、過去何度か、地上波民放バラエティ番組に取り上げられているのだが、いずれも「世の中には変わった人たちがいる」という方向でのみ演出され、さんざんな目に合ってきた。
関西のテレビ局が制作した番組では、プリン同好会などと一緒に紹介されたのだが、会員たちが熱っぽく語った狛犬の話は全部カットされ、「狛犬ツアー」で、狛犬を取り囲んでカメラを向ける会員たちの姿を、おちょくったように流しただけ。
滋賀県で狛犬の連続盗難があったときなどは、狛研事務局に「ヤフオクで売ったらいくらで売れますか?」なんていう質問がきて、事務局長が激怒する一幕もあった。

そうした歴史があって、狛研事務局長はテレビメディアにはすっかり不審の目を向けている。
事務局長自身は、よくNHKの「ラジオ深夜便」などに出演して、狛犬の魅力について語っているので、決して「マスコミ嫌い」というわけではない。
しかし、オッパイが乱舞するCSの怪しいチャンネルで放送されるバラエティ番組となれば、事務局長が警戒したのも無理はない。
僕も、これが地上波民放からの申し出だったら、相当慎重になっていただろう。

ディレクターのS氏からメールで出演打診があったのは6月の終わりだった。
僕はすでにこの番組を何度か見ていて、面白いと思っていたから、二つ返事でOKした。
7月8日には赤坂氷川神社でロケ、7月18日にスタジオ収録という急なスケジュール。

衛星放送のオリジナル番組製作費は、地上波のそれとは2桁くらい違う。
赤坂神社ロケでは、やってきたのはS氏ひとりだけ。ひとりでディレクター兼カメラマン兼音声さんをこなしていた。
スタジオ収録というのもかなりの低予算ぶりだった。
スタジオとは名ばかりで、練馬区の住宅街にある普通の木造家屋で撮影。ハウススタジオといえばきこえはいいが、特別な装備など何もない。ブレーカーが落ちるなんてことは日常的にあるらしい。
出演者控え室にあてられた部屋にはダブルベッドがあった。普段はここで絶対AVの撮影をやっているとみた。
そこのリビングルームで一挙3本撮りをする。
山田五郎氏の話では、
「これでもずいぶんよくなったんですよ。番組が始まった当初は、スタジオ代が出なくて、屋外で撮影したり、知り合いの店を借りたり、大変だったんです。こうやっていつも同じスタジオが使えるようになって、どれだけ楽になったことか」
ということだ。

今回の『山田五郎アワー』は、おそらく今までテレビで狛犬が取り上げられた中でも、最もまともに、かつ魅力的に狛犬を扱った番組になったのではなかろうか。
屋外ロケにカメラマンや音声さんもつけられない超低予算。放送されるチャンネルはセックスとギャンブルネタ満載の、スカパー一般チャンネルでは最も過激なMONDO21。それを考えたら、放送された番組内容は奇跡のような真面目さだった。

赤坂氷川神社ロケのとき、ディレクター氏がていねいに狛犬を撮っていることにちょっと驚いた。
「ずいぶんていねいに撮ってますね」
と声をかけたら、
「だって、少しでもきれいな映像で見てもらいたいじゃないですか」
という答えが返ってきた。
仕事の現場ではごくあたりまえのことだが、この「あたりまえ」の精神が、今の地上波民放バラエティ番組からは消えている気がする。
ここで無理にでも笑いを取れ、とか、いかに視聴者が食いつきやすい下世話な興味を提示できるか、といった姿勢で最初から最後まで作られる。その結果、目の前にある「本物」の魅力にさえ気づかない。

今回の番組では、僕がサービス精神で用意した「日本一○○な狛犬」のコーナーなど、視聴者が喜びそうな絵は、収録したものの、最終的には全部カットされた。代わりに、狛犬の定義とか、芸術としての狛犬といった本気のテーマがしっかり残った。地上波民放バラエティ番組なら、絶対に逆になっているだろう。
そのまま見ているとすぐに女性のオッパイが画面いっぱいに映し出されるチャンネルで、狛犬をアカデミック!?に語る番組が放送されている。なんとも皮肉だ。

今月は狛犬月間である。
15日にようやく拙著『狛犬かがみ』(バナナブックス)が出る
謹呈本も含めて100冊自費購入を決意。今までこんなに気合いを入れて自分の本をPRしたことはない。

ついでに、22日には浅草の通称ウンコビル内にある「アサヒ・アートスクエア」で、「コマイヌバー」なるイベントも行われ、引っぱり出されることになった。
関西で活動している「コマイナーズ」という二人バンドが企画した、狛犬トークとミニライブ。一体どんなことになるのか、とっても不安である。




『山田五郎アワー』で狛犬を熱く語るたくき
●『山田五郎アワー』で狛犬を熱く語るたくき



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