たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2006年10月6日執筆  2006年10月10日掲載

日常写真家


12月に出る、僕にとって2冊目のデジカメ本(青春新書インテリジェンス)の入稿が昨日の深夜に完了。タイトルも今日(11/6)の午後に、出版社の会議で決まった。『裏技デジカメ術』だそうである。
この本の依頼があったとき、担当編集者が「実は私が担当した『裏技パソコン術』というのが売れまして、その勢いでデジカメ版をやりたいと編成会議に出したところ、通りました」という説明を受けていたので、まあ、タイトルは最初からこんな感じになるのだろうと思っていた。

9月の初めからとりかかって、ちょうど1か月。
176ページの本の半分がカラーページ(見開きで交互にカラーとモノクロになっている)。カラーページにはほとんど全部カラー写真を入れてあり、1ページに2点以上入るから、それだけで写真は300点を超える計算。それを連日Photoshopで加工していたわけで、目が疲れたのなんの。

ここまでは、事前の打ち合わせがかなり綿密だったこともあり、今までの本に比べると比較的スムーズに進んだのだが、最後の最後、各章の扉に使う写真の選定で、編集者と意見が食い違い、何点か差し替えた。
(興味のあるかたは、→ここに、候補写真を含む何枚かを並べてみたので覗いてみてください。
この中の6枚が、各章の扉に使われることになったのだが、さて、どれでしょう。)

今回収録した300点超の写真は、2004年から今年までのものが中心。越後の震災前に撮った長岡の花火や、妻有アートトリエンナーレの作品群、震災後の我が家崩壊の写真、そして阿武隈に移ってきてからの花や虫の写真、新築したスタジオや、設計してくれた建築士一家、職人さんたちの姿などなどが登場。写真を眺めていると、改めて、この3年間でいろんなことがあったのだなあと、ちょっぴり感慨にふけってしまう。

前回の『デジカメ写真は撮ったまま使うな! ガバッと撮ってサクッと直す』(岩波アクティブ新書)は、勢いで作ったところがあり、そんなに苦労したという実感はなかった。
岩波書店から「アクティブ新書に何か1冊書いてくれませんか」というお話があったとき、僕は当初「デジカメの本を書きたい」と申し出て、企画書も出したのだが、編集部内で「プロカメラマンでもない人間に写真の本が書けるのか?」という声が上がったようで、やらせてもらえなかった。

で、ま、しょうがないかと書いた『パソコンは買ったまま使うな!』が売れたので(アクティブ新書シリーズが終わってしまった後も増刷を続け、8刷までいった)、2冊目を出してもらえることになり、そこでようやく念願かなってデジカメの本を手がけることができた、といういきさつだった。
そんなわけで、ようやくデジカメの本が書ける、自分の写真を本の中に残せる、というだけで嬉しくて、執筆の苦労はあまり感じなかった。

今回はだいぶ違った。
2冊目ともなると、「プロカメラマンではないから」という言い訳は通用しない。いや、プロカメラマン以上に、たくきよしみつこそ、こうした本を書く適任者であると、自ら証明しなければならないという気持ちが強かった。
正直、今も、心のどこかでは自信がない。自分では「いい写真」だと思っても、それは素人の思い込みかもしれず、プロの目から見ると「ダメ写真の典型」かもしれない。
しかし、何をもってして「いい写真」「ダメ写真」と言われるのか。ある人にとっては「いい写真」でも、ある人にとっては「つまらない写真」というのはいくらでもある。
美術作品の鑑賞と同じことで、結局は、自分のセンス、審美眼を信じるしかない。

また、もう「アマチュアだから」という言い訳は許されないが、僕はあくまでもアマチュア写真愛好者のひとりとして、プロカメラマンとは違う視点から、いい写真、ダメな写真を語ろうと思っている。そうでなければ、類書が山のようにある中で、わざわざデジカメ本を書く意味がない。

例えば、デジタル一眼レフが売れているというが、カメラとセット販売されている暗いズームレンズを使っていたのでは、明るい室外以外ではろくな写真が撮れない。明るいレンズは、カメラ本体以上に高い。
自分も含めて、アマチュアが趣味に使えるお金というのは限られている。また、アマチュアカメラマンには、屋外撮影でレフ板を持ってくれる助手もいなければ、写真スタジオを使うお金もない。放っておいてもかっこいいポーズを作ってくれるプロのモデルを撮る機会もまずない。
いろいろな面でプロとは違う条件で写真を撮るわけで、そのへん、前向きに開き直らないとしょうがない。プロじゃないのだから、失敗しても誰からも怒られない。プロじゃないのだから、お金をかけずにいい写真を撮ることを楽しもう……というように。

今回初めて間接照明を使った「食べ物の物撮り」に挑戦したが、そのために購入した間接照明ボックスは1700円だった。照明は写真用のは何万円もするので、ホームセンターで購入した2980円の蛍光灯。にぎやかしの食器類などは100円ショップで調達した。
そのへんも、常に「アマチュアの立場」から工夫していかないと、と思っている。

ちなみに、100円ショップには撮影に利用できるような小物がいっぱいある。
お弁当のおかず小分け用アルミ箔(15枚100円)は、カメラのポップアップストロボの前にうまく取りつけると、天井バウンスができる。
アルミのレジャーシート(畳1畳分)も100円で売っているが、これは折りたたんで簡単に持ち運べるレフ板になる。
小型デジカメには、付属のリストストラップではなく、100円ショップで売っているネックストラップをつけて、首からピンと張った状態で撮れば手ぶれを大幅に防げる。
100円で売っている小型のクーラーボックスは、サブのカメラバッグにちょうどいい。
100円のソフトケース、化粧品ボックスも、カメラ保護ケースやレンズケースにちょうどいい。
そんなことも、今回の本の執筆中に自分で学習した。

デジカメの登場で、アマチュアがプロに同一条件で対抗できるようになったことが1つある。それは「何枚でも心おきなく撮れる」ということ。
僕はここ数年、年間数万枚の写真を撮っているが、そんな枚数、フィルムカメラ時代には到底考えられなかった。「何枚撮ってもただ」のデジカメだからこそ可能になったことだ。
ところが、この「何枚も撮る」という基本的なことが、まだまだ一般のデジカメユーザーには浸透していない。
カメラからメモリメディアを取り出して、そのままお店に持ち込んで全部プリントしてもらうなんてことをしている人が結構いるらしいが、それではフィルム時代と何も変わらないではないか。

とにかくいっぱい撮る。同じシーンを何枚も撮る。撮った後、膨大な写真の中からいいものだけを選んであとは捨てる。その作業の中で、失敗写真と、偶然うまく撮れた写真の差はなんなのかをよく考える。
これを繰り返しているだけで、写真の腕はどんどん上がっていく。

プロカメラマンの多くは、最初から写真のセンスがあったわけではなく、時間とお金をかけて写真の仕組みを学んだ人たちである。センスだけなら、今すぐプロになれるアマチュアカメラマンは世の中にごまんといるだろう。
あとは数をこなし、失敗を重ねて腕を磨けばいいだけ。フィルム時代にはお金と時間の制約があってそれが無理だったが、デジカメ時代の今なら、誰もが簡単にできる。

「日常写真家」は楽しい。仕事になろうがなるまいが、自分の人生の歩みに合わせて「いい写真」が増えていくのは素敵なことだ。
今度の本の、僕自身の「心の中でのタイトル」はまさにこれ──『日常写真家』である。
こんなご時世だからこそ、楽しいことを見つけていかないと……ね。



●雰囲気を変えて撮る



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