たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2003年7月18日執筆  2003年7月22日掲載

真の「老人大国」をめざせ

某銀行が、「どうなる? これからの日本経済」(by 長尾数馬)というリポートを発表し、ぜひ読みなさいというメールを送ってきた。
内容は、

  1. 日本は急速に高齢社会となっていて、生産年齢人口(15~64歳)が減ってきている。このままでは世界でも突出した高齢国家となる。
  2. 日本の国内総生産(GDP)は生産年齢人口の増減と連動してきており、このままいけば、生産年齢人口の減少でGDPも減少する。
  3. そんな中で、若年層が高齢者層を支えるという日本の年金制度は維持が困難。
  4. しかも、日本は世界で類を見ない借金大国で、一般政府債務残高のGDP比は150~160%。これほどの数字になっている国は先進国中では見あたらず、米、英、仏、豪、ニュージーランドなどはすべて80%以下。10年ほど前に「先進国中最悪」と言われたイタリアでさえ、財政構造改革のおかげで、125%(1994年)をピークとして減少してきている。


というようなもの。
結論としては、だから日本の先行きはあなたが考えているよりずっと危ういですよ。円預金だけでいいんですか? 外貨預金もしましょう。そうすればうちは手数料で儲かりますから……ということなのだろう。

このリポートの内容そのものは概ね間違っていないだろう。しかし、「ではどうすればいいのか」というところでは、誰もが自信を持ってものを言わない。

デジタルストレス王としては、過去何度かこうしたテーマを取り上げ、自分なりの意見を表明してきた。解決策があるとすれば、


  1. 経済の無限成長という馬鹿げた幻想をさっさと捨てる
  2. 高齢化社会は避けられないのだから、高齢者がいかに楽しく働けるかを考える
  3. 社会システムを改変するためには、まず政治家や官僚を入れ替え、再教育する


ということしかないと思っている。

戦前の「産めよ増やせよ」思想を未だに引きずって、当然と思っているような老政治家が、とんちんかんな発言を繰り返す。これはもう老害以外のなにものでもないのだから、さっさと引退していただくしかない。
日本の高齢化が他国よりも急なのは、簡単に言えば「人がなかなか死なない」国だからだ。人間が長生きできる国は悪い国ではないだろう。
しかし、今のままの長寿を保ったまま生産年齢人口を増やすということは、この狭い国土に人間をあふれさせるということに他ならない。もっと土地を、もっと資源を……という発想が行き着く先は何か。歴史が教えているはずだ。

年金制度はとっくに破綻している。歳をとったら年金で暮らすという考え方は、これから先の社会では不可能なのだ。ではどう考えればいいのか?
答えはひとつ。
「死ぬまで楽しく働く」
である。
仕事が楽しくない、早く開放され、楽になりたい……こんな人生は最初から駄目なのだ。働くことが楽しくてしょうがない。歳をとればとるほど仕事ができるようになり、達成感、充実感が味わえる。体力がなくなる分、経験や技術を生かせ、精神的な満足度も上がる。60歳? まだまだ小僧だな。わっはっは。わしは80になってようやく仕事の本質が見えてきた。おまえさんも早くそういう境地になりなさいね。
……こういう人生こそ理想ではないのか。
間違っても、若い世代に面倒を見てもらおうなんて思ってはいけない。
日々のニュースを見ていても、今の若い世代に高齢世代を支えるだけの技量があるとはとても思えない。
「老後」という言葉も、もう死語にしよう。死ぬまで一直線の人生。「充実して生きる」ことに、年齢は関係ない。

それを不可能にしているのは、政治家、官僚、大企業のトップといった一部の老人たちだ。彼らが、税金を無駄遣いし、あるいは税金の不正使用や課税の不公平に助けられているからこそ、まともな経済が育たない。経済が破綻すれば、真面目に努力し、生きている「まともな人」たちが生きにくくなる。余裕がなくなり、人生のよろこびを得られる局面が狭まる。
もっと真剣に怒らなければ、本当に手遅れになる。
日本道路公団のでたらめぶりなどは論外で、改革などと悠長なことを言っている暇はない。もはや一刻の猶予もなく道路公団は解散させるべきだ。

民主党が、高速道路無料化案を打ち出したが、この際、分かりやすい公約をもっと立て続けに出せないものか。
すぐにできるのは、国会議員の歳費大幅引き下げ、汚職に対する罰則強化(基本的に、国会議員や官僚の汚職には執行猶予を認めない)、政治献金の完全廃止あたりだろう。これらは実施したら大混乱になるとか、国がひっくり返るというようなものではない。単に「覚悟」の問題だ。留置所にいながらにして議員歳費を受け取り、次の選挙に立候補できるなどということがあっていいはずがない。
政治家になることイコール清貧な人生を覚悟すること、という図式が確立すれば、あらゆることが劇的に変わる。

「駄目だよな~」「ひでえ話だな~」「どーしよーもねーなー」と苦笑して済まされる時期はとっくに終わっている。

今の日本が目指すべき道は、健全な「老人大国」への道である。日本にはまだまだ、老人が「普通に」人生をまっとうできるだけの環境が残っているはずだ。自然の循環を支える豊かな山林、海岸、水。人々の生真面目さ。
うまく生かしていけば、高齢者が高い技術や豊富な経験を武器に、広範囲で多様な価値観を生み出す、世界に稀なる老人大国が築けるかもしれない。
巨額の金が動く必要はない。人が幸福を感じられる要素は多種多様なのだから。

それを不可能にしている筆頭は、老害政治家である。循環で成り立つ世界の仕組みを知らず、平気で環境を破壊し、数字だけの経済論を盲信し、歳と共に善悪の区別ができなくなる。
この国で幸せに生き、人生をまっとうしたければ、まず、老害政治家を引きずり下ろすことだ。
人々が子供たちの犯罪に目を奪われている隙に、そうしたでたらめな社会をリードすべき政治家たちはもっと大罪を犯しているかもしれない。


三珠町熊野神社の狛犬
■もしかしたら石造りで本体に年号が刻まれたものでは最古かもしれない狛犬
応永12(1405)年2月制作
(山梨県西八代郡三珠町大塚、熊野神社)
(c)http://komainu.net


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