たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2003年7月25日執筆  2003年7月29日掲載

カードマネーストレス

財布を開くと、わけの分からないカードがごそごそ入っている。
クレジットカードは一時期7枚以上あったが、今は3枚程度に絞り込んだ。メイン用のMasterカード、予備のVISAカード、ガソリンスタンド用のNicosカード。これらは「わけの分からない」カードではない。
わけが分からないのは、いろいろな店でくれる「ポイントカード」の類だ。何年もそこに入ったままで、使った記憶がなかったり、なんのカードかさえ分からなくなっているものもある。

この手の「ポイントカード」を統一して扱える「全国共通ポイントカードシステム」(略して「全ポカ」)を普及させられないものだろうか。町のパン屋さんのポイントカードも、大手ビジネスホテルチェーンのポイントカードも、山奥の怪しいラブホのポイントカードも、全部1枚の共通カードに記録されるシステム。グリーンスタンプブルーチップあたりは、もうとっくにやっているだろうと思ってサイトを覗いてみた。カードはあるにはあるが、「貯まったポイントはギフト券に交換できます」というようなもので止まってしまっているようだ。これでは、昔のスタンプシートがそのままカードに置き換わっただけだ。カードから紙(ギフト券)に交換していたのでは、なんのためのカードなのか分からない。

そもそも、「○○と交換する」という発想が古い。僕が考える「全ポカ」システムとはこうだ。
利用した店舗の情報が(例えば)店の端末から「全ポカ」システム管理会社のホストコンピュータに登録されていく。スーパーでも、個人商店でも、大手のホテルチェーンでも共通。どんな店でも、そのカードを出せば、ポイントはその店の識別記号と一緒に記録される。
○年以上利用がない場合は、その店舗情報はホストコンピュータのデータから自動的に削除されていく。そうすることでデータの無意味な肥大化が防げるし、店側も客に足を運ばせる動機を持たせられる。
特定の店のポイントが貯まったら、その瞬間に即、買い物の支払額からポイント分を引ける。そうじゃないと、面倒でしょうがない。まあ、商品でもいいが、必ずその場で解決できるのが原則。「ポイントがたまりましたので、今日はメロンパン1つオマケさせていただきます」はいいが、「次回この引換券をお持ちくだされば……」とか「この葉書を××にお送りいただければ……」は駄目。

このシステムが浸透していけば、巨大なビジネスにつながると思うがどうだろう。
ガソリンスタンド用では、共通カードの類はすでに出現している。エネオスでもシェルでも共石でも、系列に関係なく、日本全国どんな店で使ってもポイントが記録され、翌月の支払額から自動的に引いてくれるというカード。系列別や店舗別に何枚もカードがたまるのは嫌だから、多少割引率が悪くても共通して使えるカードを選ぶという人は多い。

カードといえば、日本ではデビットカードの普及も遅れている。最近ようやく大型家電店などでは当たり前になってきたが、ホテル業界や百貨店、大型スーパーではまだまだ採用していない店のほうが多い。早く普及してほしい。
普及に障壁があるとしたらなんなのだろうか。回線インフラの未成熟? それとも入会金や手数料負担の辛さ? 案外、ライバル会社の不在、かもしれない。

オンラインでの金のやりとりは、ITビジネスに限らず、現代経済の基本中の基本だ。
しかし、日本ではキャッシュレスビジネスが育ちにくい。様々な障壁がある。
WEB上でのクレジットカード決済にしても、まずカード会社と契約しなければシステム導入ができないから、個人商店レベルではなかなかそこまではできない。
アメリカではPAYPALという会社が、「メールアドレスさえ持っていれば誰でもクレジットカード決済ができる」というシステムを開発し、普及させている。個人商店でも、いちいちカード会社と直接契約する必要がない。
しかも、WEB通販に必要なレジカゴツールまで無料で使わせてくれる。

本当かいな、と訝りながら、タヌパックのCD通販ページ(英語版)に導入してみた。
PAYPALのアカウントは数分で開設できた。レジカゴは自動生成のリンクコードをHTMLの中に埋め込むだけ。セキュアサーバーのレジカゴシステムがあっと言う間に構築できる。
あまりにもあっけないので、脱力してしまったほどだ。今までずっと無理だと諦めていたクレジットカードでの通販サイトが、こんなに簡単にできてしまうとは。
日本では、セキュアサーバーでのクレジット決済可能なレジカゴシステムを導入した通販サイトを作ろうとすれば、WEBデザイン会社、広告代理店、レンタルサーバー会社、クレジットカード会社、VERISIGNなどのセキュアサーバーの証明書を発行する会社などなど、いくつもの企業と契約を結ばなければならないのが普通だ。当然、面倒だし、お金もかかるから、「失敗するかもしれない小規模通販」では、とても試してみようという気になれない。

PAYPALは、米ドルだけでなく、カナダドル、ユーロ、ポンド、日本円に対応している。世界を相手にWEBで商売をしようとする人にとっては、これほどありがたいものはないだろう。
今はまだ、日本語のツール類(無料レジカゴなど)がないようだが、近いうちにそれが出てくれば、日本でもあっと言う間に普及するに違いない。
そうなると、日本での通販ビジネスにおいても、アメリカ企業のコントロール下でWEBマネーが飛び交うことになる。
IntelのCPUとMicrosoftのOSの入ったパソコンを立ち上げ、GOOGLEで通販サイトを探す。支払いはPAYPAL……。全部アメリカじゃないか。
技術や根幹システムを握られ、日本はそれを「利用させていただく」しかない。こういうのをIT属国の構図というのではないだろうか。

頑張ろうニッポン。コンビニだって、アメリカが先だったけれど、真似をした日本でのほうが、はるかに上質なサービスが育った。今の日本では、コンビニ業界抜きの消費生活、流通経済は、もはや考えられない。
マネーカードだって、その気になればもっともっときめ細かく、使いやすいシステムが築けるはずだ。

熊野神社の狛犬
■なんだかなぁ……の平成狛犬(多分輸入もの)
山梨県東八代郡境川村小黒坂 熊野神社
平成7年3月建立

(c)http://komainu.net


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