たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2003年10月17日執筆  2003年10月21日掲載

ウォシュレットと露天風呂

日本は先進工業国ということになっていて、技術水準は世界のトップレベルを誇っているはずだが、「日本の技術はコピーばかりだ」などとよく言われる。そうなのだろうか?
日本が生んだオリジナルな発明にはどんなものがあるだろうと調べてみたら、意外なものがたくさんあった。

●乾電池
「ボルタの電池」というのを学校で習うので、ボルタ(イタリア人)が発明したのかと思っていたら、そうではないらしい。
ボルタの電池は、電解液である塩水の中に銅板と亜鉛板の電極を設置したもので、「乾電池」ではなかった。乾電池を実用化したのは屋井先蔵という日本人なのだそうだ。
ところが、屋井には資金がなく、特許出願もしなかったために、製品化はアメリカに先を越されてしまった。日本での最初の市販乾電池はアメリカからの輸入品という無念を味わったらしい。
哀しい話だ。

●八木アンテナ

日本中の家の屋根にはテレビアンテナが立っているが、あの構造のアンテナは「八木アンテナ」と呼ばれる。
構造が単純な割に高い利得が得られる画期的な発明だった。1926(大正15)年、当時、東北帝国大学教授だった八木秀次と助手の宇田新太郎が共同で発明したそうだ。
これも、当初、日本国内では大変な発明であることが理解されず、太平洋戦争勃発後、連合軍の電波兵器に採用されてから、その性能の高さを嫌でも知ることになったという。

●電動アシスト自転車

電動スクーターではなく、「電動アシスト」自転車。あくまでも自転車なのだ。
話題になったGinger(Segway Human Transporter)に比べると地味だけど、価格や実用性を考えるとこちらのほうが庶民的発明かもしれない。

●眼鏡

現在の眼鏡の形を発明したのは日本人だという話がある。それまでの眼鏡はいわゆる「鼻眼鏡」で、耳にかける蔓の部分がなかったというのだ。
日本に眼鏡が入ってきたのは1551年、キリスト教を初めて持ち込んだとされている宣教師フランシスコ・ザビエルが献上品として持参したのが最初らしい。
ところが、日本人は鼻が低いので、鼻だけでは眼鏡が固定できず、耳に紐でかけるように工夫したのが「眼鏡の蔓」の始まりだという。後に、鼻あてパッドなるものも発明されたが、これも日本人の鼻が低かったからなのだとか。
ほんまかいな。
耳で固定するという発想が何百年もなかったというのはちょっと信じがたいけど、どうもそういうことらしい。

●総合商社

「ラーメンから戦車まで」などというキャッチフレーズがよく使われるが、専門分野がなく、儲かるなら何でも(おおっと、失言!)仲介しまっせという「総合」商社は、日本の「発明」だという説がある。
現在、日本で総合商社と呼べる企業は、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠、丸紅、トーメン、ニチメン、日商岩井の8社だそうだ。ふううん、意外と少ないのね。他の1万くらいある商社は全部「専門商社」だという。

……と並べていくときりがないのでこのへんでやめておこう。

僕が世界に誇れる日本の発明品として一推ししたいのは「ウォシュレット」である。
ウォシュレットは開発したTOTOの商品名で、一般名称は多分「シャワー便座」だろう。製造メーカーも増え、最近ではDIY店で2万円くらいでも売っている。安くなったもんだ。

シャワー便座は、一度使ったらやめられない。紙で拭くより水(冷たいからお湯)で洗い流したほうがウンチはよく取れる……。眼鏡の蔓と同じで、なんでこんなあたりまえのことに今まで気づかなかったのだろうと思うのだが、欧米ではまだまだヒットはしていないらしい。なぜなんだろう。
欧米人はウンチ(の拭き残し)に寛容な文化を持っている?(またまた問題発言か)

シャワー便座が欧米でなかなかヒットしないことは、風呂文化の違いにも関係がありそうな気がする。
バスタブの中で身体を洗う文化と、浴槽に汚れた身体で入ってはいけないとする文化の違い。日本では、子供のときから「お風呂に入る前にお尻をよく洗いなさい」と教育される。ましてや、湯舟の中で垢を落とすなんてのは、とんでもない犯罪だと教え込まれる。

一方で、欧米人の多くは、大きな浴槽に見知らぬ者同士が一緒に入る共同浴場というものが信じられない。銭湯にパンツをはいたまま入ってしまう外国人の話はあまりにも有名だ。(もっとも、最近では小学校の修学旅行でも同じ現象が起きているらしいが。)
入浴という行為は、極めて個人的で合理的な行為なのだろう。歯を磨くことと同じ。
歯磨きを楽しむ文化というのはあまりない。歯磨きがレジャー化したり、他人と一緒に歯磨きをしてコミュニケーションをはかるということは考えにくい。

もちろん、「欧米人」とひとくくりにするのは乱暴で、欧米にも温泉をレジャーとして楽しむ習慣があり、フィンランドのサウナみたいなものがあることは承知しているけれど、雪見風呂を楽しむために数百キロ離れた山奥の露天風呂にでかけるとか、観光計画の中で最重視される項目が「温泉」や「露天風呂」というのは、日本独特の文化なのではなかろうか。

中でも面白いのは「露天風呂」だ。
今や、どんな宿泊施設でも「露天風呂」は人を集めるための必須アイテムとなっている。
風呂に浸かりながら景色を楽しむ。自然を感じる。雨が降っていれば濡れながら入ればいいし、桜や紅葉の季節には、湯舟に花びらや落ち葉がひらひらと舞い込んでくることを最高の贅沢と感じる。
これって、欧米人には「わっかるかなぁ。わっかんねーだろーなー」(by 松鶴家千とせ)の世界なのかもしれない。
大豪邸の庭にあるプールサイドで、リクライニングチェアに寝そべりながら冷えたビールを楽しむ、などというのとはまったく違った贅沢だ。

しかし、露天風呂業界(そんなものがあるのか? ……多分、ある)も変わってきた。
混浴があたりまえだった露天風呂から、貸切露天風呂へ。そして今では、「露天風呂付き客室」の時代なのだ。
貸切でもまだ不満。客室から風呂場へ行くのも面倒。好きなときに部屋からすぐ入れる専用露天風呂がなければいやだ~、というわがままな客が増えているのである。

しかし、露天風呂付き客室は高い。一泊二食で一人3万円超はあたりまえ。二人で泊まって、酒を頼んだりしたら、たちまち10万円近く出てしまう。そんな贅沢をできる人たちが、この不況の日本にどれだけいるだろうか。
やっぱり一人1万5000円くらいにおさえてほしいなあ、……などと、だんだん誰に向かって書いているのか分からなくなってきた。

露天風呂付き客室の専門情報サイトでも作ってみようかと思いたち、先日、rotenburo.infoというドメインを取ってしまった。(まだ作っていないので、打ち込んでもつながりません。念のため。)
それにしても、楽しみがそっちの方向に向かっているのは、確実に歳を取った証拠なのかもしれない。うむむ。
凶悪な?ウサギ

日本一獰猛そうなウサギ
(「モンティパイソン」に出てきた、空飛ぶ凶悪ウサギを思い出す)
住吉神社 (新潟県三島郡出雲崎町)


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