たくき よしみつ デジタルストレス王(キング) 鐸木能光

2009年3月10日執筆 3月19日、6月18日、12月8日改稿

日本の風力発電がダーティな発電であるという意味

 風力発電のPRでよく、「発電能力○○kw。これは○○市全世帯が使う電力の○%に相当」といった表現にぶつかる。うっかりすると騙されてしまうが、よく考えてみるとおかしいことに気づく。

 風力発電は人間の意思で発電量をコントロールできるものではない。いつ発電できるか予測がつかない上に、風が吹かなければ発電量はゼロ。これが火力、水力、地熱などの発電方法との決定的な違いだ。
 例えば、日本最大級2500kwの風車はすでに南あわじ市にある。2500kw×15基で37500kwというふれこみだ。
 川内村にそれ以上の規模(26基・65000kw)の風力発電プラントを計画しているCEF社のものだ。この「37500kw」は、一般家庭12000世帯が使う電力量であり、12000世帯は、南あわじ市の全世帯の2/3に相当するという説明がなされる。
 しかし、この風力発電プラントで南あわじ市全世帯の電力消費2/3を「まかなって」いるわけではない。
 まず、風力発電は無風なら発電量ゼロである。2500kwというのは、この風車が設計された最適風速13mのときの出力であり、これが例えば風速8mになると、出力はたちまち1/4以下の600kwになる。
 この計算でいくと、2500kwという最高出力に対しての年間発電量は約28%にまで下がる。これは机上の計算ではなく、実績値だという(CEF社自身が質疑応答などで答えている数値)。
 次に、これは24時間稼働していて発電する量であり、電力消費量が減る夜間8時間を引けば、実効性のある発電量は20%以下だ。電気が余っている(いらない)時間帯にいくら発電しても、そんな電気は意味がないどころか迷惑なのだ。
 となると、12000世帯分の電力というのは、2280世帯分にまで落ちてしまう。
 では、2280世帯ならまかなえるのかといえば、そうではない。なぜなら風力発電は風が吹いていないときは発電量ゼロなのだから、その時間帯をカバーする電力は必ず必要になるからだ。今、風が吹いていないから電力を供給できませんといってテレビが消えたり、ネットが途切れたり、手術中の患者を放り出すわけにはいかない。となると、予測不能に突然訪れる電力供給量ゼロの時間帯をカバーする電源が他に常時稼働していなければならないわけだから、風力発電があってもなくても、最終的には関係なくなってしまう。
 つまり、南あわじ市の風力発電プラントは、年間の出力合計がいくらであっても、「○世帯分の電力」をまかなっていることにならない。今まで通り、他の発電施設が動き続けている。

 風まかせで発電したりしなかったりする、その気まぐれな電力を買う義務を法的に負わされた電力会社としては、仕方なく買うが、その電気はもともと別の手段(火力や原子力、水力)で発電していた電気に「足して」使うことになる。
 しかし、風力発電所が発電しているときはその電気を100%使って、その分、大型火力や原子力をこまめに止めたり出力を落とすということは難しい。風がやんで、風力からの電気がゼロになった瞬間に、止まっていた大型火力がたちどころに発電を開始する、ということは無理なのだ。その結果、他の発電施設の稼働時間や消費しているエネルギーが大きく減るわけではない。
 電力会社が持っている発電施設には使う「優先順位」がある。
 まず、どんなときでもフル稼働で発電させる「ベース電源」群がある。
 原子力はもともと臨界状態になったら出力調整は極力したくないシステム(出力調整棒の抜き差しは危険)なので、普通は一回発電状態になったら、次の定期点検で炉を止めるまではフル稼働で動き続ける。
 次に流水式水力は、貯水式水力のように水を溜めることができないため、これも常時フル稼働させる。地熱発電も、同様に、ほぼ一定の出力を出し続けているので、わざわざ止めることはしない。
 これらが、一旦発電を開始したら24時間動かし続ける「ベース電源」を形成する。
 この上に積み上げるのが最新式高効率火力である。現在最も高効率の火力発電はエネルギー効率が45%近い高効率を誇っている。しかし、これは簡単に止めたり再稼働させたりすることはできず、出力調整幅が狭い。
 出力調整幅を大きく持たせた火力発電ユニットは別にあり、これはエネルギー効率は低くなる。当然、このタイプの火力発電ユニットを使うと、より多くの燃料を使うことになる。
 電力需要が落ちる夜間でも止めることができない原発が発電する余剰電力は、揚水発電所に送られ、水を汲み上げることに消費される。汲み上げた水を電気が足りない時間帯(需要が多い時間帯)に落として水力発電して補うのが揚水発電だが、一度発電した電気で水を持ち上げ、それを落としてもう一度発電するわけだから、エネルギー効率は非常に低い。原発という出力調整ができないシステムを補うために、苦肉の策として使われているものだ。
 火力発電の燃料としては、現在、石炭が最も安い。その次がLNG(液化天然ガス)、石油の生炊きは最もコストが高く付く。
 天然ガスは石炭などに比べれば圧倒的に「きれいに燃えて」くれるので、液化せずにパイプラインで直接持ち込んで燃やせれば、最も理想的な火力発電用燃料となる。
 また、枯渇することが分かっている石油に比べ、天然ガスの埋蔵量ははるかに多いと見られており(地球内部で現在も生成が続いているのではないかという説もあるが、石油同様、天然ガスの正体については未だに不明な部分が多い)、一度インフラを完成させた後は、将来にわたって長期間有望な電力供給システムとなりうるだろう。
 さて、電力会社では、季節や曜日による変動、その日の気温などを鑑み、毎日、どのくらいの電気が消費されるかをリアルタイムで予測し、細かな発電計画を立てている。その調整を受け持つ部署では今、風力発電という頼りにならない発電施設から電気が気まぐれに来たり来なかったりするため、大変苦労している。
 事前に「何月何日の何時から何時までは風力から○○kw来ます」と分かっていれば、その時間をスケジュールに入れて火力などの出力を落とせるが、そうはいかない。まさに風次第なのだから、発電能力がいちばん余っている深夜の時間帯に風力発電から大量の電気を買わなければならないという不条理が日常的に起きる。
 深夜帯は、ただでさえ原発から生じる余剰電力を消費するために揚水発電所などを稼働させている。そこに追い打ちをかけるように気まぐれな風力発電所から電気が送られてきても迷惑なだけだ。
 このように、常に予想使用量を上回る電力を準備していなければならない電力供給システム全体にとって、いつなんどきどれくらいの電力が得られるのかまったく予想が立たない風力発電は、ただのお荷物でしかない。みんなが寝静まっているときに突然予告なく不要な仕事を始め、必要なときにはパタッと寝てしまう迷惑な助っ人。その助っ人を「君は本当に偉いね」と言って特別扱いし、正社員以上の時給を満額で支払っている……そんな馬鹿な会社があるだろうか。
 大型風力発電施設が増えれば、その分、出力調整のできる(効率の低い)火力を余計に稼働させねばならなくなり、燃料費もかさむ。燃料費がかさむということは、化石エネルギー資源を無駄遣いするということである
 それなのに、PRする上で、風力発電からの買電量をすべてカウントし、これだけ発電している、全発電量の○%を風力でまかなっているというのは、詭弁も甚だしい(もっとひどいPR資料だと、最高出力を単純に足しただけの数値=実際にはありえない=を謳って、これだけの発電能力が置き換わった、と、誤解を与える伝え方をしている)。
 実際には、風力とは無関係に他の発電施設が計画発電しているところに、風力発電からの予測不能の電力が加わったり消えたりしているだけだ。つまり、売電100%保証の風力発電プラントを止めたところで誰も困らない(むしろ余計な電気を買わなくていい電力会社は喜ぶ)。「有効出力」という考え方では、発電量ゼロと同じではないか。
 そんなことはないというのであれば、電力会社に押し売り的売電をするのではなく、発電した現地で100%自己消費すべきである。自己消費している電力は、間違いなく「そこで使われている電気」なのだから。
 時間が関係なく、発電できたときだけ動かせばいい機械があったとする。そこに風力発電装置をつないで、発電できたときだけ機械を動かすというのであれば意味がある。なかなか想像しにくい図ではあるが、風力発電プラント用の揚水発電所を作り、揚水ポンプを風力発電で動かし、送電は水力に変換してから需要に合わせて行う、ということであれば、理論的には可能だろう。ただし、発電効率はガクンと下がる。ただでさえ効率の悪い風力発電の電気をさらに減らして水力に変換したところで使い物になるわけがない。
 一度蓄電池に溜めてから、安定出力を得るということも実験されているが、大規模発電に蓄電池などというものをかませたら変換効率が落ち、ますますエネルギーの無駄になることは子供でも分かる。そういうものが有効であるなら、原発用の揚水発電所などというものも存在せず、蓄電池が使われているはずである。使い物にならないから存在しないのであり、風力発電にだけそんな馬鹿げた方法をとろうというのは、もはや「クリーンエネルギー信仰」という狂信のためにまともな理性を失ったとしか言いようがない。

 風力発電が生きる状況というのは、小規模な風車で小規模に発電し、蓄電が低コストでできる環境だろう。あるいは、小規模風力発電の電気を現地で使い切り、足りない分を外から補うという図式なら正しい。
 1年中一定の風が吹く広大な無人地帯があり、多少の発電量の凸凹は国外も含めた周辺の発電施設と密に結んだ「配電ネットによるクッション」で飲み込めるという条件があれば、ある程度風力発電向きの環境と言える。ヨーロッパの風力発電は多少はこれに近い。
 あるいは、僻地で、電力会社が電線を引くのも嫌がるような場所に住む人が、自前の小規模風車と発電機、十分な蓄電設備を持って電力を自給自足するというのなら、それこそ理想的な風力発電生活かもしれない。(この場合は太陽光発電のほうがずっと楽だろう。あるいは併用するか……)
 電力需要のピーク時とボトム時の差は、大きければ大きいほど、柔軟に発電量をコントロールできる施設を増やす必要がある。その点では、貯水型水力は蛇口を開け閉めすればいいだけだから、いちばん柔軟に発電量をコントロールできる。スタートさせたら簡単には止められない原発は融通のきかない劣等生。人為的コントロールが不能な風力は問題外である。
 また、電力需要が大きな大都市ほど、電力需要のピークとボトムの差は大きいから、計画発電ができなければ、石油の無駄遣いも増えてしまう。
 福島県にしても福井県にしても、CEFなどが建設を計画している場所は原発プラントを複数持ち、首都圏や近隣大都市に電力供給をしている発電基地だから、そこに発電時間と発電量の予測がつかない巨大風力発電所が組み込まれると、石油の無駄遣いの規模はますます大きなものとなるだろう。

 風力発電が化石エネルギーの代替になると考えている人たちは、この点をもう一度冷静に見つめてほしいのだ。
 日本で巨大風車を導入するのは、国の命令でその電力を電力会社が買い取らなければいけないという不条理なルールがあるから初めて商売になるのであって、効率よくエネルギーを作り出していることにはならない。風力発電業者は多額の補助金を得るため、何が何でも大出力の大型風車を設置しようとする。「国策」をいいことに、税金を無駄遣いして、本来必要でない、扱いにくい、予測不能な激しい凸凹のあるエネルギーを勝手に作っているのである。
 買わなければいけない電力会社としては、この風力発電という鬼っ子に、せめて企業イメージをクリーンにするための役割を担わせようとする。そこで「ベストミックスの思想」とか「クリーンなエネルギーを開発しています」とPRする。また、グリーン電力証書などという詐欺的商売を発明し、企業に協賛金を求めて、その企業が「クリーンエネルギーを使っていることにする」。
 実際には風力発電から出ている電気だけを分離して遠隔の企業に送ることなど物理的に不可能なので、方便としてそういうことにして、高いお布施を取っているだけである。金を出す企業も、自社のイメージアップのために、方便であることを承知で広告料代わりに割高な金を払う。これはエネルギー産業ではなく、「広告業」だ。

 最初の命題に戻ろう。
 「電力の○%を風力発電でまかなっている」というPRにおける「○%」や「○kw」という数字は、風力発電施設から「買い取った電力量の合計」にすぎない。実際には、風力発電が発電している時間帯であっても、それに合わせてリアルタイムで高効率最新火力発電所を止めたりはできない。
 風力発電からの電気に合わせて火力発電所の出力を落とした状態でも、またいつ風力からの電気がゼロになるか分からないから、火力側は常にスタンバイ状態になっている。燃料を燃やしたまま発電機を切り離したり、効率の悪い低出力運転を強いられる。これはエネルギーのロス、石油の無駄遣い以外のなにものでもない。計画的に火力発電所を運転できれば石油を効率よく使えるのに、風力発電から予測不能な電力が送られてくることで、石油を燃やしているのに発電はしない空運転状態にしたり、燃費の悪いくすぶり運転状態を強制されるのだから。
 10の石油を燃やして10の電力を発生させられる火力発電所を、10の石油を使って5の電力に落とし、減った5の分を風力が補ったところでなんの意味があるのか。これがたとえ10の石油を9や8に減らせたとしたところで、風力発電に費やす石油エネルギーの無駄遣いははるかにそれを上回る。
 本来火力や水力だけで済んでいたところに無理矢理風力発電という余計なエネルギーを割り込ませただけだ。
 メディアは不景気を一方的に悪いことのように報じているが、電力需要量が減るということは限りある資源をなるべく長持ちさせるという面では好ましいことであり、「馬鹿みたいに電気を使わなくても幸せに暮らせる社会」「無駄にものを作り続けなくても楽しめる人生」に転換していくことこそが、「持続可能な社会」実現に最も求められていることなのだ。
 リサイクル幻想もそうだが、風力発電を増やせば未来は明るいなどというのは、行き詰まったビジネスになんとか「余計な」儲け話を作り出せないかと悪あがきしている者たちが唱える詐欺にすぎない。現に、この「余計なビジネス」のために、日本の国土は傷つき、命を縮められている人たちがいるのである。
 風力発電が本当に石油の代替となるのであれば、風力発電所から発生した電力のおかげで火力発電所の燃料消費が減ったというデータがなければならないが、そういうものは見たことがない。(火力発電所の「発電量」が減った、ではなく、「燃料消費量が減った」というデータでなければならないことに注意)
 各発電所で作った電気を「混ぜて」使う以上、どの発電施設から発電している電気が有効かと定義することはできないし、意味もない。資料の上で、風力発電が発電する電力量だけが便宜上、あたかもすべて無駄なく使われているかのように数値発表されているだけのことである。
 こうした矛盾や問題に対して、政府はまったくまともな回答をしていない。
 百害あって一利なしの実体を隠して、あたかも石油の代替になるかのように騙して石油を無駄遣いする。その金は税金から出されている。この金で儲けているのは、天下り先を増やせる官僚や、法律や税金という力強い後押しを得て、やりたい放題やっている風力発電業者だ。
 建てた風車がすでに各地で引き起こしている低周波健康被害や自然破壊は、一体なんのための代償なのか。山間地や過疎地で、ささやかに、精一杯暮らしている人たちの健康と生活基盤を奪い、官僚たちが自分の余生を有り余る金で贅沢に過ごす。そこに先兵隊である風力発電業者や巨大風力発電プラントを仲介する商社が便乗して儲けようとする。末端では、疲弊しきった過疎地の土建業者や商店主などが、自分たちの健康が犠牲になり、子供たちが住めなくなる土地になってしまうこともよく分からず、とにかく一時的にお金が落ちてくることを求めて受け入れる。──これほどダーティな商売があるだろうか。
 地球温暖化を食い物にして、天下り先を増やしている官僚や、それを利用して儲けている企業へ、生活基盤を奪われる住民たちが税金を通じて貢がなければならないとは、あまりにも悲しい。
 うんざりだ。これ以上、詐欺と押し売りの手法で石油を無駄遣いするのはやめていただきたい。
★参考 「欧州における風力発電の現状(東京電力サイト内)」「南あわじCEFウィンドファーム見学会」「風力発電の活用」

風力発電被害に関するミニリンク集

οノーウィンドファーム・ネット こちら

ο南伊豆に今何が起こっているのか? 〜 渥美半島の風車被害から学ぶこと〜 こちら
 TOPページ「風力発電問題 南豆の和」 こちら

ο風車病とは? こちら
 TOPページ 黙殺の音 低周波音 こちら

ο伊豆熱川(天目地区)風力発電連絡協議会のブログ こちら

ο段が峰の自然(段ヶ峰の風力発電を考える朝来市民の会) こちら

οブログ 弁護士の法的独白「風力発電の電気購入について」 こちら

οブログ”黙殺の音” 低周波音 こちら

ο朝日新聞の記事「風車新設各地で反対 周辺住民へ説明不可欠」(編集委員・武田剛) こちら





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