たくき よしみつ デジタルストレス王(キング) 鐸木能光

2009年9月18日執筆(09/11/21改稿)

「風力発電は発電しなくてもいいんです。補助金がいただけますから」

『ストップ!風力発電』(鶴田由紀・著、アットワークス刊)は、今、日本国中の風車建設現場で何が起きているのかを、誇張なく、詳細に報告しています。
かつて北欧を旅行したときに、洋上に浮かぶ風車群を見て「すごいなー、さすが環境先進国だなー」と感心し、帰国後、市民風車に出資しようとしたという著者によるリポートは、マスメディアが語りたがらない現実を、分かりやすく、公平に記述しているところが、他の類書とは違って、感心させられました。
その中の第3章「青山高原(三重県)で起きていること」の中に、非常に興味深い話が紹介されています。
内容をまとめると以下のようになります。

ウィンドパーク美里(中部電力の子会社、株式会社シーテックが建設・運営。2000kw×8基。2006年2月運転開始)は、山頂に自衛隊のレーダー基地があるため、風の当たらない東の中腹に建設されています。このエリアでは北西から西の季節風がいちばん強いのに、わざわざその風が当たらない反対側の斜面に風車を建てて、使い物になるのでしょうか?
青山高原には、美里ウィンドパークに先立ち、2003年3月に運転を開始した「青山高原ウィンドファーム」(750kw×24基。うち4基は津市が所有するもので久居榊原風力発電所といい、1999年5月に運転開始。現在の運営は株式会社青山高原ウィンドファームという、シーテック、津市、伊賀市が出資する第三セクター)というものもあります。
こちらは750kw風車ですから、現在主流の2000kw以上の大型風車に比べると小振り(とはいうものの、羽根の直径は50m)ですが、この24基は建っている間隔が狭く(150m程度~)、互いに干渉しあって効率的な発電ができていないように見えます。
こんな建て方をしていて、まともに発電できるのでしょうか?
──誰もが抱く疑問に対して、事業者は「風力発電は採算が合わない。補助金があるからやる」と答えているというのです。

この話の真偽を確かめるため、取材源者に直接確認をしてみたところ、本当でした。

ウインドパーク笠取(三重県)建設に際して実際にあった話

株式会社シーテックは、美里ウィンドパークに続いて、青山高原(布引山地)の主峰である笠取山の北の尾根に、新たにウィンドパーク笠取(2000kw×40基)を現在建設中です。
このウィンドパーク笠取の環境影響評価準備書段階で、現地で鳥類を中心とした生態系調査に関わってきた日本野鳥の会・会員から「予定地中央にクマタカがいるから建設しないように」という意見書が提出されたのですが、2007年3月、シーテックの本社課長、三重事務所所長、調査を請け負った日本気象協会の担当者の3人が、その意見書を提出した人のもとを訪ねてきて「すでに買収や借地の手続きが終わっていて、補助金の期限が迫っているので、敷地内に巣でもない限り、断固建設したい」ということを訴えたそうです。
その際、課長は

「三重県内の風況のよい山地すべてを風力発電所で埋め尽くして、日本一にしたいと思っています。国立国定公園内でも規制緩和でドンドン建設できるようになる情勢でもありますので」
と豪語したそうです。
風力発電は、発電では採算が合わないのではないかと質したところ、
その通りです。しかし、補助金をいただけますので、建設するのです
という驚くべき答えが返ってきたそうです。さらには、久居榊原風力発電所(青山高原に最初に建設された風力発電所(1999年))の発電実績で計算すると、建設費をまかなうのに14年かかる計算になるのではないかと確認したところ、
「あれは古い小さなタイプ(ブレードの直径50.5m)ですから、ダメです。発電機の寿命は13~14年です。私共のウインドパーク美里のように大きなもの(2000kw級。ブレードの直径80m)ならもっと発電効率はよいのです」

と答えたというのです。
風力発電事業者の感覚がいかに麻痺してしまっているかを如実に物語るエピソードと言えるでしょう。
風力発電が発電手段としては使い物にならないことは、事業者がいちばんよく知っています。しかし「補助金がいただけるから建設する」というのです。

この課長が「もっと発電効率がよい」というウインドパーク美里(2000kw級8基。ガメサ製)は、前述のように、風のあまり当たらない尾根の東斜面に建てていて、とてもまともに発電しているとは思えません。効率云々以前に、2006年の完成直後から故障が頻発し、80%が停止していることが半年続くといった状態が何度も繰り返されています。今年も2月から8基中6基が停止したまま。中には、昨年9月からずっと停止したままのものもあります。
さらには、2009年8月中旬には、強風や落雷などの目立った原因もないまま、突然ブレードが「自然落下」するという事故が起きたようです(公表されていないようですが、目下、メディアの記者が調査中)。
要するに、まったくお話になりません
取材した新聞記者によれば「故障した風車については、どうも修理する気はないのでは?」とのこと。
既設施設がこうした惨憺たる状況にもかかわらず、さらにその隣りにウインドパーク笠取18基の建設をしていて、さらに47基(!)の建設計画を申請しているというのです。
この47基の建設計画(青山高原ウインドファーム増設計画)に際して、事業者が県職員に繰り返し語っているのが、
「建設さえすればいいんです。発電しなくてもよいのです。補助金をいただけますから」
という言葉なのだそうです。
これは、シーテックだけでなく、すべての風力発電事業者の本音でしょう。
税金投入、つまり、補助金を止めれば、日本の風力発電事業は最初から成立しない事業なのです。

補助金以上に問題な企業からのPR目的の援助金

しかし、国からの補助金は建設費の3分の1です。残りの3分の2はどうするのでしょう。
実際の建設費に水増しをして請求しているのではないかということは容易に想像できます。NEDOでは、
「補助金申請の書類をチェックして、過大なものではないか調べることはしていないし、する予定もない」
とのことだそうです。
それにしても、建てた後、ほとんど止まっているような風力発電施設では、いくら国が電力会社に高い価格で買電義務を負わせたところで、売電の売り上げだけで施設を維持できるものなのでしょうか?

この疑問をずっと抱いていたのですが、どうやらその裏には答えが2つありそうです。
まず、ほとんどの巨大風力発電施設は、10電力会社の子会社化されていたり、資本下に置かれています。
風力発電が出した赤字は、親会社が吸収してうまく処理するのでしょう。国は「温暖化対策」「環境保全」の名目で多額の金を原発に援助していますから、電力会社としては、原発の巨額の援助は必要だが風力はいらない、とは言えないのです。
基幹電力会社が親会社になることで、風力発電施設の惨憺たる採算性、効率の悪さは目立たなくなります。表向きには、これだけの発電能力があります、これだけ発電しましたという数字だけをPRし、実際の電力供給現場で風車から無秩序にやってくる電気がどれだけ貢献しているかは考えさせないようにできるからです。
風力発電事業が完全な独立事業であれば、成立しえないのですから、最初からやる企業などありません。
独立系の事業者は、施設を建設した後は電力会社や他の大手企業に売却、子会社化して、その後の赤字リスクから逃れようとします。
例えば、CEFはCEF白馬ウインドファーム株式会社とCEF白滝山ウインドファーム株式会社の2つを、きんでんに株式売却し、きんでんの子会社にしました。
きんでんは、関西を代表する大手電気系ゼネコンであり、関西電力関連の工事などを一手に請けています。CEF南あわじウィンドファームなど、風力発電所の建設も行ってきました。
しかし、最近では、きんでんも、これ以上CEFとつきあって、買電実績が見込めない風力発電所を傘下に置くことのリスクを分かってきたようで、CEFと決別したがっているという話も聞こえてきます。
民主党政権が風力発電事業の実態に気がつき、政策変更を匂わせれば、一気に風力発電業界は様変わりし、独立系事業者から順番に淘汰されていくことでしょう。これ以上、各地に被害を広げないために、一刻も早くそうなってほしいと願っています。

もうひとつは、他企業や個人からの援助です。
グリーン電力証券をはじめ、風力発電事業には他の企業から多額の金が注入され、無理矢理存続させられています。
企業はそのことで「我が社は環境にやさしい企業です。地球温暖化に貢献しています」とPRできると思っているため、「広告費」「PR費」として処理しています。
アサヒビールなども大々的にPRしていますが(⇒こちら)、これを知って、我が家では今後、アサヒビールがこの過ちに気づき、姿勢を変えない限り、アサヒビール製品は極力買わないことにしました。
横浜市では「ハマウィング」という2000kw級風車を建てて、大々的に「地球温暖化防止」を謳っています。
この風車も、単独で採算をとることは無理なため、企業や市民から金を集めて、無理矢理回しているという構図です(⇒こちら)
発電云々よりも、「新エネルギー」の広告塔という役割が大きいもので、実際、夜間には目立つようにライトアップされていたりします。このハマウィングには、キリンビール、日産自動車、新日本石油、ファンケルグループ、日本郵船、三菱地所、セガ……といった、そうそうたる有力企業が出資し、「グリーン電力証書」という名称で企業や個人から援助金を募って「新エネルギー」発電施設などに渡す日本自然エネルギー株式会社もバックアップしています。
これだけの援助を得て動いているハマウィングですが、東京新聞が、横浜市にハマウィングの発電実績データを求めたところ、「発電量が目標に達しておらず、議会で追及されてしまう恐れがあるので公開したくない」と拒否してきたそうです(東京新聞2009年10月8日付「こちら特報部」)。データ公表を拒否する理由が「議会で追及される恐れがあるため」というのですから、これまたお話になりません。市民からも協賛金を募って建てた風車なのですから、どの程度世の中に貢献しているのか、きちんとデータを公開する義務があるのはあたりまえのことでしょうに。
実効性のある発電を行っていない施設に、イメージ先行で企業や個人からの援助金を注ぎ込むことは正しいことでしょうか。

こうした協賛金、援助金が、環境破壊のシステムである風力発電事業を支えているのです。
CEF南あわじウィンドファームを例にとると、関西グリーン電力基金というところが、平成17年度に1200万円の助成金を与えています
ブレードが根元からまっぷたつに裂けて垂れ下がったホテルニューアワジの2000kw風車。この風車にも多額の援助金が注ぎ込まれた関西グリーン電力基金はその2年前、平成15年度(2003年度)には、ホテルニューアワジ(兵庫県三原郡南淡町)の2000kw風車に1900万円を援助し、2004年3月に完成させていますが、この風車は翌2005年11月29日に、ブレードが根元から裂けて垂れ下がるというお粗末な事故を起こして停止しました(神戸新聞記事 写真=左)。幸い怪我人、死者は出ませんでしたが、すぐ下には道路が通っており、巨大なブレードがちぎれて落下した場合、どんな惨事になっていたか分かりません。
最近では、テレビでも「この番組は環境に優しいグリーン電力で製作・放送されています」などという許し難いPRをよく見聞きしますが、こうしたPRに接したときは、「へえ、感心だなあ」と騙されず、「許せない!」と声を上げることが大切です。
日本の環境を取り返しのつかないまでに破壊し続ける風力発電に金を出す企業には、不買などの行動ではっきりとNOを突きつけましょう。

八ツ場ダムのような悲劇を繰り返さないためにも、新政権には、真っ先にこの馬鹿げた事業をやめさせるべく、動いてほしいと願っています。

日本の風力発電事業の実体は、少し調べればすぐに本質が見えてきます。
政治家だけでなく、「新エネルギー幻想」を抱いている多くの国民に訴えます。
私たちのなけなしのお金を、こうした大規模環境破壊詐欺に注ぎ込む政策はやめてください。また、そうした政策を国民が後押しするような悲しいことはやめようではありませんか。

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