たくき よしみつ デジタルストレス王(キング) 鐸木能光

2010年8月19日執筆

「環境負荷の大きい車」とはなにか

今年も自動車税の請求書が届いた。
驚いたことに、去年よりぐんと上がっている。なんで?

調べたところ、2002 年(平成14年)度から、「排出ガス及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車はその性能に応じ税率を軽減し、新車新規登録から一定年数(ガソリンエンジンで13年、ディーゼルエンジンで11年)を経過した自動車の税率を約10%程重くする税率の特例措置(いわゆる「自動車税のグリーン化」)が実施されていることが分かった。
うちのティグラとX90は、平成8年の車なので、今年から13年経過に該当し、本来の自動車税額(ティグラは1500cc未満で34,500円、1600cc未満のX90は39,500円……昨年まで)から一気に、37900円と43400円に値上がりしたのだ。

これにはさすがにぶち切れた。
そもそも「排出ガス及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車」というが、該当するのは、要するに「新車」のことである。
トヨタの高級車クラウン(2500CC)でさえ、「重量税50%減税対象車」なのだ。
この2500ccのクラウンは、公称燃費が12.4kmだが、街中で走ればおそらく10km走らないだろう。
そもそも2500ccのクラウンを買える人はかなりの富裕層であろうし、どれだけ深刻に自動車を必要としているか疑わしい。そういう富裕層が高級車を買うのを、税金で援助しているのだ。
一方で、本当に車が必要な過疎地の人たちは、農作業用の軽トラで通勤していたりする。
初回登録から13年を経過して「環境負荷の高い自動車」であるとされた古い車にのり続けている人もたくさんいる。壊れていないし、燃費も落ちていないし、買い換える必要がさらさらないのだから当然だ。
これがいちばん環境負荷が低い車の乗り方であることは議論を待たない。どんな製造物であれ、製造するときと廃棄するときには環境に大きな負荷をかける。
13年前にどんな車があっただろうかと、ちょっと調べてみる。
例えば、シビック 1.5 VTi という車は、95(H7)年09月~96(H8)年08月に最初のモデルが製造されており、「13年経過」している。このシビック1.5VTiの5速MTモデルの10-15モード燃費は20.0km/リットルだ。当時の新車価格は143万円。いわゆるカローラやサニーなどの「大衆車」に入る。
このシビック1.5VTiにはCVT(ベルトによる無段階変速)モデルもあり、それも公称燃費は17.2km/リットルを誇っていた。
こうした低燃費を売りにしていた13年前の乗用車に今も乗り続けている人は、環境負荷をなるべくかけない使い方をしているとして表彰されてもいいくらいだが、逆に、増税されるのだ。
反吐が出るのは、このふざけた法律を「「グリーン化税制」などと呼んでいること。
長くものを使い続けることを邪魔して、新しいものを買えと圧力をかけるのだから、明らかに環境破壊推進税制ではないか。

なるべく不愉快なものは見ないで、ストレスをためないようにしたいと思っているのだけれど、こういう場面にぶつかるたびに、この国は一体なんなのか、世界を席巻するエコエコ詐欺はどこまでエスカレートするのかと、うんざりする。

石油があるうちはどんどん使って、金持ちはもっともっと金を儲けなさい。私たちはそういう社会を応援します、という政治。だったら正直にそう言えばいい。そういう政治を望む人たちも少なからずいる。
それを、「グリーン」だ、「エコ」だと、大衆を欺く言葉で粉飾するのはやめなさい。

           

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