たくき よしみつ の たくき よしみつ(鐸木能光)のデジカメ・ガバサク談義 ガバサク

ガバサク流短期講座(2) レンズ交換は必要なのか?

写真の質はレンズ性能で決まる

 カメラ選びにおいては撮像素子(現在ではCCD時代がほぼ終わり、ほとんどがCMOS)が重要で、ザックリ言えば面積が大きいほど、画素数は少ないほどよいということは分かりました。
 次に重要なのがレンズの性能です。
 レンズの性能を見る場合、必ずチェックしなければならないのは明るさ焦点距離の2つです。
 ボケ味がきれいだとか歪みが少ないとか細かいことはいろいろありますが、そういうのは実際に使ってみないと分かりません。しかし、レンズの明るさと焦点距離は物理的な数値で表されるので、買う前からはっきり分かります。
 室内などの暗い場所で手ぶれせずに美しい写真を撮るためにはレンズが明るいことが必須です。
 レンズの明るさは「開放F値」で表します。仕様表にF=3.5とかF=2.0などと書いてあるのがそれで、この数値が小さいほど明るいレンズです。
 具体的にはF=2.8がぎりぎりで、それより暗いレンズは屋内などではまともに使えないと考えたほうがいいです。
 背景をぼかすためにはレンズの焦点距離が長いことが必須です。ボケ具合は、見かけの望遠性能(どのくらい大きく見えるか=35mmフィルム換算でのmm値で表します)ではなく、物理的な焦点距離(f=○mm という表記)が関係します。実際には、撮像素子面積が1型以下のカメラで背景をぼかした写真を撮ることはほぼ不可能だと思ってください。

レンズ性能の見方

 レンズの明るさと焦点距離の長さは相反する要素で、焦点距離が長くてかつ明るいレンズというのは大きく(重く)、高価なレンズになってしまいます。
 また、ズームレンズは単焦点レンズに比べると暗くなり、画像の切れ味も劣ります。
 ですから、屋内撮影(特に人物の集合写真や部屋そのものを広角で撮る場合)では、よくある一眼レフとセット販売されている標準ズームレンズ(35~70mm相当/F3.5-5.6程度)で撮るより、サブで持っていた明るいレンズのコンパクト機で撮ったほうがきれいな写真が撮れていた、ということもあるのです。

ミラーレス機の弱点を知る

 一般に、コンパクト機は軽くて小さいけれど頼りない、一眼レフは重くて扱いが大変だけれどかっこいい写真が撮れそうだ……というイメージがあると思います。そこで「一眼レフが少しでも軽くて小さくなるなら、それがいいんじゃないか?」ということで、光学ファインダーをなくしたミラーレス一眼というものができました。
 ボディとレンズを小型化したことによってミラーレス一眼は従来の一眼レフよりも画質が落ちるのかといえば、そうではありません。
 一眼レフと同じ面積の撮像素子を持っていれば、画質的には対等と言えます。ただし、ミラーをなくしたことによってボディやレンズを小型軽量化できた分、犠牲にしている性能がないかどうか、チェックする必要があります。

 まずはオートフォーカス(AF)の性能です。
 最近では「像面位相差AF」といった新技術も出てきて、ミラーレス機やレンズ一体型高級機のAFもかなり改善されていますが、初期型ミラーレス機の多くは、「コントラストAF」といって、撮像素子に写った映像を解析してピントを合わせていました。これはコンパクト機も同じで、明暗差のあまりない被写体ではAFがなかなか合わないことがあります。
 これに対して、ほとんどの一眼レフでは少し前のモデルでも「位相差検出方式」といって、AF専用のセンサーを複数持っていて、「ずれ」を瞬時に検出してピントを合わせるため、速くて正確なAFを実現できます。
 動く被写体を追う場合などは光学ファインダーの視認性のよさも手伝い、一眼レフが有利です。スポーツ写真など、動く被写体を撮ることが多い人は、ミラーレスよりも従来の一眼レフを選んだほうが安心でしょう。

 ミラーレス機のもうひとつの弱点はレンズ資産の乏しさです。ミラーレス機は各メーカーが独自の規格を打ち出してしまったため、撮像素子面積だけを見ても、APS-C、マイクロフォーサーズ、1型などまちまちです。
さらには各メーカーによってレンズマウントも違うため、撮像素子面積×レンズマウント形式の組み合わせ種類は膨大になり、結果として使えるレンズの数がかなり限られてきます。
 カメラを買う前に、レンズはどんなものがいくらで手に入るのかしっかり調べるべきです。

撮像素子の小さいミラーレスは意味がない

 撮像素子の小さなミラーレス機は、背景はぼけないし画質は悪いしで、存在価値がないと私は思っています。レンズ交換することがファッションのような瞞しかたですね。ペンタックスQシリーズなどは1/2.3型というコンパクト機と同じ小さなCMOSを使っていましたが、当然そんなカメラは存在意義がなく、消えていきました。
 ミラーレスを買う場合は、必ず撮像素子がAPS-C以上のものを選び、専用レンズの中に明るい中望遠単焦点レンズがあることを確認してください。

 もうひとつ、ミラーレスを選ぶときに重要なのはファインダーがあるかどうか、ということです。
 ミラーレス機は本来ファインダーに光を届けるためのミラーやペンタプリズムを持っていないので、光学ファインダー(実際の光の像を見るためのファインダー)はありません。その代わり、ファインダーのところに小さな液晶モニター(電子式ファインダー)を埋め込み、電子処理した映像を見せるようにしたものがあります。
 しかし、高精細な電子式ファインダーはかなりコストがかかるので、省略してしまい、モニターは背面の液晶モニターのみにしているものもあります。
 ファインダーを覗いて撮るのと背面の液晶モニターを見ながら撮るのとでは撮影姿勢もまったく違ってきます。
 ファインダーの画像は眼鏡の度数を変えるように視力に合わせて調整が利きますが、背面モニターの映像はそうはいきません。これは近視や老眼の人にとっては大変な問題です。多少値段が高くても、電子式ファインダーのあるミラーレス機を買うべきです。
 ついでにいえば、背面の液晶モニターは必ずバリアングル(角度が変えられる)タイプのものを選びましょう。下から撮る、上から撮るといった自由度が断然違ってきます。

 ↑これはソニーのミラーレス機α7S。フルサイズCMOSに1200万画素「しか」詰め込んでいないという超余裕の設計。ボディだけで20万円してしまいますが、レンズ交換式を買うなら、今ではこのレベルでないと意味がなくなってきた気がします。もちろん、組み合わせるレンズもそれ相当のものが必要です。

本当にレンズ交換が必要なのか

 ミラーレス機にしても一眼レフにしても、レンズを交換しなければ存在価値が半減します。しかし、カメラ本体の他に交換レンズを持ち歩き、撮影シーンによってレンズを交換するのはかなり根性のいることです(もちろん、それが楽しいのだ、という人もいますので、否定しているわけではありません)。
ミラーレス機や一眼レフ機を買ったものの、結局は使うレンズは1つだけで、レンズ交換をしなくなったというユーザーはたくさんいます。自分の撮影スタイルで本当にレンズ交換は必要なのか? と、まずは疑ってみることです。

 では、高級コンパクト機とミラーレスや一眼レフなどレンズ交換式カメラの長所・短所を改めて比較してみましょう。

 コンパクト機は概して撮像素子が小さいので画質の点で不利ですが、撮像素子が小さいとレンズの焦点距離も短くなるため、レンズの小型化が可能です。大きな撮像素子用のレンズを明るくするには相当大きなレンズにならざるをえませんが、コンパクト機なら小さなレンズでも明るさを確保できます。
 例えば、パナソニックのLumix LX100はF= F1.7 - 2.8(ズーム比によって開放F値が変わる場合はこのように表す)という明るいズームレンズを搭載していますが、この明るさのズームレンズをフルサイズ一眼やAPS-Cモデルに求めると、とんでもない値段と大きさになってしまいます。というより、ミラーレス機用のズームレンズなどではそこまで明るいレンズはまずありません。
 実際問題、暗い室内でフラッシュを使わずに撮影する場合、レンズ交換式カメラよりも明るいレンズを持つレンズ一体型コンパクト機のほうが美しい写真が撮れたりします。
 パーティや屋内イベントなどで人物(特に集合写真)を撮る、あるいは屋外で遠景中心に風景を撮るといった使い方が多い人には、明るいレンズを持つ高級コンパクト機をお勧めします。普通の使い方なら画質に不満が出ることはあまりないはずです。
 コンパクト機でどうしても撮れないのは、背景をぼかした雰囲気のあるアート系の写真などです。そういう写真を気合いを入れて撮るときは一眼レフまたは撮像素子の大きなミラーレス機。それ以外はコンパクト機という使い分けがいちばん理にかなっていると思います。
 また、この両方の長所を兼ね備え、弱点を極力抑えたモデルとして「ネオ一眼」などと呼ばれるレンズ一体型で大きなレンズとボディの高倍率ズームカメラにもいいものがいくつかあります。この場合、センサーは1型以上がどうしても必要です。
 パナソニックのFZ1000、FZNH、ソニーのRX10シリーズなどがそれです。(⇒次ページに詳細解説あり)

必ず持っておきたい明るい単焦点レンズ

一眼レフやミラーレスでなければ撮れない写真というのは動きの速いものを追うスポーツ写真や、背景をぼかしたアート系写真などです。それも、セット販売されている 35-70mm/F3.5-5.6 のようなズームレンズではダメです。どんな写真を撮るかによって選ぶレンズは違ってきますが、例えば、ムードのある背景をぼかしたポートレートを撮るなら、実焦点距離が50mm前後、APS-Cであれば画角は約1.5倍になるので従来の35mmフィルム換算で75~80mm前後に相当する明るい単焦点レンズはぜひ1本持っておきたいところです。
 このタイプのレンズはポートレート撮影に適していますが、比較的安価に手に入るレンズでもあります。
 これを持たないくらいなら最初からレンズ交換式カメラなど買う必要はない、と言いきってもいいくらい必須のレンズです。

 私はSONYのα6000というミラーレス機にSONYのSEL50F18(50mm/F1.8)という単焦点レンズをほぼつけっぱなしにして使っています。特に屋内で人物や静物(商品)を撮る場合、背景が適度にぼけてくれるのでとても重宝します。

 最近では三脚にのせて、仕事部屋で音楽演奏の動画を撮るときにも使っています。 ↓

『雨が降る』 (from the musical '黄金バット' 東京キッドブラザース 1977) from TANUPACK on Vimeo.


↑ミラーレス機 SONY NEX-5R+単焦点レンズ SEL50F18(50mm/F1.8)で撮った動画

きたない仕事部屋でザクッと撮っていますが、背景がぼけてくれているのでそこそこ見られる映像になっていると思います。これを撮像素子の小さい、焦点距離の短いレンズのカメラで撮ると(ムービー専用機も含めて)、背景がくっきり写り込んでしまって、クリアだけれど雰囲気のない映像になります。


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