「自己責任論」だけで終わることの危険性

イラクで人質としてとらえられた5人は無事解放されました。以下は最初の3人が拘束され、犯人グループから「3日以内に自衛隊を撤退させる決定がなされなければ殺す」という表明が報道された直後に掲示したものです。その後、さらに2人拘束、最初の3人が解放、後からの2人も解放……と続きましたが、「記録」としてこのページはそのまま残しておきます。ひとつには、この事件を通して我々日本人が学ぶべきこと、反省するべきことがうやむやにごまかされたまま、本質論ではない部分のみが強調されているように思うからです。
「警報が出ているのに危険な冬山に入り勝手に遭難したのと同じ」「そんなことのために国が危機に陥り、税金が使われるのは許せない」などなど、いわゆる「自己責任論」ばかりが目立ちました。そんなレベルで話を終わらせていいのでしょうか?
(2004年4月18日 記)

提言 04/04/09 メディア合同でアラビア語メッセージを!

誘拐事件のとき、報道管制が敷かれることがあります。人質の安全を最優先にして、事件の報道を控えるというものです。
今回、イラクで人質になった3人を救うために、メディアはその逆に、合同でイスラム圏の人たちに向けて、情報を提供してほしい。テレビを始め、あらゆるメディアはトップで、情報を流してほしい。
内容は、3人のこれまでの活動歴を、そのまま伝えるだけのメッセージで十分です。
万が一、拉致したグループのメンバーたちが、彼ら3人のことを知らないまま事を進めたらと思うと、無念でなりません。思考停止した日本政府に訴えているのは時間がもったいない。

また、日本国内の中で間違った情報操作がこれ以上進まないよう、私たちは誘拐された3人のことを知る努力から始めましょう。
以下は簡単なリンク集です。
■高遠菜穂子さん
οご本人が主催するサイト: http://www.clubwee.com/
ο一緒に活動をしていたYATCHことPEACE ONの相澤恭行氏「イラクからの風」
ο高遠さんが政府に送った「イラクからの手紙」: ここここここ

■今井紀明さん
ο寄稿していた BNNという北海道のニュースサイト
ο活動を紹介した記事
οここや、 ここに実際に書いた記事が。
οJANJANというニュースサイトに書いた記事は、これこれなど。
ο他にも、ここなど
(この、月刊『自然と人間』2004年3月号に掲載された『黄色いハンカチが舞う「銃後」の町で』という文章だけでも読んでみてください。)
(2004年4月9日深夜)
(2004年4月10日正午、追記)
NGOの動きなどに、少し希望を抱いています。みんな考えたことは同じ。こうした救出方法の方向性さえ見いだせない日本政府には、これ以上何を期待しても無理だろうし、本当に時間がもったいない。
メディアはこんなときこそ柔軟に動いてください。
οアルジャジーラ等に働きかけをしているNGOの動向→ここ
οアルジャジーラの報道→ここ

(2004年4月10日14時、追記)
個人レベルでもみんないろいろやろうとしています。
ο→ここなどを読むと、何かできないかというひとりひとりの思いが伝わってきます。
くれぐれも言いたいのは、今はこうした論調や行動を「評論」しているときではないということ。各人が何をできるか、何をすれば少しでも効果がありえるのかを考えるときだと思います。

οworldpeacenow.jpが発した緊急メッセージは→ここ
ο自衛隊派遣についてのそもそもの疑問点は、→ここなどによくまとめられています。

(2004年4月11日正午、追記)
とりあえず安堵。
政府は何もしないどころか、とんちんかんなことをしていただけですね。個人やNGOの、迅速にして的確な行動が3人の命を救ったことは間違いありません。
アルジャジーラのサイトの記事も、刻々と更新されていました。

ο犯人の、人質解放決定声明文は→ここ
ο人質解放を伝えるアルジャジーラの報道は→ここ

(2004年4月13日正午、追記)
長引いています。先週金曜日に書いた文章が、今日、AICに掲載されました。
あれを書いていた時点では、どういう結末になるにせよ、こんなに長引くとは思っていませんでした。
心配していたことのひとつは、政府が「動かない」より「余計なことをする」ことです。政府がやっていることは、誘拐犯たちをただ刺激しているだけのように思えます。「アメリカに協力を要請」というのは、犯人たちに武力で対抗するぞという表明に等しいでしょう。そもそもこの誘拐は、アメリカ軍がファルージャで常軌を逸した皆殺し作戦を展開していることが原因なのですから。
現地に事件を解決するために向かったという逢沢外務副大臣にしても、パリッとしたスーツを着て、カメラの前に現れるたびにごていねいにネクタイまで替えて、感覚がズレているとしか言えません。案の定、偽物かもしれないと言われる2回目の声明文には、「逢沢はファルージャの地に立て」という内容が含まれていたそうですが、これなどは明らかに逢沢副大臣派遣が裏目に出ていることの証拠でしょう。
しかもタイミングの悪いことに、小泉首相は、チェイニーと笑顔のツーショット。
一旦は解放するつもりだったのが、日本政府のあまりに傲慢で無神経な対応に怒りが再燃したのではないでしょうか。
最も許し難いのは、安倍幹事長がおっちょこちょいにも「日本政府が自衛隊を撤退させないという強い意思表示をしたからこそ3人は解放された」などと過去形で演説したこと。この映像は日本のメディアで何度も流れましたが、3人が戻ってきていない時点でこのような発言をすることは、解放されかけていた3人に再びナイフを突きつけるのに等しい愚行です。今まさに人質を解放しようとしている犯人に向かって「ざまあみろ」と言う人間がどこにいますか。
せっかくうまく動いていたNGOや個人の働きに、日本政府は水を差すどころか妨害をしているとしか思えない。
せめて、これ以上余計なことをするな、と言いたい。


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