しっかりせよと抱き起こし

日記 2005/05/29-5

いない!
日没寸前に小国沢神社に到着。長い石段の上を見上げると……いない!
下から見上げると、おお、来たかという感じで見下ろしていたのに。いない!
ああ、やっぱり。不安を胸に石段を登る。
落ちていた台座
石段の下の方に、狛犬の台座だけ落ちていた。
ああ、これじゃあひとたまりもない。この高さを転げ落ちたとしたら、今頃狛犬たちはもう粉々になって廃棄処分されているのかもしれない。ますます不安を膨らませて石段を登った。
倒れていた阿
いた。
阿は横倒しに倒れていた。
吽はかろうじて立っていたが、前のめりになって、寂しそうに地面を見つめていた。↓

しっかりせよと抱き起こし……
まず、吽像を「しっかりせよと抱き起こし」の図。
なんだか悔しそうな、はにかんだような顔で起こされていた。
顔は無事
土を払ってやると、ようやく少し顔に生気が戻ったようだ。吽像の顔は特にすばらしい出来だっただけに、この顔が無傷だったことは本当によかった。
台座も見事に天地逆にひっくり返っている。台石のひとつは石段下にまで転がり落ちていたが、狛犬は土の上にうまく落ちてくれたらしい。
阿像も抱き起こす
前脚の一部が損傷
より悲惨なほうの阿像を抱き起こす。
阿は前脚が欠けてしまったと思ったが、地震前の写真と照合した結果、これは前からだと判明。顔も含め、阿吽ともに無事だったわけで、本当によかった。
倒れたままではあまりなので、こういう状態にしておいた。
土台改修中の社殿
社殿は土台の改修工事が始まっているが、狛犬は完全に無視されていて、誰も起こそうともしない。小さな狛犬だから、ひとりでも十分起こしてあげられるのに。
台座が完全に崩壊しているが、ちゃんと元通りにしてもらえるだろう。
今度は地震があっても落ちないよう、うまく配置したほうがいいかもしれない。
吽は、倒れた灯籠の残骸のすぐ横で斜めになっていたので、少し離して土の上に起こしておいた。倒れて石の角にぶつかると顔が傷つく恐れがあったからだ。なんだか両方の狛犬が同じ方向を向いてうつむいているようで、変な図になってしまったが、修復工事が済むまでは安全第一。
そろそろ帰ろうとしていたとき、社殿の裏から突然、スコップを持った中年男性が現れた。
「こんにちは。狛犬、落ちたままにされてますね」
「ああ、そうだね」
……そのまま通り過ぎようとしたおじさん、なぜか急に手に持っていたビニール袋を指しだし「これ、いるか?」と言う。
中には筍が2本入っていた。裏の竹林で、今掘ってきたばかりらしい。
せっかく掘ったものをいただくわけにはいかないと固辞したのだが、「いいからいいから。どうせ腐らせちまうだけなんだから持ってって。米のとぎ汁で茹でるとあくが抜けるから……」
え? と、呆然としている中、おじさんはさっさと立ち去っていった。

帰りの関越道で、かみさんと、ついさっきの不思議な出来事について話した。
あのおじさん、なんだったんだろう、と。
もしかして、狛犬がお礼のつもりで何か霊力を働かせたのではないか。今頃あのおじさんは家に帰って、奥さんから「あんた、筍は?」「え? あれ? 変だな。確かに2本掘ったのに、どこへ置いてきちまったんだろう」なんてやっているんじゃないだろうか。
あるいは狛犬の化身だったとか……。
「おじさんの後ろ姿を撮っておけばよかったね。写っていなかったら狛犬の霊だよ」
謎は謎のままのほうが面白い。
それにしても、たった1日越後を回っているだけで、3人から葱、アケビの蔓、筍と、おみやげをどっさりもらってしまった。申し訳ないような気持ち。


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