現代日本人の死に方クイズ 答え

   

1 一般に、患者1人あたりに対する看護職員の数が多い病院ほど、長く入院させてもらえる。

A:正しい B:逆である C:相関関係はない

Bが正解。
病院の一般病棟には「看護ランク」が決められていて、そのランクによって「平均在院日数」が定められています。
患者対看護職員の数が7対1の病棟だと平均在院日数は19日以内、10対1の病棟では21日以内、13対1だと24日以内、15対1だと60日以内。つまり、患者1人あたりの看護職員数が多い「手厚く面倒を見てくれる」病棟ほど、いられる日数は短いのです。
入院患者を受け入れると、病院は投薬や検査などの治療にかかる費用・報酬の他に「入院基本料」というものを請求できます。
7対1病棟の場合、入院基本料は1591点(1万5910円)/日で、入院14日目まではこれに450点(4500円)加算されて2万410円。同様に15~30日目までは1920円加算されて1万7830円、31~89日目までは加算ゼロで1万5910円です。病院としては入院基本料が下がる前に退院させられる人は退院させて、新たな患者を受け入れようとします。
これが90日を超えると、医療業界では通称「まるめ」といわれる「包括支払制度」に移行し、点滴をしようが投薬しようが全部ひとまとめでいくら、という計算にされてしまうため、ほとんどの病院では90日を超える入院はさせてくれません。
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2 かかりつけ医が訪問診療をしてくれなくても、医師が書く指示書があれば看護師が訪問看護してくれる可能性がある。

A:正しい B:看護師単独で患者宅への訪問はできない

Aが正解。
訪問診療をしてくれる医師は非常に少ないですが、訪問看護ステーション(事業所)はほとんどの自治体に複数あります。かかりつけ医が「訪問看護指示書」を書いてくれれば、医師本人が訪問できなくても、派遣される看護師などによって適切な処置をしてもらえる可能性があります。
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3 男性の場合、生まれてから60歳までに死ぬ確率より、60歳になれた人が70歳を迎えられずに死ぬ(60代で死ぬ)確率のほうが高い。

A:正しい B:逆である C:ほぼ同じである

Aが正解。
日本人男性の平均寿命(0歳時の平均余命)は80・98歳(厚労省・平成28年簡易生命表)です。
簡易生命表には平均寿命の他に「死亡率」(1年間でその年齢の人が死ぬ確率)と「生存数」(10万人の内、その年齢まで生き残れる数=生存率)が載っています。
60歳の(0歳10万人に対しての)「生存数」は9万2826人ですから、60歳まで生きられる人は92.8%=7.2%が死ぬ、といえます。
同様に70歳の生存数は8万3344人で生存率89.8%。60歳の(0歳10万人に対しての)生存数9万2826人⇒100 とすると、70歳の生存数8万3344人は89.79なので、「60になれた人の約1割は70になる前に死んでしまう」という計算になります。従って、「男性の場合、生まれてから60歳までに死ぬ確率より、60歳になれた人が70歳を迎えられずに死ぬ(60代で死ぬ)確率のほうが高い」は正しい、ということになります。

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4 アルツハイマー型認知症の薬として有名な「アリセプト」は、日本ではレビー小体型認知症に対しても保険適用が認められている。しかし、アリセプトのジェネリック薬品はアルツハイマー型認知症には認められているが、レビー小体型認知症には適用が認められていない。

A:その通り B:ジェネリックも認められている C:どちらもレビー小体型認知症には認められていない

Aが正解。
エーザイのアリセプト(一般名ドネペジル)は5㎎錠1錠の薬価が300・6円という高価な薬で、ピーク時には日本国内だけで売り上げ1000億円を超えるエーザイの稼ぎ頭でしたが、2011年に特許期間が切れて、その後、ジェネリック薬が次々に出てきました。ジェネリック薬の薬価は5㎎錠で125・7円~158・2円と元祖アリセプトのおよそ半額です。結果、アリセプトの売り上げはどんどん落ちました。
その後、アリセプトは2014年9月にレビー小体型認知症への処方も認められました。日本以外では認められておらず、世界初の承認でした。
しかし、後発のジェネリック薬(商品名「ドネペジル○○」など)は、2017年現在、レビー小体型認知症への処方が保険では認められていません。これは医薬品の再審査期間、特許期間に関する保険制度上の認可の問題です。
患者やその家族にはなんとも腑に落ちない話ですが、もっと大きな問題は、アリセプトの標準処方による指定用量です。エーザイが提示している用法・用量ではアルツハイマー型よりも多い用量(10㎎)が標準で、5㎎以下では処方しないようになっていますが、これに対しては多くの医師や認知症患者を抱える家族から疑義が呈されています。

ちなみに、日本では認知症の「進行を遅らせる」ための薬として、アリセプトの他に、レミニール(一般名・ガランタミン)、イクセロン、リバスタッチ(同・リバスチグミン)、メマリー(同・メマンチン)が認可されています(2017年現在。いずれも商品名)。
このうちレミニール、イクセロン、リバスタッチはアリセプトと同種で神経細胞内の神経伝達物質であるアセチルコリンを増やす薬ですが、メマリーは別系統(過剰なグルタミン酸の放出を抑えることで脳神経細胞死を防ぐのが目的)なので、アリセプトなどと併用も可能とされています。

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5 一般に、有料老人ホームのほうがサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)よりも医療面、介護面できめ細かなサービスを提供していて、利用料金も高い。

A:正しい B:逆である C:両者を区別すること自体あまり意味がない

Cが正解。
有料老人ホームは民間企業が運営する高齢者向け施設の総称、サ高住は「老人が住むことを前提とした賃貸住宅」というのが一般的な定義ですが、実際には区別はどんどん曖昧になってきており、有料老人ホームだからどう、サ高住だからどうということは一概にはいえません。
法令上、有料老人ホームは届出制(義務)で、各自治体は有料老人ホームの設置運営の指導指針(ガイドライン)を策定し、その基準に基づき事業者の指導・監督を行うことになっていますが、法的拘束力はなく、届け出自体も、許可や認可ではなく、単なる「届け出制度」です。サ高住はさらに法的な規制は緩く、任意の情報登録制度にすぎません。登録には国が定める一定の基準を満たす必要がありますが、その基準とはほとんどが建物に関するもので、つけなければならないサービスは状況把握と生活相談のみです。
入居者も、特養に入りたくても入れない要介護者が緊急避難的に入るケースから、ほぼ自立できている老夫婦が食事や社交などを目的に入居するような優雅なケースまであります。
政治家や有名人などセレブ御用達病院として有名な聖路加国際病院は、全床個室で、差額ベッド代が3万2400円~10万8000円/日ですが、提携しているサ高住である聖路加レジデンスは、65歳から79歳まで入居した場合、2億200万円~5億5200万円(税抜き)という金額が提示されています。
かと思うと、生活保護受給者の住居代わりになっているようなサ高住もあり、まさにピンからキリまであるのです。
したがって、有料老人ホームにせよサ高住にせよ、個々の入居規定や提供するサービスを確認するだけでなく、実際に見学してみないと実態は分かりません。
さらには、小規模デイサービス業者(地域密着型通所介護施設)が介護保険上は認められていない宿泊サービスを自主事業として行い、事実上の入所サービスを提供している業態(通称「お泊まりデイ」)といったものもあります。こうした小規模施設の内容もピンキリで、中には億単位の料金がかかる施設よりも入所者にとってははるかに幸福度が高いのではないかと思えるような優良なお泊まりデイもあります。
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6 銃の所持が簡単に認められる米国では、日本よりも自殺率がはるかに高く、自殺手段の半数以上は銃によるものである。

A:正しい B:間違い

Bが正解。
アメリカでは自殺の半数以上が銃による自殺ですが、銃が簡単に入手できるアメリカの自殺率は10万人あたり13・4人で、同19・5人の日本よりずっと自殺の少ない国です。
日本は世界有数の自殺大国で、自殺死亡率は世界ワースト6位。女性はワースト3位です(厚労省「平成29年版自殺対策白書」)。
ちなみに、銃が持てない日本では、自殺の手段は首つりが圧倒的で全体の6割を超えています。

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7 アメリカでは「尊厳死法」により、医師による積極的安楽死(患者の要望があれば医師が薬物を処方して自殺を幇助する)が法的に認められている。

A:正しい B:間違い C:州による

Cが正解。
「積極的安楽死」というのは、安楽死を望む人に薬物を投与して確実に楽に死なせる行為──医師による自殺幇助のことです。
アメリカでは医師による自殺幇助のことが一般に「尊厳死(death with dignity)」と呼ばれていて、1994年にオレゴン州で尊厳死法 (Death with Dignity Act)が成立し、医師による自殺幇助が法的に認められました。その後、2009年にはワシントン州とモンタナ州で、2013年にバーモント州、2014年にニューメキシコ州と続き、2015年にはカリフォルニア州でも成立しました。そのとき法案に署名したブラウン州知事はカトリック教徒であり、神学校にも通っていたため、大きな反響を呼びました。
アメリカ以外では、スイス(1942年)、オランダ(2001年)、ベルギー(2002年)、ルクセンブルク(2008年)、カナダ(2016年)などが安楽死を認める法律を制定しています。
日本ではこうした「積極的安楽死」は一切認められていません。

上の7つのトピックは、『医者には絶対書けない幸せな死に方』(たくき よしみつ・著、講談社プラスα新書 2018年1月刊)から拾ったものです。
本書には現代日本人の「死に方」について、医師でも宗教者でもない、一作家の目から見た合理的な論考が様々な視点から書かれています。

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