たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2006年4月28執筆  2006年5月2日掲載

琴欧州の歌うボサノバ

2006/04/28 執筆 白鵬が大関になり、横綱・大関陣に外国人力士が3人入った。大相撲史上初のことらしい。
いつも感心するのは、モンゴル出身のお相撲さんたちが話す日本語。日本人力士よりずっと流暢に話す。顔も変わらないし、やっぱり同じ人種なのだろうなあ。
高見山も曙も武蔵丸も、あんなにうまい日本語は話さなかった(今も)。
同じアジア系外国人でも、アグネス・チャンや欧陽菲菲らを思い浮かべると(例がちょっと古いかしら)、日本滞在時間が長ければ日本語がうまくなるというわけではなさそうだ。モンゴル人力士たちがいかに特別か分かる。(ついでにいえば、アフリカ人陸上選手も日本語がうまくなるのが早い)

で、琴欧州である。
欧米系外国人としては飛び抜けて自然な日本語を話す。ブルガリア語というのは他の欧米の言語より日本語と音声的に近いのかしら。
その琴欧州、最近テレビCMにも登場しているが、びっくりしたのが明治ブルガリアヨーグルトのCM。例の ♪明治ブルガリアヨーグルトっ♪ というサウンドロゴを歌うのだが、滅茶苦茶音程が正確。しかも癖がなく、軽くて自然な歌い方なのである。
あのサウンドロゴ(ソファミドレミファラソーラソドッ)、きっちり歌うのは結構難しいはずなのだ。

ブルガリアといえば、芸能山城組が30年以上やっているブルガリア民族合唱を思い出す。ビブラートを嫌い、地声でストレートな歌い方をする。
イタリアのオペラのような歌い方と対極にある歌唱法とでもいうのだろうか。
ビブラート使いまくり、こぶしきかせまくりの演歌歌手などとも対極にある。
琴欧州にも、そうしたブルガリア音楽の血が流れているのかもしれない。
ほんの数秒のジングルを聴いて、そこまで考えてしまった。

そこで、さらに妄想を筍のように育ててみる。
琴欧州がオリジナルのボサノバ音楽を歌うCDを作ってみたい。
歌詞は英語か日本語。伴奏はボサノバ風の生ギターを中心にあっさり味で。
絶対に面白いと思うなあ。

ボサノバの生みの親といわれるアントニオ・カルロス・ジョビンが一躍世界に名をとどろかせたのは、名曲『イパネマの娘』の大ヒットがきっかけだった。
アストラット・ジルベルトが歌ったものがいちばん売れたと思うが、あれは当初、夫のジョアン・ジルベルトが歌うはずだったらしい。
ジョアンがレコーディングしているスタジオにアストラットがくっついてきていて、ディレクターに、自分にも歌わせてほしいと食い下がったとか。
1曲歌わせておとなしくさせようというつもりでマイクの前に立たせたら、素人臭いながらも素直な歌い方が曲調にピッタリはまり、結局、ジョアンが歌ったバージョンではなく、アストラットが歌ったバージョンをシングルカット。それがヒットしてしまった……というような話を、CDのライナーノートか何かで読んだことがある。

琴欧州がボサノバ(風の曲)を歌うと、きっとそれに近い意外性、素直な感動が生まれるのではなかろうか。
あ~、こういうとき、自分の無名さが無念だわ。
今後、琴欧州がCDを出すことはあるだろう。もしかしたら、もう話が進んでいるかもしれない。でも、きっとありがちな、しょーもない企画モノだったりするんだよね。
僕が曲を提供してプロデュースしたら、絶対にいい「音楽」が生まれるのになあ。
残念。無念。妄想竹。


●今年の滝桜はどうも色が悪い
(2006年4月28日 福島県三春町にて)


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