FOXテレビはブッシュ政権の広報係的存在でもあるらしいので好きではないのだが、娯楽を提供することにかけては実に長けている。
最近『Sexiest Commercials』という特番を見た。スカパーで放映されていたのだが、邦題は『一挙大公開! 禁断のセクシーCM』というもの。
セックスをネタにしたTVCMを世界中から集めて鑑賞するという趣向なのだが、こういうのは文句なく面白い。
見ているうちに、ノミネート?されているCM作品の放映国が、サッカー強国と重なっていることに気がついた。
では、今回のサッカーワールドカップ大会の出場国別に作品を紹介しよう。
●B組1位通過 イングランド(セクシーCMワールド杯では英国としてノミネート)
クローネンブルグビールのCMは、思いっきりセクシーにビールを飲んでみせる。
そんなのは序の口で、「パーティ編」では、男がパーティで美女を口説いて誘い出しに成功。女は男と二人だけになったところで、ブラウスの前をゆっくりはだける。すると中から逞しい胸板が現れる……というオチ。
まあ、こんなのは大したことはない。
●B組2位通過 スウェーデン
閉店する店から出てきたグラマラスな女性。身体を屈めてシャッターを閉めるが、閉めたところで中で電話が鳴り、またシャッターを開けて店に戻る。電話が切れたのでまた外に出てシャッターを閉める。するとまた店内で電話が……。
カメラが引くと、その店の前にじいさんが二人座って、携帯電話で悪戯して、女性が屈むポーズを鑑賞していた……というオチ。
(携帯電話会社のCM)
街中で、互いに運転するクルマですれ違う中年夫婦。妻は助手席に若い男を乗せており、リクライニングシートを倒して男を外から見えなくさせる。すれ違いざま、夫にクリーニング店から取ってきたばかりの衣類を見せて「これを取ってきたのよ」とアピール。
夫は笑顔で「おお、そうか」と、すれ違う。
実は、夫の助手席にも、同じようにシートを倒して隠れている若い「男」がいた、というオチ。
(ヒュンダイ自動車のCM)
ヒュンダイは、本国韓国でもこういうCMを流せるのかしら。
スウェーデンに限らず、北欧諸国がセックスにオープンなのは有名。ついでにいくつか見てみると、
画面の中央奥には「ヌードエアロビクス世界大会」の垂れ幕。その前では女性コンビが裸でさかんにエアロビをやっているが、両端に位置していて画面が切れてしまい、手足の一部しか見えない。
そこでナレーション。
「ワイドテレビなら……」
(ワイドテレビのCM。売るのではなく「レンタル」しているというのがお国柄か。ノルウェー)
店で小包を受け取る初老の男。店員は「奥様宛の小荷物です」とカウンターの上に置く。すると突然、ブイ~ンとモーター音がして小包が小刻みに揺れ始める。
オチは、太ったおばさんが台所で楽しそうに電動攪拌機で料理している、というもの。
「あなたのお望みのものを、いつでもすぐにお届けします」
(郵政公社?のCM、フィンランド)
「サウナにビールはつきもの」という台詞で始まる、サウナで素っ裸の女性がリラックスしているCMにはボカシが入っていた。残念。本国ではボカシなしなのかしら?
(オルヴィ・ビール、フィンランド)
●C組1位通過 アルゼンチン
リカちゃん人形みたいな人形の服を脱がせて遊んでいる男の子。それを見て心配した父親が、GIジョーのような兵隊の人形を買い与えるが、男の子はやっぱりリカちゃん?人形と一緒にベッドで寝る。
その男の子が青年に成長して、美女に囲まれてお楽しみのシーンと、マッチョなゲイに囲まれてお楽しみのシーンが順番に映し出され、そこでナレーション。
「どちらでもお好み次第。でもこれだけは忘れずに。トゥリペン・コンドーム!」
(コンドームのCM)
●F組1位通過 ブラジル
南米の王者、いや、世界の王者ブラジル。
画面に裸体の様々なパーツを大写し。「セクシーマガジン」のCM。もう、そのまんまやんけ~、と突っ込むしかない天真爛漫さ。
かと思うと、
スカートをはいた中年男性が地下鉄の通風口の上を通ると下からの突風でスカートがまくれる。それが快感となり、しばしその場で身もだえるというマリリン・モンロー映画のパロディ。
なんのCMかと思えば、「第22回 ゲイ&レズビアン映画祭 今日からあなたの人生が変わる!」……だそうで。
そう「第22回」なのである。過去、21回もやっているのである、この映画祭。伝統が違いますね。
娘が家にボーイフレンドを連れてきた。父親が娘のボーイフレンドに問い質す。
「娘とはどういう関係なんだね?」
すると男はあっけらかんとこう答える。
「セックスする関係です。でもご心配なく。コンドームをちゃんと用意していますから。しかも、1つ2つでは足りなくなるので、いつもいっぱい用意しています」
そこでナレーション。
「フォーリャ紙の記者はみんな正直者です」
……え? これ、
新聞社のCMなのね。
そういえば、今回のワールドカップサッカーでも、序盤戦でのロナウドのふがいなさを、
「ホテルに戻るためタクシーに乗ると、ロナウドが妊娠しているというのは本当なのか、と運転手が真剣に尋ねてきた」と、フォーリャ紙の記者が自らのブログで書いている。確かに正直なのだ。
ついでに、中南米編でもう1本。
日産パスファインダー(日本では「テラノ」名の四輪駆動車)のCM。
ズラリと駐車したいろいろなクルマが揺れていて、みなさんカーセックスに夢中。その中で1台だけ揺れていないクルマがある。「しっかりしたサスペンション。ニッサン・パスファインダー」。
これはプエルトリコで流れているCMだが、中南米は総じて開放的。
さて、ヨーロッパに目を向けると、
●D組1位通過 ポルトガル
巨乳美女がこれみよがしに胸を小刻みに振るわせている。なにかと思えば……ケータイ電話のバイブレーション機能だった。
(ケータイ電話会社のCM)
●H組1抜け スペイン
酒場で女性客がビールを飲む。泡が口の上について髭のようになっている。それを教えようとして、離れたところに座っていた男性客が、しきりに舌で上唇を舐める仕草。女はそれをセックスへの誘いと勘違いして身もだえる……。
(ビール会社のCM)
●E組1位通過 イタリア
女スリが地下鉄でお仕事中。
ナレーション。
「女は男のポケットに何が入っているか、ちゃんと知っている」
それを刑事らしき男二人組が見つけて追いかける。女は咄嗟に、若い男の乗客に抱きつき、ディープキス。追っていた刑事風の二人は騙されて素通りする。
抱きつかれてキスされた男がその気になったところで、女はすかさず閉まりかけたドアからホームへ。車内に取り残される男性客。ホームに逃れた女スリの手の中にはクロレッツガム。それを男にこれみよがしに見せると、車内に取り残された男は、女からスッたブラジャーを見せる。
(クロレッツのCM)
パーティで色気ムンムンの女をうまく誘い出した男。
ナレーション。
「危険を避けろ! 妻を思い浮かべろ!」
二人はそのまま外に出てクルマに乗ろうとするが、男のクルマがない。すると誘われた女がすかさずキーを見せる。二人はクルマに乗ってどこかへ消える。
「安全なクルマに乗ろう」
(フォルクスワーゲンGOLFのCM)
放送されているのはイタリアだが、ゴルフの本国・ドイツも強いなあ。
なにせ、ビザなしで入国してくる海外の売春婦にも、各自治体が売春許可証を発行するらしい。
ほんとですか? ドイツ在住の読者の皆様。
●G組苦戦中 フランス
部屋の中に点々と脱ぎ散らかされた下着。カメラがその先を追っていくと、ベッドに裸で寝ている若い男。その隣には、コーラの空き瓶が抱かれていた……。
(
ヴァージンコーラのCM)
病院で精子採取をする若い男。用意されたエロ本は、どれを見てもあそこが元気にならない。
ところが、突然、満足できる一冊を見つけたらしく、しっかり精液を採取して女性看護師(最近は「看護婦」という言葉は使ってはいけないらしい)に渡す。
看護師は、一体どんなすごい本を見たのかしらと確かめに行く。するとそこにはオートバイのカタログが……。
(オートバイのCM)
●C組2位通過 オランダ
若い男と女がもつれ合い服を脱いでいく。暗い部屋に入り、さあ、これからというとき、パッと灯りがついて、びっくりパーティに集まった仲間たちに囲まれ、クラッカーを鳴らされる。
(郵便切手?のCM)
さてさて、ノミネート作品の数と質?で他国を圧倒していたのは、中南米でも北欧でもなく、意外なことにオーストラリアだった。
●F組2位通過 オーストラリア
兵士の集まる酒場で、ひとりだけしょぼんとしている男に、隣の男が言う。
「どうした? おまえ、ナニに名前つけてるか?」
「ナニに名前? ……いいや」
「バッカだなあ。常識だぞ」
すると後ろにいた男がすかさず入ってきて、
「俺はゼウスって名前をつけてる。よう! ゼウス」
と呼びかけながら自分の股間に目を落とす。
「そうさ。そうやって名前をつけて叫ぶんだ! おまえは槍だ!」
すると、店内にいた全員が参加して合唱。
「おまえは槍だ!」
「おまえは白いエネルギー(white energy)だ!」
「俺は種馬だ!」
店内騒然。
そこでナレーション。
「実用的なアドバイスなら……」
(『
メンズ・ヘルス・マガジン』のCM)
自分の右手を女の顔に見立て、口紅で口を描き、小さなブロンドの鬘をかぶせた「女」を相手に、ひとり芝居(というか、枡……そのもの)。
「ああ、そこ。もっと……」
そこでナレーション。
「寂しいですか? そんなときはどうぞいらしてください」
(スキー場のCM)
クルマのネタでも、オーストラリアはやたらとストレート。
カーセックス中のクルマの窓ガラスが割れて、女の生足がにゅっと飛び出す。
「24時間いつでも対応できます」
(自動車用窓ガラスのメーカーのCM)
台所のシンクの下の水漏れを修理しにきたパイプマン。それを誘う夫。そこに妻が帰ってきて、慌ててシンクの下の戸の中に隠れるパイプマン。
「ゆとりがあればいつでも安心」
(キッチンユニット?のCM)
夫の浮気相手が男というところが「先進国」の証?
オーストラリアでは小売業のCMもストレート。向かい合って服を脱ぎ、下着を脱ぎまくる若い男女。パンツの下にはまたパンツを履いていて、それもどんどん脱ぐ。
「ブリーフ4枚がなんと20ドル!」
(KマートのCM)
神父のところに男が来る。
「神父様。告白します。昨日、あろうことかブロンドの双子と同時に……」
「それを懺悔しにきたのですね」
「違うよ~ん。自慢しにきたのさ!」
ナレーション。
「オーストラリア流で行こう!」
(ビールのCM)
同じ懺悔の別バージョン
懺悔部屋で神父を相手に懺悔する若い男。
「神父様、実は、若い女とあろうことか……」
「な、なんと! 相手はジュリーか?」
「いいえ」
「ウェンディか?」
「いいえ」
「シャロンか?」
「いいえ」
「それでは……」
その後、仲間のところに戻って、若い男が告げる。
「分かったぞ。やらせてくれるのは、ジュリーとウェンディとシャロンと……」
かと思うと、デブデブの冴えない男が女に「ねーちゃん、俺と情熱的なセックスしね~かい」とストレートに口説くCMもあったりして。(商品失念)
ストレートといえば、極めつけはカタツムリの交尾シーンを延々と大写しするCM。
「I want you. Oh! So nice! Your body is great!」
……なんていう台詞が喘ぎ声モードでかぶる。
(あまりのことに、これも商品は失念)
「うちの記者はみんな正直です」という新聞社があるブラジル。カタツムリの交尾映像を執拗に流すオーストラリア。こういう国を相手にして、日本に勝てというのは到底無理ですね。技術云々以前に国民性が違う。
「4年後までに日本が科せられた課題はなんでしょう?」
そうですねえ、課題というか、変えるべき点は……。
やる前は「目標はベスト4だ」なんてことをはずかしげもなくぶちあげ、負けた途端「A級戦犯はこいつらだ!」などとヒステリックに書き立てる。そういう国民性を変えることこそ、次の大会を選手と一緒にちゃんと楽しむための「日本の課題」じゃないでしょーか。はい。