年賀状に電子メールアドレスを入れる人が増えた。
へえ、パソコンは嫌いだと公言していたあの人も、今年の賀状は電子メールアドレス入りかぁ……なんて思いながら年賀状をめくっている。
じゃあ、忘れないうちに住所録に記入しておかないと……と、パソコンに向かって、眼鏡を取ったりかけたりしながら(なにせ近視&老眼なもので)、手入力で電子メールアドレスを入力していくのだが、これが結構クセモノなのである。
特に、既婚女性のメールアドレスは信用できない。メールアドレスを夫と共有しているケースが多いからだ。
「私、パソコン買ったんですよ。メールアドレスはこれね」と言われて、そのまま信じると、とんでもない目に遭うかもしれない。
今度また飲みましょうね、なんてメールを出すと、それを読んでいるのが旦那だったりするのだ。(飲むだけだよぉ……)
最近、ある女性からこんな話を聞いた。
友人の女性(既婚)とメールのやりとりをしていたのだが、ある日突然「いつもメールありがとう。ところで妻は今ではパソコンのメールは使っていないんで、私が代わりに返事をしています。もし妻に直接メールしたいときは、携帯に入れてやってください。携帯のメールアドレスは……」というメールが来たという。
え? じゃあ、今まで彼女に送っていたつもりのメールは誰が読んでいたの? ときどき来る返事は誰が書いていたの? 一体、いつからこんなことになっていたの? もしかして最初から?
……と、ショックを受けたという。
その女性は、友人の夫もよく知っているが、まさかそのメールアドレスの相手が友人の夫のものだなどとはつゆほども思っていなかった。特にまずいことを書いた覚えはないらしいのだが、当然その友人に直接書いているつもりだっただけに、読んでいるのが友人ではなく、夫のほうだったと知ったときは愕然としたそうだ。
そらそうだよなあ。
で、改めて思うわけだ。今まで友人に送っていたつもりのメールは、
- 常に夫が先に読み、夫が妻(友人)に転送していたが、返事は夫が勝手に書いていた
- 転送した後、妻の口頭での返事を夫が代筆して送っていた
- 夫しか読んでおらず、返事も夫が書いていた。友人にはメールが届いていない
のうちどれなのだろうか、と。
その間、ときどきその親友とは電話でも話していたそうだが、メールが届いていない可能性などはまったく考えてもみなかったし、当然、メールの延長のつもりで話をしていた。今さら「どうなっていたの?」と訊いて確かめるのもなんだか気が引ける。
もし、3のケース、つまり彼女が何も知らないのなら、彼女の夫とずっとメールのやりとりをしていたことになる。今それが明らかになることで、向こうの夫婦関係がまずくなったりしたらどうしよう。
一方、もし彼女も納得ずくのことだとしたら、彼女に送っているつもりのメールを夫が読むのは当然ということになり、なんとも馬鹿にされた話だ。しかし、それを抗議することで、彼女との人間関係がぎくしゃくするのも面倒くさい。
……というのだ。
困ったもんですね。
言うまでもなく、メールアドレスを夫婦で共有するということが根本的に間違っている。
夫が使っているメールアドレスを妻が平気で「私のメールアドレスよ」と友人に告げること自体が、とんでもないことだ。
ところが、そう言うと「なぜいけないの?」とムキになって反論する既婚女性が実に多い。
「夫に読まれてはいけないようなメールをやりとりすることなんてないもん」
「夫に隠し事なんてするはずがないし、私たち夫婦はすべてオープンなのよ」
うんぬんかんぬんすんぬん。
こう反論されると、こちらも馬鹿馬鹿しくなり、ムキになって諭す気にもなれない。
結局、そういう相手にはメールを送らないことになり、次第に疎遠になる。
別に、僕が人妻を片っ端から口説いているわけじゃない。極めて事務的な内容を書いているとしても、メールの相手が誰か分からないのは困ると言っているだけのことだ。
隠し事だのなんだのではなく、自分の言葉で責任を持って意見をやりとりするのが大人というものだ。そうでしょ? なんか僕、間違ってます?
パソコンは「パーソナルコンピュータ」なのだから、1人1台が当たり前。もし経済的理由で、とりあえず家に1台しかパソコンを置けないなら(それだとパソコンではなく「ファミコン」なのだが)、せめてメールアドレスとメールソフトは別々にするのが当然ではないか。
メールアドレスを1つ持つことは何も難しいことではない。フリーのメールアドレスもあるが、勝手に広告が入ったりしていい感じはしない。大したコストではないのだから、できればちゃんとお金を出して、ひもつきでない独立したメールボックスを手に入れたほうがいい。別にプロバイダに入らなくても、メールボックスだけを提供しているサービスはいくらでもある。
メールソフトはフリーで入手できる。EdMaxのフリー版はOutlook Expressなどよりはるかによくできたメールソフトで、起動パスワードでプライバシーを守ることもできる。
要するに、自分だけのメールアドレスを持つことは、技術的にも経済的にも難しいことではないのだ。問題は「なぜメールアドレスを共有してはいけないのか?」と真顔で反論する、その考え方のほうだろう。平塚雷鳥が天国?で泣いているに違いない。
それと、そのメールアドレスを「夫と共有している」と思いこんでいる妻のほとんどは騙されている。
夫は、会社のパソコンやモバイルマシンから、自分専用のメールアドレスを使って自由にメールをやりとりしている。家にあるパソコンでメールアドレスを共有しているとしたら、単に「妻を監視している」にすぎないのだ。
嘘だと思ったら問いつめてみなさいな。「あなた、このメールアドレス以外は、使っていないんでしょう?」と。
「ん? ああ、まあ……プライベートにはね」とかなんとか、歯切れの悪い返事をするに決まっているんだから。
妻と共有のメールアドレスしか持っていないなんていう男がいたら、社会的に信用されないってば。
ばいしばーさ。