ソルトレークオリンピックの生中継を見ているうちに、すっかり昼夜逆転になってしまった。
僕は基本的に団体競技にはそれほど興味がわかない。個人競技、それも、絶対的な「力」がはっきり現れる陸上競技が特に好きだ。自分の生活が、完全な運動不足で、デジタル漬けだから、逆の世界に憧れるんだろう。
スポーツの勝負は公明正大。強いものが必ず勝つからこそ魅力がある。世界最高を競うオリンピックともなればなおさら……と言いたいところだが、どうもそう簡単ではない。
考えてみると、「真に強いものが勝つ」というシンプルなスポーツは、意外と少ない。
冬季オリンピック種目で言えば、ジャンプなんて、いい風が吹いたか吹かないかという運任せの部分が大きいし、ボブスレーなどは、道具のよしあしが勝負に大きく関係してくる。高性能マシンを手に入れられない国の選手は最初からハンディを負っている。
特に、審判が絡む競技というのは、見ていてとってもストレスがたまる。
フィギュアスケート ペアで、フランスのマリー レーヌ・ル・グーニュ審査員が、最初からロシアのペア(エレーナ・ベレズナヤ、アントン・シハルリゼ組)を優勝させるようにという圧力を受けていたと報道され、大騒ぎになっているが、フィギュアスケートだけでなく、モーグルやスノーボード・ハーフパイプ競技などでも、「なんでぇ~???」と疑問に思う勝負が続出している。
今回のオリンピックで、最初に疑問がわいたのは女子モーグル決勝だった。
素人目には、上村愛子選手が6位というのが解せなかった。解説の三浦豪太氏につられて「やった! やった!」とはしゃいで見ていたせいもあるのだろうけれど、ロシア人審判が出したターン点の4.1にはかなりムッとした。本人も相当ショックだっただろう。
どうにも納得できなかったので、
ソルトレークオリンピックの公式サイトに飛んで、審判の採点表を取り出し、印刷してじっくり眺めてみた。
モーグルは、ランディングと呼ばれるターン点が50%、エアーと呼ばれるミニジャンプ台での演技点が25%、ゴールするまでのタイムの速さが25%という構成で得点が決まる。大きな演技をすればエアーで高得点が出るが、その分タイムはロスする。こぶをもろともせず、直滑降に近い滑り方をすればタイムは速いが、きっちりターンしていないと判定されて、ターン点は下がる。いろいろ相反する要素が絡んでいるところが妙味なのだろう。
点数の50%はターン点だから、きっちりこぶを回れるかどうかが勝負を大きく分ける。しかし、これはタイムのように絶対的な評価ができない。5人の審判が5点満点で点数をつけるが、最高点と最低点は切り捨てられ、真ん中の3人分の合計点が採用される。
エアー点は、2人の審判が7.5点満点で採点し、その中間点が採用される。
ターンでは上下2人の点はカットされるが、エアーでは2人の審判の点がそのまま反映されるところに注意したい。
女子モーグル決勝の審判員の出身国は、ターンの5人が、アメリカ、ロシア、スウェーデン、フランス、日本。エアーの2人が、カナダとイタリアという構成だった。
この審判員たちの公正さを「採点」してみよう。
公正さを審査するのは難しいが、他の審判とかけ離れた点数を出した回数の多さがひとつの目安になるだろう。
各審判が、上位10選手に対する採点のうち、最高点と最低点をつけた回数を出してみると、次のようになる。