たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2003年11月01日執筆  2003年11月4日掲載

政治家の笑顔

穴吹さんが「傷心のたくきを励ます会・お忍び版」を開いてくださった某日、出がけにイーネット専用の電話が鳴った。
「朝日新聞社です」というので、一瞬なんだろうと緊張したのだが、今度の衆院選挙の投票動向調査だった。
「電話番号は無作為に選んでおりますので……」ということで、営業用の電話番号にかかってきたらしい。
「すみません。今出かけるところなんですよ」と言って、その場は切ったのだが、その後、新宿二丁目の素敵なお店でみなさんと痛飲している最中にもかかってきたらしい。
翌日、3度目で晴れてアンケートに答えることになった。
「世帯構成者で選挙権を持っているかたで、年齢が上から2番目のかた」じゃないといけないそうで、かみさん(いちばん上)では駄目だったらしい。
無作為で選ばれた電話番号の主がいる世帯の選挙権を持つ上から2番目の人物からの回答を得るために電話3回。ずいぶん律儀なアンケートだな、と、感心してしまった。

同じ日の夜、今度は個人用の電話が鳴った。
また選挙投票動向調査だったが、今度は名前を名乗らないコンピュータ音声だ。
名乗らないとはとんでもないが、ネタになるかもしれないという思いもあって、つき合ってみた。
「1分ほどご協力ください」という録音音声のガイドに従ってやると、たっぷり5分はかかった。
最後まで名乗らない。これは本当に失礼だ。どこかの調査会社か? 結果はメディアに高く売りつけるのかしら。

最近はこうした事前調査がすさまじくて、選挙の開票スタートと同時に当選確実が打たれることも珍しくない。情勢報道がもたらすアナウンス効果もよく問題にされる。
本来、政治体制を選ぶという行為は、そうしたふわふわしたものであってはならないはずだが、実際にはちょっとしたことで投票動向ががらっと変わってしまう。

今回は民主党が早くから「マニフェスト」を全面に打ち出して戦っていて、「マニフェスト」という言葉は今年の流行語大賞の有力候補だ。イメージではなく、政策論争で戦おうというのはよいこと(というか、あたりまえのこと)なのだが、一方では相変わらずイメージだけの政党CMが流れ、虚しい。
前回の参院選挙のときは、「そうはいかんざき」とか、ズボンのベルトを過剰に締め付けて「身の引き締まる思いです」なんて駄洒落CMが連日流され、目眩がしたものだが(→こちらに某大学のゼミが出している前回参院選のときの政党CM評価があり、興味深い)、今回はしょーもない駄洒落にさえなっていない、空疎な出来のものばかり。というより、完全に、党首(自民党の場合は、+幹事長)のタレント性競争になってしまった感がある。

対照的なのは、小泉・自民党総裁は口を真一文字に結んだ顔が基調になっていて、菅・民主党代表は笑顔が基調になっているという点だ。
個人的には、これが逆なら、菅・民主党は小泉・自民党に勝てるかもしれないのに、と思う。

政治家の笑顔は難しい。
もともと、笑顔が似合う政治家は極めて少ない。特に作り笑顔と薄ら笑いは禁物で、どうしても見抜かれてしまう。
それなら、「作り真顔」のほうが安全で、多くの政治家はその「作り真顔」の技術を身につけている。特に、嘘をつくときは真顔でやらないといけない。技術に磨きをかけるあまり、自分の嘘をいつしか真実と思いこむという、性格異常が形成される人もいるようだ。そこまで徹底していかないと出世できないのだろうなあ。

菅直人代表は、もともとあまり笑わない人だったと記憶している。無表情だが、実直で仕事ができるというイメージが築かれていった。
厚生大臣時代、人気がピークに達した後、女性スキャンダルなどで表舞台から一歩退いたが、どうもその後、笑顔が目立つようになったように思う。
でも、これは逆効果では? と常々懸念していた。

小泉首相は、「変人」が認知されたことでとても得をした。仏頂面をしていても、ちょっと危なそうなハイテンションの演説をぶっても、それが「変人」たるあの人の個性だから、と受け入れられるようになった。これは楽だ。
監視する国民としては、彼がふっと笑みを漏らす瞬間の言動に注目していなければならない。
菅代表は逆に、笑っているときは表向きの顔で、計算された言動しか見えてこない。真顔に戻ったときに本音が出たり、あるいは本領を発揮するのだろうが、それなら終始真顔でいいのに。
「笑えない菅」を認知させられなかったことが、彼の最大の悲劇だったのではないだろうか。ダブルのスーツや固めすぎに見える髪型などとも合わせ、一度、イメージ戦略部分を大幅見直ししたほうがいいかもしれない(……な~んて、また「管轄外」の発言だな。女性週刊誌じゃないんだから、余計なお世話か)。

ともあれ、気分が悪くなる政党CMは極力見ないようにして、みなさん、せっかくの「マニフェスト選挙」ですから、しっかり政策を読みましょう。
政党のWEBサイト、なかなか面白いですよ。トップページに載っている写真のセンスを評価するだけでもいいので、アクセスしてみることをお勧めします。

自由民主党→http://www.jimin.jp/
民主党→http://www.dpj.or.jp/
公明党→http://www.komei.or.jp/
日本共産党→http://www.jcp.or.jp/
社民党→http://www5.sdp.or.jp/
保守新党→http://www.hoshushintoh.com/

<<<本日のオマケ 政党とドメイン名>>>

サイトの作りやURLもそれぞれ興味深い。自民党サイトのURLはただの.jp(ちなみにページ構成はJava ScriptとFlash使い放題で不必要に重い)。
民主党は「minshu」じゃなくてdpj(その略称、普通は思い浮かばないと思うが)。
共産党も同様に「jcp」でor.jp。
社民党も「shamin」じゃなくてsdpだが、加えてwww5の「5」はなんだろう。www5というホスト名が昔から使われていて削除できないなら、DNSのZONEに別名を設定するとかしていくらでも対処できるのに……(ちなみにshamin.jpというドメインは持っているようで、入力するとwww5.sdp.or.jpにジャンプする)。
公明党は「kohmei」とはしていないが、保守新党は「shintoh」とわざわざhをつけて.com(.orgじゃなくて)。

さらに興味を持って調べてみたら。
minshu.jp minshuto.jp minshu.or.jp minshuto.or.jp ……すべて該当なし。
minshu.org は民主党の所有でレジストラはNSI。
shaminto.jp shamin.or.jp は該当なし(shamin.jpは社民党が所有)。
jimin.org や minshu.net は個人所有。

……というようなことも分かったりして、こんなことをしているうちにすぐ1日経ってしまう。


(2020年9月 追記)
 ↑……懐かしい政党名があるなあと思いつつ、試しにそれぞれのURLにつないでみたら……。
 http://www.dpj.or.jp/ は「民進党」のWEBサイト(https://www.minshin.or.jp/)にリダイレクトされ、topページには
5月7日の設立大会を経て、国民民主党へと生まれ変わりました。国民民主党のサイトはこちらからご覧ください。

という案内がデカデカと表示された。
その「国民民主党」のサイト(https://www.dpfp.or.jp/)につなぐと、いろいろ政策などが出ているのだが、この国民民主党はつい昨日(2020年9月10日)に、立憲民主党などと合流して、新生「立憲民主党」になることが決まったばかり。
ふうう……。
六神石神社の宝永7年の狛犬
■笑う狛犬

六神石神社(岩手県遠野市青笹町瀬内)
建立年宝永7(1710)年8月15日(旧暦)
東北の狛犬では相当古いものの1つ
(目の中に子供?が落書きで ^^を描き入れている)



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