林家しん平師匠とは、
三遊亭円丈師匠が主催する
「日本参道狛犬研究会」(狛研)で知り合った。
しん平師匠と僕は、ほとんどの部分で趣味が合わない。彼が好きなのは、怪獣やスターウォーズなどの特撮映画、仮面ライダーやウルトラマン、それらにまつわるフィギュア、プロレス、そしてフラダンス……。
どれも僕は趣味じゃない。唯一と言っていい趣味の一致が狛犬。
しん平師匠は、怪獣やロボットなどの延長として狛犬をとらえているのかもしれない。自らフィギュア制作、プロレスラーの覆面製作などをしているので、狛犬を彫った石工にも興味があるらしい。
(ちなみに僕はしん平師匠が作った狛犬レプリカを3体持っている。)
僕も子供の頃は(普通に)怪獣が好きだった。
『ウルトラQ』が終了して『ウルトラマン』になったとき、両親は1回目を見てがっかりしていた。内容が一気に子供っぽくなったので、小学生の息子と一緒に見るのはしんどくなったからだ。
一方、僕はウルトラマンに夢中になり、それを見た
母親が「ふうん。子供にはこっちのほうがうけるのね」と呟いていたのを今でも覚えている。
主宰者は忘れたが、怪獣のアイデア原画募集というのに応募したこともある。サソリとブロントザウルスを足して2で割ったような怪獣で、今思えば巨体を支える脚があまりに細すぎた。佳作止まりだったのもいたしかたなし。
今の僕にとっての狛犬は、小学生時代の怪獣に似たような存在かもしれない。
実はだいぶ前から、こんなことができたらいいなあと考えている。
1)狛犬カード
……野球カードとかメンコみたいなものだ。表には狛犬の写真。裏にはその狛犬のプロフィールが印刷されている。できれば「○○神社の狛犬」ではなく、固有名詞をつけたい。「
青森県弘前市 弘前八幡宮 山内坊犬太郎」なんていう風に。
ついでに、「好物・日本酒と刺身田楽。特技・よく通るバリトンの遠吠え。血液型・B型」なんてのも付け加えていけば面白い。
「あ、健ちゃん、犬太郎持ってるんだ。いいなあ。それ、ほしかったんだよなぁ。なかなか手に入らなくてさぁ。おれの
クッキーモンスター狛犬と交換してくれない?」なんていう会話が、子供たちの間で交わされるようになれば、日本も安泰なのだがなあ。
2)狛犬フィギュア
……ミニカーや怪獣フィギュアと同じ。素材はプラスチックでもいいけれど、一見すると石に見えるのがいい。簡単に量産できるから、1個100円くらいで売れるはず。
これをつけた「狛犬チョコ」「狛犬ガム」「狛犬煎餅」などの食玩が、日本中のコンビニで売られるようになれば、日本の経済もぐっと奥行きを増すのだがなあ。
3)狛犬絵本
……じつはこれ、しん平師匠が絵を描いて、僕が文章を作り、テスト版を作ったことがある。『こまいぬくんの旅』という。孤児のこまいぬくんが、北海道から沖縄まで、まだ見ぬ親を捜して旅をする。日本各地の神社で変な狛犬さんたちに出逢い、教えられ、成長していくこまいぬくん……という感動巨編。
出版社からはもちろん無視された。こういう本が出るようなら、日本の出版界もまだまだ大丈夫なのだがなあ。
狛犬と怪獣の最大の違いは、狛犬は「本物」に会えるという点だ。
ガメラやゴジラの本物には会えないが、「弘前八幡宮・山内坊犬太郎」には、その気になれば会えるのである。趣味として、一気に奥行きと広がりが生まれる。
ああ、そんな豊かで平和な日本に、ワタシは暮らしたい。