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書 名:『ワードを捨ててエディタを使おう 第2版』 著 者:鐸木能光 版 型:A5版単行本 CD-ROM付き 版 元:SCC(01/04) 価 格:2,200円 ISBN :4-88647-866-2 |
例えば、とてもきれいな色で文字が書ける特殊な万年筆があったとする。太くて重いが、柄の所にはダイヤルがついていて、それを操作すると、緑色の文字も、紫色の文字も書ける。不思議なことに、その万年筆を握ると、文字だけではなく、絵もきれいに描ける。
ただし、その万年筆で書いた文字や絵は、万年筆と同じブランドの特殊眼鏡をかけないと読めない。だから、その万年筆で書いた手紙を受け取った人は、書いた万年筆と同じブランドの特殊眼鏡を持っている必要がある。モンブランの万年筆で書かれた手紙を読むためには、モンブランの眼鏡を、ペリカンの万年筆で書かれた報告書を読むにはペリカンの眼鏡を持っていなければいけないわけだ。
さて、あなたはこのような万年筆を愛用するだろうか?
「そんな面倒な万年筆なんかいらないよ。絵はともかく、たかが文字を書くだけなら、どこでも売っているボールペンや鉛筆で十分じゃないか」
ほとんどの人はそう答えるに違いない。
ところが、不思議なことに、パソコンの世界ではこの「面倒な万年筆」を愛用している人が実に多い。それどころか、この「面倒な万年筆」は知っているが、普通のボールペンや鉛筆は知らないという人がたくさんいるのだ。
「面倒なペン」の名前は、ワープロソフトという。MicrosoftのWordや、ジャストシステムの一太郎などが有名だ。Wordという万年筆で書いた文章は、Wordという眼鏡をかけないと読めない。
一方、「どこでも売っている普通のボールペンや鉛筆」は、テキストエディタという。素っ気ない筆記具だが、手軽で、値段も安く、それで書いた文章は誰でも読める。
もしあなたが、Wordや一太郎は知っているが、テキストエディタなんて聞いたこともないというならば、それは「きれいに書けるけれど面倒な特殊万年筆」は知っていても、「あたりまえのボールペンや鉛筆」は知らないということに近い。
鉛筆やボールペンの存在を知らないまま、いきなり「特殊な万年筆」を買わされ、それだけを使って文字を書いているとしたらどうだろう。こんな馬鹿馬鹿しいことはない。鉛筆やボールペンの存在を知ったとき、その人は「くそ! 俺は騙されていた!」と気づくはずだ。
本書は、「重くて面倒な特殊万年筆」を使う前に、普通の鉛筆やボールペンを使ってみてはいかがですか? という、あたりまえの提言をするものである。
さあ、Wordという重い万年筆を捨て、ただの鉛筆を持って街へ出よう!