「スマホでは代替できないコンパクトカメラ」とはどういうものなのか。
カメラメーカーがコンパクトカメラの新製品を出さなくなって久しい今日、まともなコンパクトカメラをどうやって手に入れ、使いこなすかについて、改めて今の考え方をまとめてみました。
デジカメ業界の流れが大きく変わらない以上、この「考え方」は当面変わらない気がします。
(2020/10/02 更新)
なお、もっと短く読みたいというかたは
⇒こちらを先にどうぞ
ポケットにスッと入らなければ「コンパクト」とはいえない
コンパクトデジカメが大型のセンサーを採用して高級路線になった今、もはやコンパクトとはいいがたいモデルが増えました。
かつてのように、
ポケットにスッと入れられる大きさ・重さのモデルはもうないのでしょうか。また、スマホ時代にそれを使う意味があるのでしょうか。
モバイルSuicaがガラケーでは使えなくなるとのことで、私もついにガラケーからスマホに乗り換えてしまいました。しかし、今でも腰の左側にはコンパクトカメラをぶら下げています。
この「常に身につけているカメラ」は、フジのXF1を経て、何年もの間、オリンパスのXZ-10がその位置を占めていましたが、最近、SONYのHX-90Vに代わりつつあります。
オリンパスのStylus1は光学ズームで300mm相当までの望遠が効くという非常に魅力的なカメラですが、ポケットにスッと入れるには大きすぎます。
大きさ・重さの上限はSONYのRX100シリーズだと思います。
私が所有するRX100Ⅲは、102×58×41mm(突起部を除く)、290g寸法(電池カード含む)です。
これも、ポケットにいつも入れて持ち歩くには大きすぎます。
オリンパスのTGシリーズも、幅が113mmもあり、相当でかいです。しかし、RX100シリーズはコンパクト機の絶対王者として長く評価され、今も新型が出続けていますし、TGシリーズも現行機であり、別に工事現場や営業マン専用ではなく、普段使いのカメラとして優れているので、この2種は入れました。この2種より大きく重いモデルは除外して考えてみます。
やはりズームはほしい
大型センサーに単焦点レンズを組み合わせた「プレミアムコンパクト」などと呼ばれる製品群がありますが、これは趣味性の強いカメラだと思います。ポケットに入れて持ち歩くには大きく、重すぎるものも多いですし、やはり光学ズームはほしいので、単焦点レンズの高級機もとりあえず除外してみます。
明るいレンズと大きな画素ピッチは必須
その上で、ガバサク流がずっと言い続けてきた「明るいレンズと大きな画素ピッチ」という条件を満たしているコンパクト機はどれだけ残るでしょう。
製造終了モデルを含めて、現在「買ってもいいコンパクト機」といえるのは以下の8種くらいしかないのではないかと思います。
- オリンパス XZ-10
- オリンパス TGシリーズ(1200万画素モデル)
- フジ XQ2(前モデルXQ1も)
- ニコン P340(前モデルP330も)
- パナソニック DMC-LX9
- キヤノン G7X MarkⅡ
- キヤノン G9X MarkⅡ
- ソニー HX-90V
- ソニー RX100シリーズ
XZ-10、XQ2/1、P340/330はすでに製造終了していて、在庫新品は発売時よりも価格が上がっています。程度のよい中古を探すしかありません。
TGシリーズ、GXシリーズ、LXシリーズ、RX100シリーズはモデルを更新し続けています。RX100は初代機がまだ製造終了していませんが、さすがに最新モデルに比べると見劣りします。
さて、これらからどれを選ぶべきか……。
以下、具体的に考えてみます。
コンパクトさ
まずは、「ポケットにスッと入れられる」かどうか──大きさと重さを比較してみます。
キヤノンはG*Xシリーズを現行5機種作っていて、Gの後の数字が大きくなるほどサイズが小さくなります。いちばん大きなG1X MarkⅢが115×78×51mm 399g。これはさすがにポケットにサクッと入れておくには大きすぎ。次のG5X Markが111×61×46mm 340g。この2機種は「ポケットサイズ」として限界だと思うRX100よりはかなり大きいし、その下にまだ小さい2機種があるので今回候補からは外しています。G7X MarkⅡも大きさからいうと候補から外れるかなというくらい大きく重いのですが、RX100Ⅲとの比較ではライバルといえるので入れました。同じ理由で、LumixのLX9もRX100のライバル機ということで入れました。
- オリンパス XZ-10 102.4×61.1×34.3mm 221g
- オリンパス TG5 113×66× 31.9mm 250g
- フジ XQ2 100×58.5×33.3mm 206g
- ニコン P340 103×58.3×32mm 194g
- パナソニック DMC-LX9 105.5×60.0×42.0 310g
- キヤノン G7X MarkⅡ 105.5×60.9×42.2mm 319g
- キヤノン G9X MarkⅡ 98.0×57.9×31.3mm 206g
- ソニー HX-90V 102.0 x 58.1 x 35.5mm 245g
- ソニー RX100Ⅲ 101.6×58.1×41mm 290g
小さくて軽いのはG9X MarkⅡ、XQ2、P340。これ以上は厳しいという大きさ・重さがTG5、LX9、RX100Ⅲ、G7X MarkⅡ。
↑左上から右下にRX100Ⅲ、XQ2、P340、XZ-10。正面から見るとあまり変わらないように見えるが……
↑左からXZ-10、P340、XQ2、RX100Ⅲ。厚みがまったく違う。RX100Ⅲは分厚く、重い。
画素ピッチの大きさ
画素ピッチ(1画素の大きさ)が大きければ大きいほど光の情報を余裕を持って受け取れ、明暗差や色階調などが出しやすくなります。画素ピッチはセンサーの大きさを画素数で割った数値で比較できます。
センサーは小さいほうから順に、
- オリンパス XZ-10、TG-5 1/2.3型 1200万画素
- ニコン P340 1/1.7型 1200万画素
- フジ XQ2 2/3型 1200万画素
- ソニー HX-90V 1/2.3型 2110万画素
- ソニー RX100Ⅲ、パナソニック LX9、キヤノンG7/9X MarkⅡ 1型 2090万画素
……となりますが、これを画素ピッチの大きさで比較してみましょう。XZ-10、TG-5を「1」とすると、およそ以下のようになります。
- オリンパス XZ-10、TG-5 1
- ニコン P340 1.62
- フジ XQ2 1.90
- ソニー HX-90V 0.57
- ソニー RX100Ⅲ、パナソニック LX9、キヤノンG7/9X MarkⅡ 2.65
※例えば、XQ2は有効1200万画素ですが、センサーの総画素数は1450万画素なので、画素ピッチを比較するにはセンサー面積を総画素数で割った数値で比較しました。
1/2.3型1200万画素センサーに比べて1型2000万画素センサーの画素ピッチは約2.6倍あるわけですが、この差がそのまま画質の差にならないところがデジカメの難しいところです。
とはいえ、1/2.3型という小さなセンサーに1600万だの2000万画素だの詰め込むのは馬鹿げた自殺行為です。これをやっているのがHX-90Vで、他の性能がよいだけに、HX-90Vが画素数の少ないセンサーを搭載したらどれだけ性能がUPするのかと思うと、ストレスが溜まります。
本来ならiPhone4sのように、1/2.3型なら800万画素くらいで十分なのですが、現状ではそういうセンサーが製造・供給されていないのでどうしようもありません。
また、大きなセンサーにすると最短撮影距離が長くなり、グッと寄ったマクロ撮影ができません。広角端で30cmくらいまで寄れても、ちょっとでもズームアップするとたちまち1m以上離れないと撮れなくなったりします。仕方なく広角端で寄ると対象物の形が歪みますので、不自然な写真になります。
結果、昆虫や花の拡大写真などでは、センサーが大きいことがネックになります。
なお、ソニー製の1型2000万画素センサーは、RX100Ⅱになったときに裏面照射型に代わり、Ⅳからは積層型へと進化していますが、キヤノンのG7X MarkⅡとG9X MarkⅡはRX100Ⅱ/Ⅲと同じ裏面照射型、G7X MarkⅢはRX100Ⅳ以降に使われている積層型です。
レンズの明るさとズーム比
画素ピッチ同様、画質に直接影響するのはレンズ性能です。大口径で明るいレンズに超したことはないですが、それではカメラのサイズがでかくなりすぎてコンパクト機ではなくなります。
また、ズーム比を欲張ると望遠側での明るさが犠牲になります。望遠側で暗くなるというのはそれだけ手ぶれしやすくなるわけで、単純にズーム比だけを見ていても「真の望遠性能」が分かりません。
- オリンパス XZ-10 4.7~23.5mm(26~130mm相当)F1.8-2.7 光学ズーム比5倍
- オリンパス TG-5 4.5mm~18.0mm(25~100mm)F2.0-4.9 ズーム比4倍
- ニコン P340 5.1~25.5mm(24~120mm)F1.8-5.6 ズーム5倍
- フジ XQ2 6.4~25.6mm(25~100mm) F1.8-4.9 ズーム比4倍
- パナソニック DMC-LX9 8.8mm~26.4mm(24~72mm) F1.4-2.8 ズーム比3倍
- キヤノン G7X MarkⅡ 8.8~36.8mm(24~100mm) F1.8-2.8 ズーム比4.17倍
- キヤノン G9X MarkⅡ 10.2~30.6mm(28~84mm) F2.0-4.9 ズーム比3倍
- ソニー HX-90V 4.1~123mm(24~720mm) F3.5-6.4
- ソニー RX100Ⅲ 8.8~25.7mm(24~70mm) F1.8-2.8 ズーム比2.9倍
レンズ性能は、130mm相当の望遠端でもF2.7を誇るXZ-10の圧勝で、これは昆虫などのマクロ撮影をしたり、夜空を三脚なしでパパッと撮ったりしたときに分かります。え? これがコンパクト機の映像? とびっくりするような写真が撮れます。
P340もズーム比5倍ですが、望遠端が暗いのでXZ-10には負けます。
LX9はF1.4-2.8という最も明るいレンズを搭載していますが、F1.4は広角端のみなので、24mm/F1.4の広角レンズに全域F2.8で72mmまでいけるズームがオマケで付いているという認識でしょうか。
G9X MarkⅡはボディをコンパクトにした分、レンズの明るさとズーム比は犠牲になっています。望遠側は画素数を生かしてデジタルズームである程度対応できても、広角端が28mmというのはどうにもなりません。広角側はある程度諦める覚悟が必要です。
RX100Ⅲはレンズは明るいのですが、G9X同様に望遠側が伸びておらず、画素数の多さを利用してデジタルズームを使うしかありません。記録サイズを小さくするとデジタルズームも望遠側が伸びるので、サイズMに設定して使うという手もありますが、それを切り取って実寸画像を見るとボロボロだったりします。
トリミングして拡大する手法のデジタルズームと、レンズで最初からズームアップする光学ズームの差は明らかで、ほとんどの場合、レンズの望遠端が伸びていて明るいXZ-10のほうがいい感じに拡大できます。
↑RX100Ⅲの「超解像デジタルズーム」での望遠端 ↓それをトリミングして原寸表示
↑XZ-10の光学ズーム望遠端 ↓それをトリミングして原寸表示
どこまで寄れるか
望遠性能もほしいですが、コンパクト機はやはりマクロ撮影に力を発揮します。昆虫や小動物などを撮るとき、どこまで寄れるか。また、望遠側でどこまで寄れるかというのはマクロ撮影での大きな実力差になってきます。
- オリンパス XZ-10 通常:W10cm~、T30cm~ スーパーマクロ(W端固定):1cm~60cm
- オリンパス TG-5 通常:10cm~ 顕微鏡モード(W端固定):10cm~30cm(TG-6は1cm~)
- ニコン P340 通常:W30cm~、T50cm~ マクロAF時:W約2cm~
- フジ XQ2 通常:W50cm~、T80cm~ マクロモード:W3cm~3m、T50cm~3m
- パナソニック DMC-LX9 通常:W30cm~、T30cm~ AFマクロ/MF/インテリジェントオート/動画時:W3cm~、T30cm~
- キヤノン G7X MarkⅡ オート:W5cm~、T40cm~ マクロ(W端固定):5cm~50cm
- キヤノン G9X MarkⅡ オート:W5cm~、T35cm~ マクロ(W端固定):5cm~50cm
- ソニー HX-90V AF時:W5cm~、T250cm~
- ソニー RX100Ⅲ Pモード時:W5cm~、T30cm~
これはセンサーの小さいXZ-10、TG-5/6が有利です。センサーが大きいカメラだと望遠マクロ的な撮影は不利です。G9Xは特にマクロでのAFの使いづらさが弱点です。望遠は、1型センサーモデルは解像度の高さを生かせるので、少し離れて望遠で撮って、後からトリミングして拡大、あるいはデジタルズームで撮影という使い方が主になるでしょう。
LX9とRX100Ⅲは1型センサーを採用しながらも望遠側ズーム端を欲張っていないので、望遠端(70mm相当)でも30cmまで寄れるのが強みです。
逆に、HX-90Vはズームを使うと途端に最短撮影距離が伸びてしまうため、中望遠程度の扱いがしづらいのが弱点です。
↑RX100Ⅲはここまでしか寄れないが ↓XZ-10は同じ場所からこう撮れる
写真の色味や解像感
スペックの数字には現れない色味などは、好みもあるので一概にどれがいいとはいえません。主観で少し説明すると……
- オリンパス XZ-10 暖かみのある濃い色。昆虫の写真などではその「濃さ」が迫力になる。一方で、晴天時の屋外写真などではそれが違和感につながることも。センサーが小さい分、色味はかなり積極的に「作っている」感じで、その計算が外れたときは相当変な色にもなる。
- オリンパス TG-5 XZ-10に近いが、新しい設計である分、より自然な色味に仕上がることが多い。
- キヤノン G7/9X MarkⅡ、パナソニック DMC-LX9 キヤノンは昔から派手目の色味で「分かりやすい」のが特徴だったが、SONY製1型センサーが明るくあっさりなので、あえて濃く、暗め、深めの色味を狙って処理しているのか、うまいバランスでまとめている。逆にパナのLXシリーズはもともとが地味目で落ち着いた色調だったので、同じセンサーを搭載していることもあり、似た仕上がりか。ある意味、ソニーの1型センサー搭載機は、よくも悪くも没個性化しているかもしれない。
- ソニー RX100Ⅲ 明るい場所と暗い場所での色味の違いが激しい。晴天時は自然で非常によい発色だが、曇天下や暗い室内では色味が極端に薄くなる傾向が見られる。全体的には、よくいえば「明るい」が、悪くいえば「深みがない」。草の緑や土の茶色などはノペッとした印象に仕上がる。これは他のソニー製1型センサー搭載機にもいえることだが、色味を調整すると違和感が増す場合が多い。画素数やセンサーの大きさを考えると、決して解像感が素晴らしいともいえないが、どんなものも無難に撮れる安心感はあるかもしれない。
- ニコン P340 あっさりした明るい色味。嫌みがない。
- フジ XQ2 フジのカメラ独特の色味。薄く、あっさりした色味。フィルム時代のような自然さ、絵画のような味わいを感じる熱烈なファンも多い。
概ね、↑この並び順に色味は「濃厚⇒あっさり」になるでしょうか。XZ-10とRX100Ⅲの色味がどれだけ違うかは、上の写真でもよく分かると思います。
↑XZ-10 117mm相当の光学ズーム域で撮影 ↓IrfanViewで一発補整後
↑P340 120mm相当の望遠端(光学ズーム)で撮影 ↓IrfanViewで一発補整後
↑RX100Ⅲ デジタルズーム域(2x望遠端)で撮影 IrfanViewで一発補整後
↑XQ2 トリミングで拡大
↑RX100Ⅲ デジタルズーム2倍撮影をさらにトリミングで拡大
↑XZ-10 光学ズーム端
↑Canon G9X 光学ズーム端をさらにトリミング
↑RX100Ⅲ 光学ズーム端をさらにトリミング
↑XZ-10 107mm相当
使いやすさ
起動速度、連写速度、書き込み速度、AFの合いやすさと速さ、電池の持ち、ダイヤルなどの操作性など、実際に使って見ないと分からない部分をまとめてみます。
- オリンパス XZ-10 動作は全体に遅い。タッチパネルは誤作動が多く、切って使うしかない。連写速度は非常に遅いが、書き込みはそれほどストレスなし。操作がシンプルで、片手でも露出調整などができるのは長所。AFは近距離でもかなりしっかり合うが、合わないときはMFモードがないため、どうしようもない。ストラップ穴が片側にしかないので、ネックストラップがつけられない。電池の持ちは非常に悪い。ボディは頑丈だが、オートキャップ部分は薄いので変形しやすい。
- オリンパス TG-5 オートブラケット機能がついていないのが問題。これは後継機のTG-6になっても同じ。ただし、プロキャプチャー(レリーズ前記録)機能があり、通常の連写性能もよい。ボタンレイアウトが独特で、慣れるのに時間がかかる。レンズが常に剥き出しなのもちょっと怖いが、オプションでキャップはつけられる。顕微鏡モードは使いやすく、楽しい。AFもXZ-10よりは合いやすい。頑丈さは群を抜いているし、防水機能は他機種には真似のできない長所ではあるが、そのままでの水中撮影はちょっと怖い。
- ニコン P340 連写速度はそこそこだが、オートブラケットにすると確認画面が3枚表示されてしまい、次のショットがなかなか撮れない。menuで「確認画面なし」に設定しても出てしまうので、これはバグだろう。起動も遅いし、動画のスタートも遅いので、ここぞというチャンスを逃しやすい。電源ボタンが非常に押しづらい。AF性能はそこそこだが、合わないときはなかなか合わない。また、壊れやすさという意味ではいちばん不安がある。私が所有しているP340は、しばらく触っていない間にズームが引っかかって使いものにならなくなった(仕方なく、コントロールリングにズームを割り当てて手動で動かしている)。背面の指あてゴムは接着剤がべとべとに溶けて脱落。ボディは平板な金属にペタッとした塗装で安っぽく、塗装もすぐ剥げる。ストラップ穴が両側についているのでネックストラップがつけられるのは◎。
- フジ XQ2 ボディの大きさは他モデルに比べて小さいので、それだけで気分がよくなる。RX100シリーズと比べると、軽さに感動する。起動やAFはそこそこ速いが、AFの合い方は非常に甘く、合っていないときにモニターで確認しづらいので失敗写真が増える。MFへの切り替えがmenu画面からしかできないので、小さな被写体に合わせることが非常に苦手。マクロもセンサーが大きい分、XZ-10やTGシリーズに比べると効かない。フジ独自のセンサーを搭載した最後のモデルだが、センサーの性能はソニー製に負けている。中古を探すしかないので、故障や劣化が不安材料となる。しかし、デザインがよく、高級感があり、革製ケースなどもいろいろ出ているので、「もの」として所有する満足感がある。両側にストラップ穴が空いているのも◎。
- パナソニック DMC-LX9 かつてのLXシリーズは自動開閉キャップもなくてレンズ部分は出っ張ったまま。その代わり堅牢で硬派な仕上がりのデザインだったが、LX9では自動開閉キャップだけでなく、裏面のタッチパネルでスマホを意識した操作性をめざすなど、硬派からの変身が図られている。しかし、最も小さなLX9でも、RX100やG7Xと同等の大きさ、重さなので、思想が揺らいでいるというか、ちぐはぐな印象。この大きさなら、もっとどっしりした操作性に徹したほうが喜ばれたのではないか。
- キヤノン G9X MarkⅡ 小さくした分、レンズ周りのコントロールリング以外は調整ダイヤルがなく、インターフェースの多くをタッチパネルで、という発想のモデル。その操作性に最初は戸惑うが、機能選択はタッチパネルで、露出の補正などはコントロールリングで、という切り替えに慣れてしまえば、むしろコンパクトさの恩恵を享受できるかもしれない。ただし、背面にダイヤルがないので、タッチパネルやコントロールリングに頻繁に触らなければならず、「片手で撮影」はほぼ無理。近距離のAFも苦手で「すっぽ抜け」はしょっちゅうあるし、MFもコントロールリングではできず、タッチパネルを使うので非常にやりづらい、というか、MFとはいえないような操作性。この弱点は、menuでAF方式を「1点AF」、AFフレームの大きさを「小さめ」に設定することでかなり改善できる。マクロでピントが合わない場合は、デジタルテレコン機能を使って最初からトリミングすることを前提にすると、広角域の最短撮影距離やF値が使えるので、多用するといい(この機能を「マイメニュー」のトップに配置すると比較的簡単に切り替えられる)。カメラが勝手に判断していろいろな味付けをしてくれる使い方もできるので、お気軽に写真を楽しみたい人向き。画質もよいので、ズームやマクロをあまり考えず、日常の風景をポンポン撮っておこうという人にはいちばん向いているかもしれない。
- ソニー RX100Ⅲ 光学ズームが2.9倍しか効かないので、おのずとデジタルズームを使いたくなるが、デジタルズーム域に入ってモニターやファインダーに大きな画面が映し出されても、細かいところにピントが合いやすくなるわけではない。menu設定でDMF(AFでピントを合わせた後、さらにコントロールリングを回して手動で微調整する)に設定するとなんとか分かるようになる。あと、ズームレバーに引っかかりがなく、光学ズーム域とデジタルズーム域の境目で止まってくれないので、デジタルズーム可能に設定してあると、光学ズームの望遠端(70mm相当)に合わせづらい。ファインダーを格納すると同時に電源が切れてしまう仕様も困る。撮影後確認画面を出す設定にしてあると、書き込みが異常に遅れて、次のシャッターがなかなか切れない。動画録画ボタンが背面グリップと同じ位置にあるので、うっかり押したまま気づかないとえらいことになる。ストラップ穴は両端にあるのでネックストラップはつけられる。シリコン製のグリップ(貼り付ける)を純正以外でも別売しているので、それをつけると持ちやすくなる。ファインダーよりもむしろバリアングルモニターの威力が絶大で、他のモデルでは確認できないようなローアングル、ハイアングルで被写体をとらえられるのは強み。
- ソニー HX-90V レンズが暗いのがとにかく災いして、暗い場所では発色が悪く、マクロ的な撮影も苦手。最もイライラするのは連写速度が速くてもその後のファイルへの書き込み時間が異常に長いこと。これもセンサーの画素数を多くしすぎたための弊害。また、暗いレンズと小さなセンサーの弱点をカバーするために、映像エンジンで加工しまくっている感じで、その分も書き込み時間がかかっているのだろう。
電子ファインダーはないよりは圧倒的に便利だが、視野が狭くて見づらいし、2段階操作なので使いづらい。ピントが合っているのかどうかの確認が難しい。
小ささは嬉しいが、RX100Ⅲのようにストラップ穴は両側につけてほしかった。首から下げるときに不安定になって困る。
電池の持ちはまあまあいいほうか。
購入しやすさ
価格や流通状況を考えて、今でも新品が買えるのか、中古を探すしかない場合は程度のよい中古がどの程度出回っているのかが問題となります。
カメラの画像または

をクリックすると、Amazonでチェックできます。中古カメラは、オークションよりも、多少高くても保証があるAmazonのほうが安心かと思います。
オリンパス XZ-10


新品はほぼ無理。たまにあっても高い。
中古は運がよければ
1万円台で見つかることもある。
オリンパス TG1/2/5/6

TG-5は新品が4万円前後。TG-6は5万円前後。
TG-2あたりの程度のよい中古
が非常に安く出ていれば狙い目かもしれない。
ニコン P340


新品はほぼ無理。中古も出回っている数が少ない。中古は
安いものは1万円台からあるが、程度のよいものを探すのがかなり難しいかもしれない。
フジ XQ2


数が少ない。程度のいい中古が
2万円台くらいで見つかるかどうか。それ以上なら敢えて買うほどの魅力はない。前モデルXQ1は中古がかなり安く出回っている。XQ2との性能差はほとんどないので、
程度のよさそうな中古のXQ1が1万円前後で出ていたら
、勇気を出して買ってみるのもいいかも。
パナソニック DMC-LX9

新品は7万円台。中古でも5万円台なので、かなりお高い買い物になる。ライバルとなるのはG7X MarkⅡだが、2万円程度価格差があるので、この大きさに我慢できる人はG7X MarkⅡのほうに流れるのではないだろうか。RX100Ⅲとの比較となると微妙なところか。
キヤノン G7X MarkⅡ

新品が5万円台。2019年8月にMarkⅢが発売されるので、今後少しずつ実売価格が下がる可能性あり。RX100キラーとして作られているので、RX100シリーズとの比較になるはず。ライバルのRX100が積層型CMOSになる前のⅢが新品で5万円台後半、積層型になってからのⅣは8万円台、Ⅴは9万円台であることを考えれば、ⅣやⅤと同じセンサーを積んで望遠端が100mm相当にまで伸びているG7X MarkⅡが5万円台というのは、かなりお買い得ともいえる。旧型のG9Xは見た目はまったく同じ、光学系性能も同じだが、MarkⅡになったときに映像エンジンが大幅に改良されていたり、Bluetooth 機能が追加されていたりという性能差がかなりあるので、できるならMarkⅡがほしいところ。旧型は程度のよい中古が2万円ちょいくらいで買えるなら考えたい。
キヤノン G9X MarkⅡ

新品が4万円、中古は3万円前後。センサーはRX100Ⅲと同じ裏面照射型で、G7X MarkⅡの積層型より一つ前の型だが、1型センサーの現行最小モデルがこの値段で買えると思えば安いかもしれない。
★
Canon G9X MarkⅡの実写テスト報告は⇒こちら
ソニー RX100シリーズ


初代機からまだ新品が買えるが、
買うならⅢ以上がほしいところ。RX100Ⅲは新品は5万円台後半、中古でも程度のいいものは4万円台が普通なので、決して安い買い物ではない。
ソニー HX-90V


程度のよい中古が2万円台からかなりの台数出ている。後継機?のHX-99は基本性能がほぼ同じなので、5万円台で購入するほどの魅力を感じない。
で捜してみる
結論:お勧めはHX-90V、TG-5、G9X MarkⅡ
ここにリストしたモデルは、どれも満足がいくものだとは思いますが、価格や撮れる写真の満足度からして、お勧めはHX-90V、TG-5/6、G9X MarkⅡでしょうか。
XZ-10かTG-5かという選択は、望遠端でのレンズの明るさをとるか、強靱さや色味の自然さ、AF性能のよさをとるかで分かれます。
キヤノンとパナに関しては、今までもずっと感じてきたのですが、性能をとるとサイズが大きくなり、小さいモデルはレンズ性能が物足りないというジレンマにどうしても落ち込みます。それでも、今までのパワーショットシリーズやLXシリーズに比べるとデザイン的にかなりスマートになってきたのは歓迎すべきでしょう。パナで最小のLX9はでかくて重いですが、キヤノンのG9Xは頑張って小さくしたのがあっぱれ。マクロ撮影でのAFの合いにくさなども、デジタルテレコンを使いこなしたり、menuの設定を煮詰めたりすることである程度克服できます。画質(特に色味)は同じ1型センサーのRX100Ⅲよりいいかもしれないと思うことがありますし、気軽に楽しみたい人にはベストでしょう。
P340とXQ2は性格が似ていますが、高級感の点でXQ2、画質の点でP340に軍配が上がるでしょうか。XQ2は小ささ、軽さが大きな魅力ですが、マクロや望遠には向いていません。ふわふわっと風景を撮りためるような使い方が向いています。また、G9Xが登場したので、価格さえ折り合えば迷わずG9Xでしょう。
★
Canon G9X MarkⅡの実写テスト報告は⇒こちら
LX9は、レンズの明るさは魅力ですが、大きさと価格がネックです。どうしてもこの性能がほしいなら、ズーム比が伸びているG7X MarkⅡのほうが安く入手できるので、そっちを選ぶ人が多いのでは?
「絶対王者」といわれているRX100シリーズもいいのですが、価格が高いこと、機能を使いこなすのが難しいこと、写真にいまひとつ深みや迫力が感じられないこと、厚みや重さがあって「ポケットサイズ」としてはギリギリの許容範囲であることなどから、私の常用カメラにはなっていません。冷静に他のモデルと比較すれば、RX100シリーズの性能はかなり「神話」化されているような気がします。
しかし、RX100Ⅲ以降のモデルにはファインダーがついていたり、バリアングル液晶が使えたりするので、他のモデルにない長所があり、使い込むに従っていい写真が撮れるようになるという魅力があります。特にバリアングルモニターは威力絶大です。普通にお散歩や旅行に持ち出して、風景や点描などを楽しむのであれば、いちばん頼りになる万能機でしょう。
ある程度明るい場所でピシャッとピントが合ったときの「仕上げのうまさ」は優等生ですし、使い方を覚えれば、どんな場面でも対応でき、大失敗写真になりにくいという強みがあり、その点では信頼性が非常に高いカメラです。
ただ、マクロや望遠をあまり使わない人なら、RX100シリーズの最新版(お高い!)を選ぶより、小型軽量のG9Xでポンポン気軽に撮るというスタイルのほうが幸せになれるかもしれません。G9Xも、設定を煮詰めて使い方を熟知すれば、かなりテクニックを駆使できますので、単なるお気楽コンパクトではありません。
そもそも「ポケットサイズ」という観点から出発したこの考察では、大きさ・重さの上限はXZ-10が限界で、サイズ的にはXQ2、G9X MarkⅡを加えた3モデルしか残らなかったかもしれません。しかし、RX100シリーズの評価があまりにも高いので、RX100シリーズと比較してどうか……という考察をせざるをえませんでした。そうなると、G7X MarkⅡやLX9も入れないと不公平だし……というわけで、候補が膨れあがっていったのでした。
G7X MarkⅡやLX9を考えるなら、Stylus1とG9Xの両刀使いのほうがいいのでは? とも思います。
ガバサク的には暗いレンズ+小さなセンサーに高画素を詰め込んだHX-90Vは外したいところですが、小さいのに720mm相当は、野鳥を撮るなどのチャンスがあるときはとても重宝します。画質はすべてにわたって「まあ、我慢できる程度か」という印象ですが、使い込めばXZ-10と同等の画質でも撮れるものが多いです。ただし、暗いところではほとんど使いものになりません。
最後に、別の視点から考えると、G*XシリーズやRX100シリーズは今なお製造し続けているので、その気になればいつでも最新型が買えます。しかし、
XZ-10やXQ2は今後後継機が出ないでしょうから、今、程度のいいものを手に入れないと、この先、ずっと入手できなくなるかもしれません。
特に
XZ-10は、もっと評価されていいカメラだと断言できます。昆虫やカエルなどを撮る場合、RX100ⅢやG9XよりもXZ-10のほうが撮影が楽で、難しいことをしなくても「感動的な写真」になることが多いと思います。
ただし、小さな草花や昆虫、カエルなどばかり撮っている私は一般のカメラユーザーから見ればかなり特殊なケースでしょうから、そういう写真を撮ることはまずないという人は、私のXZ-10評価を割り引いて読んでください。人物や犬や猫、風景を撮るだけなら、XZ-10はとんでもなく動きの遅い、もっさりとしたカメラにすぎません。
それにしても、ポケットにスッと入るコンパクトデジタルカメラというのは、もはや歴史を終えようとしているのでしょうか。
どれだけ技術が進んでも、「儲からないから作らない」という企業の論理によって、よい商品や作品が世に出ていかない現代。せめて、想像力だけは萎ませないで生きていたいものです。
(2020/10/02 updated)