個性的なクルマはほしいけれど、やはりそうしたクルマは中古でも高価だし、複数台所有する余裕はない。実用第一、コスト第一で考えるしかない……というビンボー生活でも、まだクルマに趣味性を求める楽しみは残されています。それはDIYカスタマイズ。
ストライプテープやステッカーを貼ったりするのは数百円でできますし、エンブレムを加工するなんていう自己満足的な行為の中にも、自分なりの幸福感を見つけられたら、生活が豊かになります。そうした細工にこそセンスが問われますので、楽しく悩みましょう。
自分がクルマに求める美学を見極める
人がクルマに求める趣味性は多種多様です。美しさ、かっこよさの感じ方も人によってまったく違います。
速さこそ命だ、ランエボだハチロクだという人もいれば、シャコタン改造はデフォルトだという人もいます。
しかし、クルマに求める価値観や趣味性は歳を重ねるにつれ変化します。還暦を超えても「竹槍仕様」がカッコいいと思う人はまずいないでしょう。
思えば、私のクルマへの価値観は子どもの頃からちょっと変わっていたかもしれません。
多くの子供は流線型のレーシングカーのようなものをカッコいいと感じるわけですが、当時私が描いた未来想像図のような絵の中には、今でいうミニバンのような形のクルマばかり出てきます。
当時、自家用車といえばセダン型があたりまえでしたが、子供心にもセダン型のクルマを見て「これじゃあ前と後ろの出っ張り部分が無駄じゃないか。この部分をなぜ室内空間にしないのだ?」と思っていたのです。ましてやスポーツカーなんて、荷物が全然積めないじゃないか、何のためのクルマなんだ……と。
箱型の頑丈なクルマでオフロードや林道を走りたいという気持ちが強まったのは30代の頃で、パジェロが発売されたときは心動かされました。
いすゞのビークロスが登場したときは「これだ!」と思ったものです。なんとか手に入らないだろうかと真剣に悩んだりもしましたが、300万円というお金をクルマにつぎ込むことなど到底できるわけもなく、妻からも「ああいうのは重くて大きくて、周囲に迷惑なだけ」と反対されたので諦めました。
いすゞ ビークロス(1997-2000年生産)。当時はこのデザインに感動したものだが、今見るとそうでもない……?(画像はカーセンサーネットより)
今はもうこの手のクルマ(大型のクロカンタイプ)には興味が湧きません。美意識や価値観が変わったのですね。
テレビで、芸能人のクルマ遍歴を紹介する番組があり、たまたま女優の樹木希林さんの回を見たのですが、嗜好があまりにも私と似ているので驚きました。
愛車選びは「顔が命」と明言する樹木希林さん(「おぎやはぎの愛車遍歴」というBS日テレの番組より)
希林さんは「愛車選びは顔が命」と言います。私もまさにそうです。ブスなクルマ、厚化粧でマヌケな顔のクルマは、どんなに性能がよいと言われても所有する気になれません。
希林さんが美しい、カッコいい、味があると思う「顔」は、基本、丸目(ヘッドライトが○型)であるという点でも、私の美意識と同じです。
↑見事なまでにすべて「丸目」のクルマ。オリジンは私も本気でほしいと思った時期があったが、中古でも価格がとんでもなくて、即、諦めた。所詮、身の丈に合っていなかったのだろう。
このように、自分のクルマに対する美意識や価値観をしっかり認識することから始めると、行動基準が明確になり、後悔したり、不満を引きずったりすることが減るかもしれません。
理想と現実の差を埋める
私がX-90を手放して軽自動車に買い換える決断をしたのは、日光に連れてきたふたりの親(養父と義母)の介護のためでした。介護施設や病院との往復が増え、燃費が悪く、2シーターのX-90でほとんど歩けない老人を送り迎えするのが、経済的、物理的に難しくなってきたからです。
しかし、個性の塊のようなX-90と入れ替えるのですから、実用性を重視しつつも、自分が愛せる形を求めたくなります。
軽自動車にすることは決めていましたが、デザインにはこだわりたいと思いました。
丸目でレトロなデザイン……ピッタリなのはミラジーノですが、このデザインに惚れ込む人が多いため、ミラジーノは古くてもなかなか値崩れしないのです。
初代は1999年-2004年の生産ですから、2004年モデルでもすでに15年落ちで、さすがにちょっと不安です。
その後の2代目(2004年-2009年生産)はデザインがかなりモダンになってしまい、お値段も高め。
さらに、本格4WDのX-90の代わりとするなら、4WD仕様の軽にしたかったのですが、これまたたまかずが少ない。
ミラジーノ以外で、丸目でレトロな愛らしいデザインの軽というと、↓この3車種が候補になります。
上からダイハツココア、スズキアルトラパン、ダイハツミラジーノ(2代目)
この3車種の4WD仕様で走行距離10万km以下、諸費用を入れた総額30万円以下という条件で検索して見つけたのが、今のラパンでした。
丸目でレトロなデザインといえば、代表はルノー4(カトル)でしょう。
↑ ルノー4 このイメージの軽を捜すとラパンに行き着く?
お金があって、いくらトラブルがあっても他に高性能で安定したメインカーがあるという贅沢な生活ができるならいいのですが、もちろんビンボー生活ではそれは無理です。
そこで、このイメージにいちばん近くて、しかもデザインのお洒落さと合理性を両立させた軽なら、所有する動機になるし、自分なりに満足もできそうだ、ということでラパンに決めたわけです。
↑ 四角いボディながらまとまり感があってレトロなお洒落デザイン?
外見を安くDIYカスタマイズ
このラパンは後部座席横のピラーで仕切られた細い窓や、後部ハッチ回りのデザイン(特にリアライトカバー)などにルノー4的なセンスが光っていて、なかなかの力作だと思いますが、やはりどこか貧乏くさく、寂しい印象もあります。
最初はピンストライプを入れたり、ナンバープレートにウレタンゴムの着色フレームをつけたり、うさちゃんエンブレムを追加したりといったちょこちょこした追加で楽しみました。
↑ ナンバープレートに焦げ茶のフレームを追加した。
↑↓ プレート留めビスにカバーをつけた。
↑フロントグリルのうさちゃんエンブレムが目立たないので、ボディ同色ペイントを塗って目立つようにした↓
↑ フロントが微妙にクッキリ化粧になった。
↑ うさちゃんエンブレムをAmazonで探して、給油口の蓋につけた。
↑これはプジョー307SWにつけている赤のピンストライプ。こうした化粧は簡単だし、いつでもきれいに剥がして元に戻せる。
↑ サイドにかなり目立つ傷があったので、タッチペイントで修復したが……↓
↑ それでも気になったので、いっそ……と、100円ショップで売っていた壁紙補修シールを切り抜いて飛びウサギをあしらった。
ついでに側面の横一線にシルバーグレーのピンストライプを追加。
下部にはその壁紙用テープをそのまま貼ってアクセントにしたが、これは妻から不評で、後に剥がした。
↑ 鉄のホイールは錆がひどかったので黒のスプレーで塗った上で、こんなホイールカバーを取り付けた。 ↓
最小費用でヘッドライトを丸目に整形
それでも、ヘッドライトが完全な丸目ではないことがとても残念で、これをなんとか丸目にできないかと、ヘッドライトカバーを捜したりしたのですが、いいのがみつかりません。ネットで検索すると、同じことを考えている人はたくさんいて、
角目のラパンを丸目に変更した記録が多数出てきます。その多くは、ライトごと交換したり、フロントグリルを交換したりしているのですが、どれも大がかりで、お金も万単位でかかります。せっかく17万円という安い出費で手に入れたのですから、万単位のお金を化粧にかけるのは「敗北」を意味する気がするし、60代のジジイになった今、自力で作業する気力も自信もありません。
1年近く悩み抜いた末にたどり着いた答えが、レザー張り椅子の補修用粘着シートを使って四角いレンズを丸く縁取る、という方法でした。
うまくいくのか、耐久性はどうか、不安だらけでしたが、思ったよりはるかにうまくいきました。
↑ 購入直後のラパン。このライトを完全な丸目にしたい……
↑ 1年後、Amazonで見つけた焦げ茶のレザーカッティングシート(椅子の補修用)を取り寄せて、ヘッドライトカバーの形に合わせてカット。
↑ レンズの上からレザーシートを貼り付けた。粘着力は抜群で、思ったよりうまくいった。 ↓
↑ これでパンダ風の丸目ラパンが完成。このデザインのラパンは世界に1台だけだろうし、これなら車検も問題ない。
この化粧を施してすでに1年以上が経過。雨ざらしの状態ですが、剥がれたり皺がよったり色褪せたりする気配はまったくありません。レザーシートの万能性恐るべしです。
ベースグレードの装備をアップグレードさせる
さて、購入したラパンはGというベースグレード(いちばん安いモデル)で、様々な装備が省かれています。
しかし、これを安い費用で上級グレードに近づけることは簡単です。
アルミホイールは後から買ったほうが圧倒的に安い
まず、タイヤホイールはアルミではなく鉄ですが、これはホイールカバーをつけることでとりあえずは見栄えがよくなります。今ついているタイヤが摩耗して交換時期になったら、アルミ付きのインチアップタイヤセットを買うつもりです。安いアジアンタイヤがついたアルミホイール4本セットは、タイヤの組み替え工賃がかからないので、国産タイヤを4本買って入れ替えるのと変わらない金額、場合によってはもっと安く済みます。
アルミホイールが目的なら、ヤフオクなどで4本セット数千円くらいのものがゴロゴロ見つかりますが、程度のいいタイヤが最初からついていない場合、タイヤの組み替え作業は業者にやってもらうしかないので、その分の費用も計算に入れる必要があります。
我が家のラパンは、購入時にまだ十分に凸があるスタッドレスタイヤをつけたアルミホイール4本組を5000円でオマケしてもらいましたが、このホイール、家に持ってきてからよく見るとかなりの傷がついていました。
これはアルミホイール専用の補修パテやペイントでかなりきれいになります。
↑ 大きな傷がついていたアルミホイール
↑ Amazonでアルミホイール補修用のペイントとパテを購入。
↑ 補修完了後。傷はほとんど分からなくなった。
ヘッドライト、車幅灯、室内灯などはすべてLEDに変更しました。車内灯は印象としては10倍くらい明るくなった感じです。LED化で、バッテリーの消費電力も低く抑えられます。
ついていない装備をつける(1)時計
廉価版グレードのラパンの運転席に座ると、ダッシュボードに目隠し蓋がいろいろついているのが目につきます。まずはメーター類の横にある丸い大きなキャップ。
↑ この目隠し蓋は何?
これは上級グレードでは、時計またはタコメーターがついている穴を塞いだものです。
で、この蓋の裏側には、時計・タコメーター共用の配線がそのまま引かれています。組み立て時の手間を少しでも省くために、
配線は全グレード共通であらかじめすべての装備用のものが施されているのです。
つまり、この目隠し蓋を外せばそこには時計・タコメーター用の配線がきていて、時計かタコメーターを取り付けられるわけです。
Amazonやヤフオクで検索すると、ラパン用の時計とタコメーターの中古がたくさん出品されていますので、どちらか好きなほうを取り寄せてつけてしまえばグレードが上がるわけです。
私はちょっと悩んだ末に、時計のほうを選びました。タコメーターがメーターパネル内に収まっていないのはかっこわるいし、時計のほうがずっと実用性が高いと思ったからです。
取り付けは蓋を外して入れ替えるだけなので簡単。ただし、蓋の裏についているコードを落としてしまうと引き出すのが大変なので、それだけは慎重に行います。
↑ ヤフオクで取り寄せたラパン用の時計。1000円くらいだった。
↑ 取り付けは簡単だが、なんと、夜間用の照明電球が切れていた。
ちなみに、トリップメーターのリセットノブにつけたうさちゃんキャップも後から購入したお遊び品。
↑ 仕方なく、規格を調べて電球を取り寄せ。数百円の出費。
↑ 電球を交換するついでに、時計の枠の色が合わないので、黒く塗ることにした。
↑ 面倒くさいのでマジックインキで……
↑ こんな感じでいいでしょ。
↑ バッチリ!
ついていない装備をつける(2)ツイーター
もう一つは、ダッシュボード上の両端にある蓋。
↑ この蓋は何?
ここはツイーター(高音専用スピーカー)がつく穴です。
上位グレードにはここにツイーターがついているのですが、ベースグレードだと省略されているため、オーディオの音にキレがないのですね。
メインのスピーカーは全帯域のスピーカーで、おそらく全グレード共通だと思うので、ツイーターを追加すれば、上位グレードと同じ音で再生できるはずです。
これも時計やタコメーター同様、ヤフオクやAmazonなどで中古品が安く売られています。取り寄せて交換すればOK。
↑ 取り寄せたツイーター。数百円の出費。
蓋を外すと、裏に、時計のときと同様、配線が来ているので、これを中に落としてしまわないよう、セロテープで固定してから慎重に外す。
↑ これを穴の中に落としてしまうと大変。ダッシュボード全体を外さないと二度と引っ張り出せなくなる。
無事、ツイーターがつい~た~!
↑ これで下級市民から上級グレードの仲間入り ↓
オーディオ・ナビ・ドライブレコーダー・バックアイカメラなどは自分でつける
グレードの差で装着品を変えているものとしては、オーディオ、カーナビ、ドライブレコーダー、バックアイカメラなどがあります。新車の場合は販売店取り付けオプションになっているものもありますが、これらを全部メーカー純正品でつけようとすると大変な金額になります。
こうしたオプション的な装備品は、自分で取り付ければ大幅なコストカットができます。
オーディオ
最近のクルマは高級グレードでもオーディオレスで設定して、オプションで選ばせる方式が出てきましたが、中古車の場合、ベースグレードモデルでもラジオくらいはついています。
実は、オーディオはこれで十分なのです。
今はCDというものも時代遅れで、SDカードにMP3音楽ファイルなどを大量に入れておけば済んでしまいます。SDカードに入れたMP3ファイルをFMトランスミッターで飛ばしてFMラジオで受信・再生させるという方法がいちばんお金がかかりません。配線も必要なく、予備電源ソケットに突っ込むだけ。
このタイプのFMトランスミッターはAmazonなどで1000円台から売られています。
性能もどんどん進化し、現在のものは、音楽再生がBluetooth5.0(スマホなどから着信したものをFMでカーラジオで再生)、TFカード(マイクロSDカード)、USBメモリのどれでも使え、スマホとBluetooth接続させるとハンズフリー通話やSiriやGoogle Assistantが呼び出せるというものが主流になっています。
上記すべての機能を搭載。しかも、WAVやFlacなどの無圧縮ファイルも再生可能(カーオーディオでそこまでする必要はまったくないと思うが)。
で1499円。
↑ オーディオはベーシック仕様のカーラジオのままで十分。再生音質はツイーターを追加したのでグンとよくなった。
↑ シガーソケット(今の車はユーティリティソケットなどと呼ぶ)に差し込むだけで、SDカードやスマホに入れた音楽ファイルをカーラジオで再生できる。充電用USBソケットが付いているので、スマホやタブレットの急速充電もできる。
ナビも、今はスマホのGPS機能で済んでしまうため、昔のようにわざわざオーディオとナビを一体化させた高価なユニットを運転席にはめ込む必要はなくなりました。スマホスタンド(100円ショップでも売っています)でスマホをダッシュボードに取り付けて、案内音声はカーラジオから出せばいいわけです。
ドライブレコーダー
いざというときのためにドライブレコーダーは絶対に取り付けたほうがいいですが、これも、メーカーやディーラーに頼むと何万円も取られます。
私は中国製の1万円以下のバックミラー一体型のタイプを取り付けました。これはカメラがフロントだけでなくリアもついていて、前方・後方両方の動画が同時に記録されます。後ろから煽られたり、無理な追い越しをされた場合も、後方からの画像がしっかり記録されるので安心です。
バックミラーがモニター画面を兼ねていて、バックカメラはギアをバックに入れたときは自動的に後方の画像がミラーに映し出されます。
このタイプの製品もどんどん進化していて、最新のモデルは
GPS搭載で場所や正確な時間、走行速度を記録したり、車線逸脱や前後方衝突警告音を発するものも。で1万円以下から売られています。
我が家のラパンに取り付けたのはもっと古いタイプですが、十分に役に立っています。
↑ 既存のバックミラーに被せるタイプ。このカメラで前方の映像を記録。
↑ バックカメラはこの位置に取り付けた。
↑ ギアをバックに入れると自動的に後方の映像を映し出す。
このように、オプション的な装備品は後から自分で好みのもの(値段も含めて)を選んでDIYで取り付ければいいのです。
クルマ生活に限らず、幸せビンボー生活ではDIYを楽しむ精神が不可欠です。中には、運転よりもこうした車いじりのほうが楽しいという人もいるでしょう。それでいいのです。
現在の我が家のラパン。室内灯の電球は明るいLEDに交換。上級グレードに装備されている時計とツイーターを取り寄せて取り付け、前後カメラのドラレコ、FMトランスミッターによるSDカードオーディオ再生環境を実現。ステアリングカバーは1000円程度のものをときどき交換して気分転換している。