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幸せビンボー術 27

ビンボーでも楽しめる、ウィズコロナ時代の「旅行」


コロナ時代だからこそ「旅行」のあり方を再考する

コロナ禍が続き「不要不急の外出は控えよ」と命じられるようになりました。一方ではGoToトラベルキャンペーンに気の遠くなるような税金が投入され、旅行に行きましょうと煽る政策がまかり通るというデタラメな時代。
こんなときだからこそ、旅行の楽しみ方を一から考え直してみましょう。

パック旅行、セット旅行という「商品」

2020年夏、コロナ禍の日本で「GoToトラベル」キャンペーンという信じがたい政策が強行されました。
ウイルスを拡散させないよう「不要不急の外出は極力控えよ」と呼びかける一方で、「旅行に行きましょう。今なら国が旅行費の一部を負担しますよ」という異常さ。
しかも内容をよく調べると、 ……という、これまた想像を超えて無茶苦茶なものでした。
要するに、基本、旅行業者を通さない個人旅行は蚊帳の外だったわけです。
「三密」を避けてなるべく人と接触しないで旅行をするというなら、個人や夫婦などで車を使ったささやかな旅行などをイメージしますが、そういうものは対象外。逆に、旅行会社を通した団体旅行やパック旅行は適用されるというのです。
これは、コロナ禍で客が減って経営難になった宿泊業や観光業を支援するという名目で立ち上げられた政策でしたが、宿泊業者にとっても混乱・困惑だらけのものでした。そもそも、このキャンペーンが適用される登録業者になっていなければなんの恩恵も受けられません。
また、宿泊客が最大割引額1万4000円を得るためには4万円以上の宿泊費でなければならないため、どうせなら普段泊まれないような高い宿に泊まりたいという人が増えて、普段から苦労して安い料金を設定している旅館や民宿などは、むしろこのキャンペーンのおかげで客が減ってしまいました。つまり、旅行代理店や高級ホテル・旅館などには旨みがあっても、老夫婦が細々とやっているような民宿規模の小さな宿泊業者、我々ビンボーさんにとってありがたい安い宿は、コロナに加えてこのキャンペーンでさらに経営が圧迫され、どんどん閉業に追い込まれてしまったのです。
一方で、割引適用の宿泊数に制限はないので、例えば旅行業者を通じて夫婦で一泊4万円以上する旅行を10泊分するならば、旅行会社に支払う金額のうち最大で28万円割引きされます。
簡単に言えば、GoToトラベルは、「お金に余裕のある人」の「セット旅行」を援助します、という政策だったわけです。

私たちビンボーさんとしては、コロナとは関係なく、もとよりそういう金額レベル、形態の旅行とは無縁です。
ちなみに私は今まで65年の人生において、旅行代理店を通じての旅行というものは一度もしたことはありません。
それはもう、旅行というよりは、宿泊と食事と交通費がセットになった「商品」を購入する「買い物」だと思うからです。
ましてや「○○ツアー」的な団体でのパック旅行などは、知らない人と行く学校の遠足みたいなもので、自腹で時間と場所を拘束されるようなものではないでしょうか。
旅の醍醐味は「何が起きるか分からない」というハプニング性です。宿泊先くらいは決めたとしても、その他は行く先々で臨機応変に組み立てていかなければ楽しくありません。

山奥でポツンとやっているラーメン屋。こういうところを見つける楽しみこそが「旅行」の醍醐味では?

なぜ人が集まる場所に行くのか?

私が旅行を計画するとき、最初に考えるのは「人がいっぱいいそうな場所は避ける」ということです。わざわざ遠くまで移動した先が、人がワイワイ集まる場所だったらガックリきます。有名な場所だから一応チェックしておこうか、と思って行ってみても、人混みを見ただけで「ここはパスしようか」となったこともよくあります。

結果、経験を重ねるにつれ、いわゆる「観光地」「観光スポット」「人気施設」はまっ先に避けるようになりました。
コロナ禍が続いて、なるべく人混みは避けようという時代、こうした発想はますます大切になるでしょう。

有名な場所でも行ってみたいというときは、極力人が集まりそうもない日を選びます。
時期としては、ゴールデンウィーク直後の5月後半から6月にかけての平日などは狙い目です。連休疲れで人出が減っている上、昼間の時間が長いので、日帰りでもたっぷり楽しめます。

また、有名な観光地でも、人が集まるスポットを避けて、すぐそばの穴場を訪れれば、渋滞や人混みを避けられ、景色などもゆったり堪能できます。 私は日光市に住んでいるので熟知していますが、桜や紅葉シーズンにいろは坂の大渋滞に入っていく人の気がしれません。同じ日、同じ時間帯でも、いろは坂の手前で西方向の足尾や東方向の霧降、栗山方面に向かうだけで、混雑は一気に緩和され、ゆったりと楽しい時間を過ごせるでしょう。

「不要不急の外出は避ける」と言われますが、要するに「不特定多数の人と接近することを避ける」ということであり、外出そのものは感染拡大とは関係ありません。一人や家族単位で人のいない場所に遊びに行く「旅行」なら、不特定多数の人と接することはないので、感染拡大とは無縁です。
むしろ買い物や通勤、通学といった日常生活のほうがはるかに感染の可能性は高いでしょう。

なぜわざわざ人が集まる場所に桜を見に行くのか理解できない。美しい花を咲かせる桜はどこにでもあるのに……。

旅行というと、いわゆる「観光地」「有名スポット」「娯楽施設」しか頭に浮かばないというのであれば、それは普段から趣味がない、主体的な興味を持たない生活をしているからだと思います。
もちろん、大きなイベントへの参加、スポーツ観戦といった、人混みに出かけることが趣味だという人もいるでしょうが、高齢になっても数万人のスタジアムで大声で選手を応援するとか、数千人のコンサートホールで踊りながらステージに向かって大声をあげるといった「趣味」しか持たないという人は少ないのではないかと思います。

観光地として有名な「日光」にも、穴場的な場所はたくさんある。



観光地として超有名な日光だが、地元住民が中心にやっている「キリフリ谷の芸術祭」というイベントは地元の人でも知っている人は少ない。ぐるっと回っても、観光客はおろか、地元住民にさえ一度も会わなかった。


私は20代の頃から神社を訪ねて狛犬の写真を撮るのを趣味としていましたから、人混みとは無縁の旅行ばかりでした。
ビンボーさんなので、高級旅館などともまったく無縁でした。
無人駅を訪ねる旅とか、知られていない滝めぐりとか、潰れそうな遊園地・動物園を巡る旅とか、人混みとは無縁の旅行テーマはいくらでもありますし、そのほうが、他人が計画したパック旅行的なものよりずっと楽しいと思うのですが……。

乗り物はすべて50円、という遊園地。こんなところで半日のんびりしている時間は、ディズニーリゾートで何時間も行列に並ぶより贅沢かもしれない。

観光スポットが見あたらないような地方都市や田舎町でも、地元の小さなスーパーに入ると、その地方にしかないものが売られていたり、老夫婦が細々とやっている定食屋でのんびりと世間話をしたり、寂れた雑貨屋で貴重なレトログッズが見つかったり、いろいろな発見があるものです。

老舗のお煎餅屋さんのご主人とミニ歴史トーク↑

↑煎餅工場併設の店で自分用にお土産を買う


明治時代から110年続くという雑貨店にあった自動車型鉛筆削り。箱付きで600円!


「名物にうまいものなし」と言われますが、観光客向けに作られた施設や土産物には「本物」がありません。知らない文化や風俗は、厚化粧していない素顔の風景の中にあります。それを見つけたときの喜び、楽しさこそが、「非日常」を求めた旅行の醍醐味でしょう。


シモツケコウホネは世界で棲息地が栃木県内の数か所しか見つかっていない希少種。



↑パッと見、とても「店」とは思えないお肉屋さんは、揚げ物があっという間に売り切れる人気店。

↑山県有朋記念館の庭にいる中国獅子は、日清戦争のときに日本の陸軍が中国から持って来てしまったもの。閉ざされた歴史を紐解く旅は一生心に残る。

近場でも十分楽しめる

私たち夫婦は、歳を取って元気がなくなったせいもありますが、今は猫がいるので、宿泊を伴う旅行ができなくなりました。
でも、それなりに「遠出」は楽しんでいます。
車でゆったり日帰りできる限界というと家から半径150kmくらい。高速道路を使えば200kmくらいまででしょうか。
日光の自宅からですと、東京は道のりでだいたい150kmです。福島あたりで170kmくらい。西方向だと長野県あたりまで。
宮城以北や関西方面は無理ですが、それでもかなりの広範囲で日帰りはできます。

↑↓「乞食の吉弥」と呼ばれた天才石工が彫った巨大な仁王像を見るために秩父へ。このときも、霊場を一回りする間、誰一人として会わなかった。



↑↓不思議な石像群を見るために修那羅山へ。日帰りでもなんとか長野県あたりまでは行ける。


もっとずっと近い場所、ほとんど「ご近所」と呼べるような範囲でも、まだまだ知らない場所、「え? こんなのがあったのか!」というような発見ができる面白スポットはいくらでもあります。
移動手段を考える」の章でも触れましたが、車の後部に折りたたみ式自転車や折りたたみ式電動自転車を積んで遠出し、適当な町を自転車でゆっくり散策するといった「旅行」もあります。


ご近所の住宅街の中にあった水木金曜日の夕方3時間しかやっていない焼き鳥屋↑と、小さなショーケース一つだけの惣菜屋さん↓ こういうのを見つけるのも「小さな旅」?



↑↓地元を隅々まで探索して「石仏マップ」を作る、などというのも「趣味」としては上品で楽しそう。


地方都市の美術館・博物館をじっくり見て回るのもお勧め。

そんな風に、コロナ禍であろうが、ビンボーであろうが、猫がいようが、工夫次第でいくらでも旅行は楽しめるのです。
与えられた娯楽、行楽という「商品」を消費することだけが「レジャー」ではありません。
ある意味、旅行の楽しみをいちばん知っているのが「幸せビンボーさん」たちかもしれません。
ビンボーでもコロナでも、そんな幸せを重ねていきたいものです。



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カエルやらカタカムナやら…… 森水学園第三分校

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