セカンド・アムール
この曲は僕のデビュー作『プラネタリウムの空』の付属CDに収められている。
歌っているのは長屋幹恵(正確な字は失念。美紀枝とかだったかもしれない)さんというダンサー。ダンサーでは食えないから、歌のほうにも挑戦したいとかで、友達の紹介でやってきた。
ちょうど『プラネタリウムの空』をやっていたので、1曲歌ってもらうことにした。
やってもらってびっくりした。うまい。難曲なのに、楽に歌いこなす。
この曲はそのとき、どこにどう使うという予定もなく、僕が実験のために録音したものだった。ノーギャラだよという話で来てもらったのだが、ノーギャラではやはり悪いと思い、ささやかなギャラを郵送した。領収書を送り返してくれるように頼んだのだが、無視されてしまった。
彼女とはそれっきりで、音信不通になった。噂ではその後アメリカへ1年くらい渡って歌の修行を積んだとか。
ずっと後になってから、新聞で「CM音楽界に天才シンガー現る」というような記事が載っているのを見つけた。彼女のことだった。七色の声と異名をとり、どんな歌でも歌いこなすということだった。プロとして大成功したらしい。
彼女に「芸名はどうする?」と訊いたところ、MIKIEでいくというようなことを言っていた。その後、MIKIEでいいのかと確認する間もなく連絡不能になってしまったので、今、どんな名前で、どんな場所で活動しているのかも分からない。新聞記事には別の芸名で紹介されていた気がするのだが……。
曲のことも書いておこう。
この頃、日本語の歌詞に見切りをつけ始めていた。どうしてもリズムがダサイし、乗れない。かといって、サビだけ突然英語になるノー天気なポップスも恥ずかしい。
日本人が洋楽を楽しんでいるとき、どうせ歌詞の内容なんて分かっていない場合が多い。だったら、単に音が並んでいればいいじゃないか……。いっそアイヌ語で作るなんてのはどうだ? などなど、いろいろ考えていた時期だった。
この曲を聴いた人の多くは、フランス語と英語のチャンポンだと思っているが、そうではない。ハナモゲラと英語のチャンポンである。
そういうインチキな歌詞を堂々と歌いこなしたMIKIEくんは、やっぱり大した実力だ。
今回、バックをまったく入れ替えたので『プラネタリウムの空』収録版とはかなり違う印象になっている。冒頭でボン……と鳴っている太鼓はチャンゴ。
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