たくき よしみつ の デジタルストレスキング デジタルストレス王

2003年4月11日執筆  2003年4月14日掲載

公選法ストレス

この文章が掲載される4月15日には、統一地方選第一弾の投開票が終わっている。
選挙期間になると、「普通の暮らし」に暴力的な邪魔が入る。言うまでもなく、選挙カーの騒音や電話での投票依頼のことだ。

僕が住民票を置いている川崎市では、13日に県知事選、県会議員選、市会議員選がまとめて行われた(これを書いているのは11日なので、まだだが)。
どういうわけか、いつも知事<県議<市議の順に「投票したい」候補者がいない。
県知事選は、過去何度も事実上無投票に近い選挙(全党相乗り候補対泡沫候補)が行われ、選択する自由さえなかった。
今回も積極的に投票したい候補者はいない。消去法で、気が進まないながらも一人残す。しかし、その候補者の選挙公報には抽象的なことしか書いていない。「公平と善良」だの「希望と未来」だの、投票者を馬鹿にしているのかと言いたくなる。
それでも棄権はしたくない。腹が立つのをぐっとこらえて、仕方なくこの候補者に投票しようかと思っていたところ、かみさんに昔の同級生から30年ぶりに電話がかかってきて「○○さんをよろしく」ときた。これですっかり嫌になった。

県議選もそうだ。こちらも「消去法」で投票しようかと思っていた候補者の事務所から電話がかかってきた。同じ大学の出身だということでリストアップされているらしいのだが、そうした運動そのものがマイナス効果になるということが、なぜ分からないのだろうか。
電話がなければ間違いなくその候補者に投票していただろうに、その電話のせいで百歩くらい後戻りしてしまった。

しかしまあ、全体的には効果があるから電話をするのだろうなあ。
宣伝カーの連呼や電話攻勢で投票を決めるような人たちが政治地図を作っているのだと思うと、将来に対する希望がしぼんでしまう。
何を置いてもまっさきにしなければならないことは、公職選挙法の改正だ。
  1. インターネットのWEBサイトにおける運動をすべて解禁する。解禁するだけでなく、候補者に、選挙公約を掲げたWEBページを作ることを義務づける。
  2. 電話・戸別訪問による選挙運動を無条件ですべて禁止する。
  3. 街頭へのポスター掲載を一切禁止する。
  4. 宣伝カーを全面禁止する。
これだけで「選挙ストレス」は相当解消されるだろう。

ある衆議院議員のWEBサイトには「白いページ」と「黄色いページ」というのがある。
白いページは、文字通り白紙のページ。文字情報が一切なく、音声だけが流れてくる。
「公職選挙法では、ホームページをビラと同じとして禁止しています。しかし、音声だけのホームページは合法です。だからこのホームページは合法です」
というメッセージが流れてくる。
黄色いページは、同じように文字情報がないが、背景が黄色。そこからはこんなメッセージが流れてくる。
「この黄色のホームページは音声だけですが、違反なんです。なぜか? 黄色は私のシンボルカラーだから、いけないんだそうです。こんな不思議な公職選挙法をぜひ改正して、ネット選挙を解禁したいと思います。○○にご支援をおねがいいたします」

国会議員にこんなパフォーマンスまでさせてしまう公職選挙法とは一体なんなのか?

ある町の選挙管理委員会のサイトには、このように書かれている。

 近年、インタ―ネットが普及しています。インターネットを使って選挙運動することはできませんが、選挙運動にあたらない純粋な政治活動としてなら使用することができます。
  1.  公職選挙法では、文書図画による選挙運動は法律で認められた手段(選挙用ポスターや葉書など)以外は一切使用できないと包括的に規制されています。
  2.  パソコンのディスプレイに表示される文字等は、公職選挙法に規定する文書又は図画に該当すると解されているため、選挙運動に使用することはできないこととなっています。
  3.  インターネットによる選挙運動は、上記のとおり禁止されていますが、純粋な政治活動として使用することは基本的に制限されていませんので、立候補予定者や政党などがホームページを開設し、選挙運動性のない政見等を載せることは可能です。
  4.  ただし、たとえそのような純粋な政治活動用の文書図画であっても、現職の政治家や立候補予定者及び後援団体の政治活動のための掲示(画面に表示された内容を一定の場所に揚げて不特定の人に見えるようにすること等をいいます)するものについては、公職選挙法の規制を受けます。
  5.  なお、純粋な政治活動として使用するホームページであっても、選挙運動期間中に開設または書き換えすることは、選挙運動の禁止を免れる目的と認められる場合には公職選挙法違反となります。
  6.  また、そのように認められない場合であっても、政党その他の政治活動を行う団体が開設または書き換えをするホームページに、その選挙区の特定候補者の氏名または氏名類推事項が記載されている場合には公職選挙法違反となります。
  7.  立候補に向けての決意などは、選挙運動性のある文言とされ違反となります。

これをきちんと理解できる人がどれだけいるだろうか?

「選挙運動性のない政見」とはなんなのか?
東京都の選挙管理委員会のWEBサイトには、こう書いてある



選挙運動と政治活動の違いは?

 政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。
 ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のように解釈できます。

【選挙運動】
 特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に投票行為を勧めること。

【政治活動】
 政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。


……目眩がする。
そもそも、政治家になろうとする人間にとって、選挙に当選することが政治活動の第一歩ではないのか? どんな理想を掲げても、当選しない限りは政治家として活動ができないのだ。「政治活動から選挙運動にわたる行為を除く」ことなどできるはずがない。できるというのなら、それこそが欺瞞であり、そういうことを平気で言うこと自体が、政治腐敗の最たるものだろう。
あるいは、「選挙運動とは、理念などない、言葉の暴力、行動の押しつけ・買収行為である」という思い込みから生まれているのだろう。つまり、こうした選挙法を作った人たちの精神がいかに貧しいかを如実に暴露している。

こんな馬鹿げたことをやっている国。その国でやっている政治。その政治を行う者を選ぶ選挙……。ああ、哀しい。情けない。
それでも気を取り直し、「今よりはましになってほしい」という願いを込めて、消去法で候補者を決めようとしているときにかかってくる「よろしくお願いします」電話と外から否応なく聞こえてくる候補者名の連呼。
これ以上のストレスがあるだろうか?

まともな選挙をするために、さらに明確な改革案を。
  1. 候補者は公約を含め、自分の理念や政策を明示したWEBサイトを持たなければならない。(視覚障碍者用に音声バージョンも用意する)
  2. 投票者は、媒体がなんであるかにかかわらず、必ず候補者の公約・政策理念を知った上で投票しなければならない。(投票用紙に「この候補者の公約を読みました」というチェックボックスを設けて、そこにチェックを入れてない投票は無効にしたらどうか)
「選挙運動」とは、自分の理念や政策を知ってもらい、それを投票者に約束すること以外のなにものでもない。
それ以外の「運動」(連呼による「すり込み」、金銭・サービスによる買収、地縁・血縁・その他あらゆる縁故関係による情念的囲い込み)はすべて違法である。

こうした認識が徹底すれば、馬鹿げた法律は即座になくなるはずだ。



弘前八幡宮前の狛犬
■妙に「犬顔」の狛犬
(弘前八幡宮の前の道・青森県弘前市八幡町
・石工:山内三次郎・建立年:明治32(1899)年8月15日)
(c)http://komainu.net



  目次へ目次へ     次のコラムへ次のコラムへ

★タヌパック音楽館は、こちら
タヌパックブックス
★狛犬ネットは、こちら
     目次へ戻る(takuki.com のHOMEへ)


タヌパック書店