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 第26回 異体字転



異体字とは何か?

この回の原稿校正をしているとき、編集部と「異体字」の定義について改めて話し合いました。
そもそも「異体字」とはなんでしょう?
私は、「龍」に対して「竜」、あるいはその逆のように、同じ漢字でありながら字形が違っているもの、という解釈をしていました。ですから「竜」は「龍」の異体字である……という言い方もできると思っていたのですが、編集部によるとそうではないと言うのです。
大辞林ではこう定義されています。

異体字→異体文字
異体字の定義(大辞林)


まず、異体字は漢字だけではなく、仮名文字にもあるということ。次に、異体字は「標準的な字体」以外の文字を言うのであり、相互の関係を表す言葉ではない、というわけです。
では、「標準的な字体」とはなんでしょうか?
「龍」と「竜」は、どちらが標準的な字体なのでしょう?
この定義ができない以上、「標準的な字体以外のもの」という定義も成り立ちませんね。


正字・略字・俗字

「國」と「国」は同じ字です。もともとは「國」と書いていたものを、1949年に「当用漢字字体表」というものが公示され、「國」は「国」と書く、と決められてから定着しました。
当用漢字字体表は、その3年前に公布された「当用漢字表」1850字について字形を定めたものですが、当用漢字外の漢字については触れていません。
当初、お上は、今後、漢字はすべて当用漢字内でまかなうという方針だったため、当用漢字表にない漢字の字形を定義すること自体、政策矛盾だと思ったのかもしれません。
しかし、日本の国民はそれほど単純にはこの政策に従いませんでした。当用漢字に決められた漢字については、新しい字形(一般に略字体とか新字体などと呼ばれます)を用いましたが、それ以外の漢字も依然として使い続けました。
その際、当用漢字以外の漢字は、「字体表」が公布されていないわけですから、従来通りの字体で使いました。
「國」が「国」となっても、「掴」という字の旁(つくり=漢字構成パーツの右の部分)は、従来通り「國」のままでした。
活字がそうでしたから、あらゆる印刷物で、当用漢字以外の漢字については従来の字形のまま使われました。これを、新字体と区別して「正字体」と呼んだりします。
その結果、しんにょうという部首は、点が1つのものと2つのものが混在するというおかしなことになりました。当用漢字字体表で、しんにょうの点は1点と決められたからです。
「道」という字は当用漢字なので、しんにょうの点が1つですが、逗子市の「逗」は当用漢字外なので、しんにょうの点は従来通り2点のままでした。
しかし、「当用漢字は当用漢字字体表にある通りの新字体で、それ以外の漢字は従来通り正字体で」という原則は、印刷業界で完全に定着し、人々はしんにょうに2種類あることにもだんだん慣れていきました。
この「原則」が根底から覆されたのは、1983年のJIS漢字改訂のときです。
「國は国と書くようになったのだから、國というパーツを持っている『掴』という字も、『手偏+國』ではなく、『手偏+国』と書くべきだ」という拡大解釈をして、十分な審議もないまま、半ば強引に多くの漢字の字形を変更してしまいました。今、あなたがご覧になっている「掴」という字(手偏に新字体の「国」)は、1983年までは存在していない字です。今もなお、多くの人たちが「掴」という字は偽漢字だ、と主張しています。

さて、問題です。
「掴」という字は、旁に「國」となっている正字体が「標準的字体」でしょうか、それとも1983年から突然出現した「掴」(旁は新字体の「国」)が「標準的字体」でしょうか?
それによって、どちらが「異体字」なのかが変わってしまいます。

さらに問題はあります。
牛丼の「吉野家」の「吉」は、看板やロゴを見ると、上が「土」となっています。これは俗に「つちよし」と呼ばれるもので、「俗字」とされています。
俗字は異体字とは違い、「間違った書き方が定着してしまった字」と認識されています。つまり「つちよし」は間違いである、ということになります。
「龍」は間違った字ではありませんから、「竜」に対しての異体字ではあっても、俗字ではありません。
こんな問題も存在します。

パソコンで表示できる字/できない字

コンピュータ上で文字を扱う場合、すべて「文字コード」に従って扱うことになります。コンピュータは計算機であり、数値しか判断できませんから、表す字形に対しての数値が決められています。「0101」という数値に対してはひらがなの「あ」を表示する……というような決まりですね。
これを文字コードと言いますが、世の中にはたくさんの文字コードがあります。日本語を扱う文字コードでも、現在、一般に使われているものは「JIS」「Shift-JIS」「EUC-JP」「UNICODE」など、数種類あります。
現在(2003年)、WindowsやMac OSではShift-JISという文字コードが標準として使われています。WindowsではすでにUNICODEという、収録文字数の多い、しかも世界共通に使える文字コードでOSを処理しているのですが、それに対応するフォント(実際に表示・印字するための文字字形データ)セットが少ないことや、対応しているソフトが少ないため、事実上はまだShift-JISコードが標準と言えます。
今、あなたがご覧になっているこの画面(WEBページ)も、Shift-JIS文字コードで記述されています。

Shift-JISで、「つかむ」という漢字に相当するコードは1つしかありません。
ですから、正字体(手偏+國)の「つかむ」という漢字を表せません。
しかし、「つづく」という漢字に対するコードは2つとってあり、1つは「続」、もうひとつには「續」があてられています。
「ひのき」という漢字も、「桧」と「檜」の両方表示できますが、これも「ひのき」という漢字に対するコードがShift-JISで2つとってあるためです。
Shift-JIS文字コードは、JIS漢字規格の第一水準と第二水準に収録されている漢字を完全にカバーしていますが、 JIS漢字表に、「檜」「桧」の両方が収録されているため、2つのコードをとる必要があったわけです。
「壺」と「壷」などもそうです。
私の姓である「鐸木」の「鐸」もそうで、「鐸」の他に「鈬」という字形も表示できます。
83年のJIS漢字改訂(通称83JIS)までは、JIS第一水準に正字体、第二水準に新字体が収録されているケースが多かったのですが、83年改訂でこれらがほとんど入れ替えられてしまいました。そのため、83年以前に「檜山」と入力した文書データは、83年以降は「桧山」と表示されるようになってしまいました。もちろんその逆もありです。
これにより印刷業界は大混乱に陥ったのですが、なぜか「鐸」だけは第一水準のままで、「鈬」との入れ替えは免れました。

「桧」と「檜」はどちらが「標準的な字体」なのか。これも大いに議論を呼びそうです。
「異体字」を「標準的な字体以外の字体」と定義すること自体に無理があります。

……というようなことは、拙著『テキストファイルとは何か?』(地人書館)に詳しく書きましたので、この続きはぜひそちらでお読みください。

「異体字転」

末續・鐸木の組み合わせ さて、「異体字転」です。
このソフトには、現在、パソコンで表示できる異体字をすべて収録した辞書エンジンが搭載されていて、入力した文字に異体字があればすべて表示してくれるというユニークなものです。
固有名詞などの表記で迷ったときはこれを使ってみると簡単に文字の存在が判別できます。
パソコンのソフトが完全にUNICODE対応になったときは、今よりもはるかに多くの漢字が表示できるようになります。早くそうなってほしいと願っているのですが、なかなか進みませんね。
濱嶋屋 の組み合わせ

「よこはまたかしまや」を漢字にした場合、17通りあるそうで……。ちなみに「高島屋」がこだわっている「はしごだか」は、「異体字」ではなく、同じ字形の別デザインと解釈するのが主流になっているらしい。ただし、この「はしごだか」はUNICODEには収録されているので(台湾の文字コードにこの字形があったからだという)、UNICODEなら表示できる。
また、「IBM外字」と呼ばれている外字フォントにもあるため、Windowsのフォントセットでは表示できる。しかし「機種依存文字」なので、インターネット上などで使うことは好ましくない。


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