4畳半スタジオ奮闘記


↑今までのエフェクターラック。上から3番目のやつが貰い物のKORGのキーボードミキサーで、これで4つのエフェクターを1まとめにしてO2Rへ送り出していたのだが、音質が気になっていた。
掲示板でおなじみのaudioworks斎藤さんに頼んで、ボリュームすらないというシンプルなラインミキサーを作ってもらった。↓

 

■SONGBOOK2への道のり 1


98/07/01

   とうとう6月は1回も更新しなかった。ずっと録音作業に明け暮れていたのである。
 昔創った「歌」を、死ぬ前にきちんとCDにして残しておきたいという思いはずっと前からあったのだけれど、歳を取るにつれて日本語の歌を歌うことに凄く抵抗を覚えるようになっていった。
 50になっても稚拙な詞のラブソングを臆面もなく歌う歌手を、「いつまでも変わらないパワーはさすが」などと誉める人もいるが、僕はそうは思わない。成長がないってことである。かといって英語で歌えばいいかというと、そう簡単な問題ではないことはいうまでもない。
 悩むうちに時ばかり経つので、まず、女性VOCAL作品集というのを先に出すことにした。これなら、かつて録音したままお蔵入りになっているものがかなりある。記録として、そのままCDに収録してしまえばすぐにでも出せる……と思ったのだが、だんだん欲が出てきた。
 今ならもっといい音で録音できる。そこで、元の8トラックオープンリールのテープを引っぱり出してきて、そこからヴォーカルトラックだけ抽出し、MIDIの音源などは全部差し替えようと思い立った。
 ところが、いざ作業に取りかかると、まず、かつて使っていたFOSTEX R-8というMTRが動かない! FOSTEXに修理に出し、10万円を超える見積もりが出てくるのが一ヶ月後。ヘッドが摩耗しているので交換するという。ヘッドの部品代が7万とかなんとか。
 もう使うことのないアナログMTRにそんな金をかけるつもりはない。ヘッド交換は不要ということで、最低限、動くようになおしてもらった。
 このへんからすでに息が切れかかる。
 次に、R-8と、今使っているD-160(ハードディスクレコーダー)、あるいはMPC-2000(ドラムサンプラー型シーケンサー)とをどうやって同期させるか……。
 R-8は昔懐かしい「テープシンク」という方式。ピーガーという音声信号を1トラックに録音してシーケンサーと同期させる。今時そんな同期をしている機械はない。
 一方、D-160はMTC(MIDI Time Code)でのみスレーブ同期する。MPC-2000はMTC出力ができるが、テープシンクには対応していない。昔使っていたローランドのMC-50というシーケンサーは、テープシンクに対応しているが、MTCは出力しない。
 そこで、一旦MC-50で受けたデータを同時にMIDI Clockで出力し、それをMPC-2000で受けてMTCで出力させ、それをD-160で受ける……というとんでもない方法で同期を試みた。
 それでもうまくいかず、結局最後は耳で確認しながらのカット&ペースト。地獄の作業……。
 で、この地獄の作業をしている最中、MPC-2000が不穏な動きを始める。いきなり暴走したり、データが壊れたり。さらにはD-160に6.4GBの新しいハードディスクをつけたところ、パンチインができない。FOSTEXに訊いたら、バージョンが古くて対応していないのだとか。ところがマニュアルにはちゃんと6.4GBのハードディスクも「動作確認機種」としてのっている。結局、無償でバージョンアップということに。これで作業が1週間中断。
 MPC-2000は騙し騙し使うが、作業が佳境に入ったあたりでハングしたりするので、何度データをパーにしたことか。とうとう堪忍袋の緒が切れて(おっさん表現だな)AKAIに3度目のクレーム電話。代替機を送ってもらったのだが、これも同じように暴走するわハングするわで使えない。なぜこういう使えないものを商品として出すのだろう?
 そこへいくと、YAMAHA O2Rは凄い。使えば使うほど凄いと分かってくる。動作も安定しているし、これは買い換えて正解だった。この便利さを経験してしまうと、もうアナログの卓には戻れない
 この間、audioworksの斎藤さんと相談し、エフェクトリターンを一つにまとめるシンプルなラインミキサーを作ってもらうことになった。ミックスダウン開始直後に完成して到着。

 ご覧の通り、接続端子などの部品がプロ仕様でごつい。で、これをセットするのにまたケーブルの自作。TRS(チップ、リング、スリーブの頭文字。ステレオフォーンプラグともいう)の端子でLRを1本にしているので、ケーブルは作り直し。スタジオワークってのは、こうした半田づけの積み重ねだったりもする。
 秋葉原で買っておいた3芯のケーブルで作ることにした。

↑マルチケーブルの工作はかなり面倒。芯をばらすのもすごく嫌いな作業。

 ……で、これは純粋にエンジニアとしての苦労話。制作者としてはもっともっと大変だったわけで、これはまた次回に報告します。
 ようやく録音作業は、あと3曲、ベーシストの演奏を残すのみ。これが明後日(7/3)だから、その後、ミックスダウンしていよいよ手離れ。
 ジャケットデザインも決まりました。そのうちここで発表します。
 CDは8月上旬完成、通販開始の予定。1800円を予定しています。13曲入り約45分の内容です。


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