全国各地で、住民の強力な反対意見に押される形で、自治体首長が風力発電建設計画受け入れ拒否を表明し始めています。当然のことです。
しかし、わが福島県川内村では、未だに「なぜ計画が止まっているんだ。せっかく金が入るチャンスなのに」などと言って、風車誘致にムキになっている村民がたくさんいます。
目先のはした金と引き替えに、どんなものが山に建ってしまうのか、こうした人たちはイメージできていないようです。
彼らがネットで巨大風車のことを調べるとは到底思えませんが、ここでは、全国の大多数のみなさん、つまり、ご自分の家の周囲に風車など建つわけもない場所に住んでいらっしゃるみなさんに、巨大風車とはどういうものなのか、少しでも実感していただきたいと思い、いくつかの例を挙げてみます。
幸いというか能天気にと言うか、横浜市のWEBサイトに、横浜市が建てた「ハマウィング」という1980kw風車について、かなり詳しいデータや写真、動画があります。ハマウィングは、
瑞穂ふ頭という、住宅街からは遠く離れた海の中に突き出した人口埠頭に単体で建てられていますが、これがごく一般的な日本の山村、つまり、人家にほど近い山の上にずらっと並べて建てられる場合のことを想像してみてください。
まず、風車を建てる土台に流し込まれるコンクリートの量。
ハマウィングの建設風景が
こちらに写真や動画と一緒に出ています。これを参照すると、土台に使われたコンクリートの量は約530立方メートル。
生コン車(コンクリートミキサー車)延べ106台により運搬されたとあります。
1980kw風車1基の土台に使われたコンクリートがミキサー車106台分です。
川内村に隣接(モリアオガエル繁殖地として国の特別天然記念物指定を受けている平伏沼から約2km)して建設中の
滝根小白井風力発電は、2000kwが23基です。1980kwのVestas社製風車の土台1つに使われたコンクリートがミキサー車106台分ですから、単純にこれに23をかけ算すると、2438台分。1基110台分とすると23倍で2530台分。まあ、ざっと計算して、
ミキサー車2500台分、1万数千立方メートルのコンクリートが、水源地の保安林解除で強行建設されている山に流し込まれるわけです。
この場所が水源涵養保安林として指定されていたのは、清流として知られる夏井川や千翁川の水源地だからです。周辺住民にとって重要な生活用水を守っていた、なけなしの保安林を解除して、今そこに数十メートルの穴を掘り、大量のコンクリートを流し込んで工事は進められています(写真参照=09年9月15日撮影)。
福島県民は、日頃、あまり高い建物を目にすることはありません。
この写真は、いわき市小名浜港のそばにある
「いわきマリンタワー」という観光用の展望台の展望室から下を見下ろしたところです。左下に見えている影はタワーの影です。まだかなり日は高かったのですが、すでにこの程度の範囲で地上に影を落としています。
このタワーの高さは60mあります。
滝根小白井や檜山高原に建設中の2000kw風車というのは、羽根の頂点までの高さがざっとこの2倍、あるいはそれ以上あります。
浜通りに住んでいる人でも、いわきマリンタワーは見たことがないというかたはいらっしゃるでしょう。では、福島県でいちばん高い建造物とされている、
郡山駅前の「ビッグアイ」というビルと比較してみましょう。
これは地上24階、地下1階、高さが約133mあります。CEFが大津辺黒佛木山という水源地を約500haも使って建設しようと計画している
CEF福島黒佛木ウィンドファーム計画は、2500kw風車が26基というとんでもない計画ですが、この2500kw風車の全高(羽根の先端まで)が、大体このビッグアイと同じか少し高い程度(135m=平均的なタワー=85m=に取り付けた場合)です。
雑木林で覆われた川内村、いわき市にとって重要な水源地である2つの山を埋め尽くす形で、26基の「ビッグアイ」が山頂にずらずらと並ぶ光景を想像してみてください。
GE社製2500kw風車のカタログはこちらにあります
羽根直径:100m ローターハブ地上高:75/85/100m(羽根を取り付けた全高は125/135/150m)
2500kw風車の寸法図 人の大きさはあまりに小さいので拡大表示
画像参照 千倉の風力発電問題を考える会
それでもイメージできない場合、親切にも動画を公開してくれている横浜市に感謝しながら、ハマウィング建設の様子を見てください。
こちらで見られます。
「風車が来ないと、森の枝伐採の仕事が入らなくなって困る」と言っていたAさん。「自然を守って生きていければいいですけど、そうはいきませんよね」と言っていたBさん。「低周波は空の上を伝わっていくから、下で住んでいる俺たちには関係ない」と、事業者の馬鹿げた説明を鵜呑みにしていたCさん。
みなさん、軽口を叩く前に、しっかり想像してみてください。こういうとんでもないものが、私たちが生活するこの村を侵食することを。
みなさんの両親、子供、隣人……みんな巻き込まれるのです。そして、こんなものをあっさり受け入れた村に愛想を尽かし、あるいは風車病のストレスや隣人との軋轢に耐えきれず、ひとり、またひとりと村を出て行くでしょう。もちろん、そんな村に外からやってきて骨を埋めようという新住民も現れません。
残った土地を売ろうにも、不動産価値は激減し、もう売ることさえできません。
建設工事の下請け、孫請け、あるいは工事のときのちょっとした臨時収入と引き替えに、死の村にしていいのですか?
あと1年もすれば、まずは滝根小白井に23基の巨大風車が建ち、嫌でも生活の中で目にしなければなりません。さらに1年も経てば稼働し、やがて付近の住民に風車病の兆候が出始めるでしょう。そのとき、いくら後悔しても、もう遅いのです。
保安林を解除した田村市長。しっかり責任を取る準備をしてくださいね。
風車万歳、雇用増大だ、経済効果だとおっちょこちょいな提灯持ち発言をしたあなたもそうです。残りの人生、この村がどうなっていくのか、しっかりとここに踏みとどまって見守ってくださいね。