電動アシスト自転車とは
私が初めて電動アシスト自転車を購入したのは2011年夏のことでした。
当時住んでいた福島県の川内村が原発爆発で全村避難となり、空っぽになった村に妻とふたりで戻ったのが4月末のことです。それから11月までの半年ちょっと、私たちは避難中の村で暮らしていました。
幸い、日本郵便とヤマト運輸(クロネコ)は避難中の村にもちゃんとやってきれくれましたし、家はどこも壊れていなかったので、それまでとさほど変わらない生活が続けられましたが、人がほとんど消えた村の中を移動する手段として、電動アシスト自転車を手に入れることを思いついたのでした。
2011年当時、中国から入ってくる「電動自転車」と呼ばれるものが多数出回っていましたが、ペダルを漕がなくても走ってしまうモデルが多く混じっており、問題になっていました。日本の法律では、モーターの力だけで走れるものは原動機付き自転車に分類され、免許や登録、税金が必要だからです。今ではそうしたモデルはほぼ姿を消していますが、モーターだけで自走できるものは電動「アシスト」自転車ではないので注意してください。
私が購入したのはアシストのみの合法的なものです。中国製の一見カッコいいモデルで、Amazonで3万5,800円(税込)でした。
↑ 届いたときの3万5800円の中国製電動アシスト自転車。

↑ 組み立て終わったところ。
3万円台というのは、普通の自転車とほとんど変わりません。大丈夫だろうか? と心配していたところ、案の定、あちこち問題はありました。
しかし、その実用性の高さ、快適さには感動したものです。どんな急坂でも登れるので、面白がって、何キロも続く山道を登ったりもしました。

↑ だれもいなくなった村の中をこれであちこち走り回り、居残った老人の安否確認、避難者が置いていった飼い犬の散歩、放射能調査などをしていた。
この自転車は日光に引っ越したときも大切に持ってきましたが、いろいろ問題が多く、結局、国産のパナソニックの製品に買い換える羽目になりました。
問題というのは、
- 配線不良で接続部分が取れてしまい、半田づけをして直すなどのトラブルが続いた
- バッテリーがリチウムイオンではないので、交換するのが大変
- パーツがヤワで安全性に問題がある
……といったことです。
最後は、砂利道でブレーキをかけただけで前輪のリムが簡単にぐにゃっと歪んでしまい、すっかり嫌になったのでした。
↑ 簡単に曲がってしまった前輪リムを外したところ。これはひどい。

↑ 前輪をアルミの一体型に替えてしばらくは走っていたが……、

↑ 電気系統に不具合が続出。バッテリーもこの通り、リチウムイオンではなかった。
この中国製電動アシスト自転車は、私に電動アシスト自転車の素晴らしさを教えてくれたという点では忘れがたい買い物でしたが、典型的な「安物買いの銭失い」になってしまいました。
これに懲りて、2台目は11万円という大枚をはたいてパナソニックの製品にしたのでした。

↑ 届いたときのパナソニック プレジア。11万円もした。

↑ 箱から出したところ。完全組み立て済みの状態だった。

↑ 荷台をつけ、前籠は使いものにならないので安い保冷バッグを取り付けた。前輪タイヤは、一度スリップして怪我をしたので、ブロックパターンのクロスバイク用タイヤに交換した。名前は「涼風号MarkII」とした。
電動アシスト自転車で得られる幸せ
電動アシスト自転車は、基本的には自転車ですが、
普通の自転車とはまったく違う乗り物という気がします。
普通の自転車では降りて押さなければならないような急な坂でも、スイスイと登れてしまいますし、平地でもペダルの重さが全然違います。
これにより、
行動範囲がぐんと広がるわけですが、移動スピードは「かなり速い自転車」という程度なので(速度が出すぎないように設計されている)、風景を楽しむ余裕などは自転車と同じです。
これは本当に贅沢なことで、オートバイでは速すぎるし、脇見していると命が危ないので、こうはいきません。
自転車好きのかたからは「あんなものは自転車ではない」「軟弱だ」「運動にならない」「恥ずかしくて乗れない」などと散々な言われようもしますが、「自転車ではない」と思えば、そんな嘲笑も気になりません。
もちろん、自転車に比べれば身体への運動負荷は小さいでしょうが、脚は回転させているわけですし、バランス感覚を保たなければならないので、老化防止にはなります。
また、普通の自転車では行く気にならない遠距離でも行けてしまうので、結果としては自転車よりも
乗る機会が増え、距離も伸びるので、
ゆるい負荷の運動を長い時間することになります。
コロナ禍で通勤電車やバスを避けて自転車通勤、通学する人が増えたこともあり、ここにきて人気は急上昇しました。価格も高値安定という感じですが、自転車に乗れる人であれば、絶対に買って損はしません。というより、
生活が変わります。
どれを買えばよい?
私は中国製の安物で失敗した苦い経験がありますが、それは10年前のことです。今は品質も性能も安定していると思います。
ただし、無名メーカーのものは、一般の自転車屋さんでは交換部品を取り寄せられず、修理や調整を断られることもあるので、覚悟が必要です。
国内メーカーではパナソニック、ブリヂストン、ヤマハが作っていますが、この3大メーカーならどれを選んでも外れということはないと思います。
パナソニックはすべて国内生産にこだわっている硬派のイメージ。ヤマハとブリヂストンは得意分野を分担して協力し合っている感じでしょうか。
私が今乗っているパナソニックのプレジアというモデルはだいぶ前に製造終了になってしまいましたが、ママチャリ以上、スポーツ車未満というコンセプトで、とてもバランスのよいモデルです。頑丈で壊れない点は本当に惚れ惚れします。一度細かい砂利の上でハンドル操作を誤って派手に転倒し、私は長引く怪我を負ったのですが、自転車はびくともしていませんでした。憎らしくなるほど頑丈で、故障知らずです。
バッテリーがまれに発火する事象が報告されてリコールになりましたが、そのときもWEB上の手続きだけですぐに代替品を送ってきました。もちろん無償で、リコールのバッテリーの返送キットも完璧でした。こういうところがさすがはパナソニックだなあと感心します。
7年乗ってきたが、故障は一度もない。
長くつき合うものとなるでしょうから、高くても国内3大メーカーのモデルを選んだほうが安心でしょう。


それ以外では、Amazonで現在人気1位のペルテックの折りたたみ式20インチモデルは心揺さぶられます。
これを車の後部に積んでちょっと遠出して、車をどこかの駐車場に停めて、そこからこの電動アシスト自転車でゆったりしたペースで観光を楽しんだりするというのも、贅沢な娯楽になるでしょう。街の中でも山道でも大丈夫。これまたお金のかからないレクリエーションのスタイルです。
価格と機動力重視なら中古の原付も視野に
電動アシスト自転車は一推しですが、もっと遠距離で毎日荷物なども積んで往復することが多いという場合、中古の原付バイク(普通免許で乗れる第一種)も合理的な選択です。
ホンダの世界的名車・スーパーカブをはじめ、50ccバイクやスクーターは、程度のよい中古が5万円台くらいから買えます。ナンバー取得などの諸費用を入れても初期費用が10万円程度のものが数多く売られていますので、これを普段の足代わりにするのも賢い方法でしょう。
電動アシスト自転車より安く、力強い移動手段ではあります。
栃木県鹿沼市の店で売られていた総額10万円以下の中古バイクの例。
スズキ レッツ2 走行距離:7114Km、車両価格:5万9800円、支払総額:7万9800円(税込)
この車種は安いものは3万円台からよく売られている。